82Sランクを怒らせる令嬢&クッキーは妖精のおかげ。スイートピー
じっと見ていると、少しずつ焼けていき狐色になる。
焦がしまいとずっと見ていく。
綺麗に焼けたなと思ってもまだ焼き続けていた。
中身はまだ生焼けなのかもしれない。
ここは、妖精を信じよう。
それでも、黒くならないうちに取り出せるようにと待機しておく。
「できた!」
取り出すと綺麗に焼けていた。
からんころんとお皿に出せば、クッキーが微かに動く。
妖精達も食べたそうにしている。
「じゃあ、半分食べる?」
半分、妖精用のお皿に出す。
「手伝ってくれたお礼。どうぞ」
にこりとお皿を指す。
あっという間になくなった。
やはり、妖精はいる。
何度も見て、自分でも察せた。
「ありがとうね。はい、これはスイートピー」
スイートピーを作ったので、妖精らにプレゼント。
焼いている間に時間が経過していたのか、コレスが帰ってきた。
「おかえり。クッキー焼いたよ」
「食べる」
「じゃあ、どうぞ」
お皿を渡すと彼はサクサクと食べ出す。
「サクサクしてて、今までで一番の最高傑作」
「美味い」
コレスはずっとモグモグ食べている。
「どうだったの、男爵の家」
「普通の民家と特に変わらない。裕福でもなく、貧乏でもない」
「それなのに、あんなに奪うのに慣れ切ってたの?」
「強欲な貴族にはありがちだな」
一般家庭に毛が生えた程度の貴族は、少なくないとのこと。
かれこれ三時間程経っていた。
彼はSランクのコレスの名をすでに報告されていて、てんやわんやになっていたという。
「どうするの?家に手紙でも送るの」
「王家に送る。詳細の資料と一緒に」
男は憤慨した顔でサクサク音をさせながら、手紙を送って王家から叱責させようとしていた。
慰謝料と二度と、関与しない様にということをさせる。
コレスの言葉に安心した。
「愛し子で迷惑をかけられて、今度こそ頭を上げられなくなるな。あの王」
にやりと笑って、とうとう謝罪するだけでは足りなくなってきたんじゃねえのか、と述べる。
「王様も漸く愛し子の件がなくなったと思ったら、次は自国の貴族が高ランカーと問題を起こすという大問題」
「この国、おかしい奴しかいないのかもしれない」
「否定できない」
色々な人や色々な存在がこちらに干渉しようとする。
「別にコレスがSでもなんでも、関係なく変な人が寄ってくるようになったね」
「お前の商品が魅力的なんだな」
「それもそうだけどねー。自分でもなかなかのものを作ったなって思ってるし」
作るものは全て異世界の品。
欲しがる人が出てくるのは仕方ない。
でも、無理矢理奪うのは違う。
「男爵潰すの?」
潰すのか聞くのは、単に他に話題がないからとタイミング的にそれしかない。
コレスはこくりと頷きながらムスッとした。
「潰すのはおれじゃない。男爵達本人の行動の結果だ」
「自分の運命を決めたってこと」
「なかなか詩的だ」
「こういう言葉、異世界でもよく使われるんだよ」
「お前の知る世界のやつらは頭がいいよな。夢でわかる」
「教育が十八まで。義務は十六なんだけど。もっと学びたいなら二十から二十四まで学業で専門職として勉強できる」
「凄いな。想像できない」
「私の夢を見たんなら高校まで見れたよね」
「具体的なことはそこまで。服が同じということはわかる」
コレスは一部の授業を受けたと聞いた。
「楽しかった?」
「楽しかった。もっと受けたい」
「好きなだけ受ければいいよ」
夢で好きなだけ勉強するなり、授業に参加するなりすると良い。
どんな形で学校が再現されているのかは、見たことがないけど。
翌日、王のところへ報告書を届けて、王宮は上から下まで騒ぎになった。
「どう?」
帰ってきたコレスに聞く。
「驚いていたり、顔を青ざめさせていたり」
「いつものことだって感じ。まだ二度目だけど」
「二度目なんてない方がいい。いきなり店に来て品物をただで渡せというやつが変だ」
「横暴だよね。男爵なのに」
「愛し子は平民だったがな」
「この世界の人達、というかまあ満遍なく変な人達多め」
「この世界からすればおれもお前も変人の部類に入るぞ?」
「え?なんで私が?私普通。私平凡。いい?」
「いや、お前は転生しているから……変人というより特異体質」
「それはそう。でもコレス程変じゃない」
「おれもそこまでじゃないぞ」
「いやいや」
手を振る。
「似合いの夫婦でいいだろ。結論」
「異世界の言葉を使うの上手くなったね」
「だから、似合いの夫婦」
「二度言わなくていいって」
言葉を気に入って使おうとしている。
覚えた言葉を言いたくなるのは人として、当たり前にある感情なので即座に止めた。
このままだと更なる引用がなされる。
エレラは王がいつになったら来るのだろうと思案した。
そういうときは王ですら滅多に食べられないトカゲドリのクッキーでも、出せばいいかな。




