88タケノコ販売&王家の見張り?もう嫌、お断り
もすもす食べていたことは、よく知っている。
「初日は人の手で売って、次は販売機に売ればいいかなって。どうかな」
「おれに聞いているのか?いいのか?」
「うん」
「なら、目の前で金網で焼いて食べる」
「ああ、それもいいねっ!」
金網状の鉄網っぽいものを教えたらいろんなものを焼き、食べることを気に入ってくれた。
エレラもよく焼く。
タケノコがさらに美味しくなり、お気に入りだ。
「コレス、今日は冴えてる」
「いつも冴えていると思ってたぞ」
「え?」
いつも、ハキハキしていると本人は思い込んでいるみたい。
エレラを見ている時はぼんやりしているんだけど。
それは、多分見惚れていると判断している。
「そうなら、そう思ってても自由だと思うよ。うん」
なんとなくニコッと笑っておく。
愛想と誤魔化しの混ぜたもの。
「じゃあ、タケノコは焼いて買いたくなる気持ちを推し進めるってことで。水鉄砲もいくつかできたし試し売りかな」
コレスと温泉で水鉄砲を使ったのだが、楽しかったのかかなり長い間水鉄砲を手に遊んでいた。
大人も楽しんでいるということは、売れる証。
水鉄砲で難しかったのは穴のフィット感で、水が漏れない様にぴったり塞ぐことだった。
そこをうまくできたのは、やはりコレスの持つ感覚。
ガリガリと穴を開けてくれる作業に、だいぶ助けられた。
こうして、共同作業が終わり大変満足そうな顔をしてさらに作りたいと言われている。
共同作業だなと言ったから、余計に彼の中で強調されてやりたくなったのだろう。
「水鉄砲も直接売りたいかな」
「水鉄砲にも見本が必要だ」
確かに。
遊び方などを目の前で見せないと、やり方がわからずに買ってもらえないと思う。
彼とどうやって売るかということを考える。
「お前の夢には子供が出ているものがあった。テレビに映ることのあるものだ」
「テレビで子供はよく出るけどね」
彼は子供に飲み物を飲ませていたと言われているので、これを買うといいと言っていたということに顔をあげる。
質問をしていくとCMなんだろう、ということを察っした。
「シーエム」
「シーエム?」
「商品を買って欲しい人がその商品を紹介するための方法、かな?」
そんなものは人生で使わなかったから、関係ないことだったけどこの異世界では今必要になってしまった。
子供に水鉄砲を持たせて遊ばせる案に飛びつく。
「それにしよう。そうしよう」
「子供はどうやって集める」
「ギルドに聞いてみて、水鉄砲を配ってやり方を教えていけばやってくれるようになると思う」
子供の商品を遊んでくれる人を雇えばいい。
「何人ぐらい雇うか決めないとね」
「ギルドにあらかじめ伝えてくる」
「そう?って!もういない。早すぎる」
横を向くと、彼はいなくなっていた。
言い終わる前に、ギルドに行ったのだろう。
「他にも色々言いたいことはあるんだけど。他のことも伝えさせたかったかなぁ。電話とかあれば、便利なのに。風の妖精とかなら、可能だったりしないかな?流石に人間に都合が良過ぎるかもしれない……」
エレラはコレスを止める前に、既に横にいなくなっていたので多分ギルドに行ってしまったことを察した。
もう少し、余裕を持って色々伝えたかったのだが。
今回に限って、急いでいるような気がする。
引っ越しのことで安心したから?
まだまだ、引っ越しはしないんだけれど、引っ越しをすると勘違いしているのかもしれない。
まだしばらく、入るつもりなので帰ってきたら改めて伝えるつもりだ。
気が短い、と苦笑いする。
ふと、思い出す。
苦笑いするようになったと言う事は、少しくらいは彼に慣れたということかな。
自分で自分に驚いている。
エレラは少し考えて、妖精たちに花を渡す。
王はもう帰ったのかなあと、外を見てみたら王本人ではないけれど、王の近くにいた護衛というか近衛っぽい二人が、こちらを見ていた。
しかし、体をガタガタいわせて顔色も青白く、今にも吐きそうな顔をしている。
目の前に泉でもあったら飛び込んでそうなくらいだ。
なかったから、かろうじて地面に立っているような気がする。
最強生物の近くにいるから、生きた心地がしないのだろう、
妻が住んでいる場所に、そんな生物を放し飼いにするわけがないのだが。
説明して済むようなことでもない。
説明してもなくても怖がるのだから、説明する意味がどんどんなくなっていく。
コレスはいつ帰ってくるのかと、花を妖精に渡しながら頭を悩ませる。
今回の花は、朝顔。
朝顔は朝になると一番よく咲くので、朝に見たほうがいいと妖精たちに説明しておく。
喜んでいるのか、朝顔がかすかに揺れた。




