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おっとりの秘訣は夫を窓から落とすシミュレーションをしているから〜一人旅で出奔、のはずがずっと夫がついてくるので〜  作者: リーシャ


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80/119

80ゴマやナツメグ、調味料を大量に買い込む

お皿に乗せられた卵を手に、コツンとして割れば。


「わ」


ドシッとした音と共に、温泉により半熟になったものがお皿に。


それを反動で受け止める。


「できてるぅ」


塩をかけて口に入れる。


「美味しい!」


「死なないよな」


「私にだけ基準が厳しくない?採れたてなんだからこれ以上ない鮮度だよ!」


「そうか……一応回復をかけておく」


コレスは 翠色の光を手に纏わせ、エレラの方へ向ける。


「ええ……」


過保護を通り越している気がしたが、ここは前の世界ではなく他の違う原理が動く世界。


前の世界基準で考えるのもいけないかも。


特に病気とかは。


それならば、安全を期するのも必要なのかな。


「塩、かけるか」


「コレスは?なにもかけずに丸呑みよりも美味しいよね?」


「そうだな……美味しい」


彼はそれでも、エレラよりも少ない回数で食べた。


丸呑み一回よりも多いので、まだいいことである。


「どう?温泉卵」


わくわくしている様子のエレラにコレスは、優しげな顔を浮かべて「美味しい」ともらす。


コレスは、温泉卵を気に入ってしまったらしく、トカゲドリを温泉卵にすることに。


入れる量が増えた。


降りて市場に顔をだす。


「どうも。どうですか」


ギルドの人達に声をかけ、今日の報告を受ける。


「あ、はい。すぐに売り切れたんですけど、これについて質問を受けてました」


販売員らは、興奮した様子で頷く。


「遅くまで、ありがとうございます。依頼料は契約のままだけど、初日なのにここまでやってくれたので、渡せるのはこれくらいですね」


竹の水筒を一本ずつ、手渡していく。


誰であれ、勤務外の仕事をしてくれたのだ。


異世界からしても、この世界からしても、それは善意以外の何者でもない。


「えっ、いいんですか?」


「う、嬉しい」


「本当は欲しかったけど、買えなそうにないから諦めてた」


今回は女の子達だった。


可愛い顔で笑って喜んでいる。


自分の作ったもので喜ばれるのは、いつでも嬉しい。


コレスはそれを見つめながらもなにも言わなかった。


「帰ろうか」


「ん」


彼は静かに進む。


エレラも市場に目を向ける。


夜は夜で市場が開かれていた。


自分達は朝から昼の時間で契約している。


「なにか欲しいものでもあるのか?」


「今の所はない。クッキー焼くためのコツをもっと知らないと焦がすから、なんとかしたい」


「妖精に頼めばいい」


それもそうなんだけど。


「頼んで平気なの?」


対価を渡さず頼む愛し子に比べたら3食あって、寝る場所も用意するお前の方が正当な願いを言える。


「でも、なにもしなくても願いを叶えるんだね?不思議。普通は叶える真似なんてしないよ」


疑問を口にすると、彼は薄く笑って、予測を立てて声にしてきた。


「可愛い子供の願いを叶える事は、当然のように叶えたいと思ってしまう、といったところか」


「私たちのことを、子供だと思っているということ?」


「妖精は昔からいる。消滅しない。昔からいるのなら、おれ達は小さな子供、と思われているかもしれないな?」


「ほぉー。言われてみれば、確かにそう思われていてもおかしく無いかも」


妖精の方が長生き。


人間はか弱く尊い。


となれば、引っ付いて見守りたくなる妖精の性質があるのだろうか。


それにしては、人をかなり選り好みしている。


「それとも、単に相手が好きだからなんでも言うことを聞きたくなるのか」


「でも、簡単に私に変更したような」


「犬も猫も世話したやつに懐く」


「そこはもう、そっちの感覚で生きてるかもしれないね」


愛し子とは的確な言葉。


「愛しくて張り付いて、見離さないけど、美味しいものをくれる人がいたら話は別……ってことね」


「そうだな。別の話になるのかもしれないな、奴らの言い分は」


コレスからはなにか見えているのか上を見上げている。


そこに妖精が浮いていたりするのだろう。


彼は煩わしそうに手をパッと払う。


その仕草で、妖精達が何かを言いたいのだとわかるようになってきた。


「お前の菓子や花を楽しみにしてる」


「わかるの」


「なんとなくでわかる」


「愛し子も妖精達のこと見えてて、わからないのかな?なにかしてあげようとか」


「あるのか、ないのか……そういうものだと物心ついた時にいたら、世話をしてやろうということすら、考えつかないってことだ」


「いるのが当たり前に、なっちゃってるんだ」


エレラの残念そうな顔に同意の顔を浮かべた男。


「あ、ごまっぽいもの」


ててて、と色んな調味料が売ってある。


それをしみじみと見て、うーんとゴマかゴマじゃないか悩む。


どうだろう。


「少し味見するかい?」


「よろしいんですか?」


「ああ。とはいっても、これ全然売れないんだけどね」


男は困ったように笑う。


「では、少し味見させてもらいますね」


こちらも笑顔で対応。


最低ゴマをぱくりと味見し、当たったと喜びが胸に広がる。


「あ、あのっ。これください」


「はいよ。どれくらいだ」


「半年分を、いや一年かな」


「ん?聞き間違いかな?」


「いえ、やっぱりもっと欲しいかも……コレス。これ、亜空間的なものに入れられる?」


「入れられる。最近広げたぞ」


コレスは亜空間に興味を抱き、アイテムボックスみたいなものを作成したと、告げていた。


「あ、あの、お客さん?お客さん?」


「すみません。五年分ください」


「増えてるぅ!」


店主の男はゴマをあるだけ在庫を出してくれた。

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