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おっとりの秘訣は夫を窓から落とすシミュレーションをしているから〜一人旅で出奔、のはずがずっと夫がついてくるので〜  作者: リーシャ


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79小説の内容が大体同じ

ドン、と鈍く重い音がして置かれたそれ。


客らはキョロキョロと見回す。


「な、なんだこれ」


「なんか入ってる?」


「えっ、水筒か?」


ざわりざわり。


買いに来た人達が、何事かと置かれた物体ボックスを見つめる。


「これは水筒を買える箱だ。金を入れれば買える。個数は一人分と決まっている。買いたければ次に買うしかない。無人だが、盗む場合の防犯魔法を仕掛けてあるから安心しろ」


彼らはそれを前にして戸惑いを浮かべるが、コレスは構うことなどなく堂々と発する。


これって、わけがわからないよね。


もっと細かい説明を貼り付けておく。


デモンストレーションをしておくと、お金を入れて水筒を買う。


そうすると、ドヨッとした声音が後ろから聞こえてくる。


画期的で驚いているのだと推測。


確かに、お金がこちらに入ってくるように設定しているから無人でできるのだ。


そうじゃなかったら、一々ここに置いておけない。


盗まれるし。


コレスは窃盗防止魔法を仕掛けているが、他の人がこういうふうにする場合はできない部分もある。


「すごいっ」


「買えるのか?」


そうして横に移動して少しだけ人が買う光景を見守る。


初めは誰も買う気配がなかったが、徐々に恐る恐るといった態度でお金を入れるだけで、品物が出てくる。


人いらずだ。


ここに来た時、既に到着していたギルドの人たちへも色々言っておかないと。


雇ったギルド員らには、品物を買う方法を教えてそれを客らに教えるように指導していく。


「よろしくお願いします」


「は、はい」


Sランクのコレスがいるからか、緊張している。


彼らは礼儀正しく、任せてくださいと言い頼もしさを覚えた。


よろしくとこちらも声をかけて、彼と引き続きの活動を始める。


ちょっと離れて販売機を見ておこうとなり、遠目から眺めると客たちが買っている客を見て「おお!」と毎回驚く。


「あれ自体が広告になってるみたい」


「初めて見るものになるからな」


自動で魔導な販売機は既に特許登録をしているので、独占されることはない。


あちらも無料公開だが、うちのものを分解することでもしない限り真似るのは難しいと思う。


市場から離れると、二人は温泉卵のために魔力温泉の元へ。


背負子を背負う男の背中へ、慣れた動作で乗り込む。


こうしていると、夫婦らしい。


コレスは淡々と、いつものコースで登っていき湯気を隠した源泉へ導く。


エレラは卵を浸けて様子を見た。


妖精達も、気になって覗き込んでいるらしい。


「君たちの分もあるからね」


見えないけど同じように楽しみにしているのならばと、声をかける。


「意味がわからないが喜んでいるぞ」


「意味わかんないのに喜んじゃうんだ?」


もう少し色々用心すればいいのに。


とはいっても、そういうところが可愛く見えてきているのでそれで構わない。


可愛いよ妖精。


温泉卵を待つ間、やることといえば話すことくらい。


手持ち無沙汰にならないようにはしておいたけどね。


本だ。


本を手にしている。


とはいえ、短い短編だ。


この世界の本は貴重というわけじゃないけど、面白みがあるかと言われたら……ない。


自分的にはあまり、という意味ではある。


どれもこれも似たような内容で。


多分出版社の意向なのだろう。


「はぁ、同じ内容。またこれ」


「どれだ」


「ここ。この部分。男が報酬として姫と結婚して終わり」


「なにがダメだ?」


「今まで読んだ話、全部この終わり方でさぁ」


「嫌なのか?」


全体的な内容が今まで読んだ本と似たり寄ったり。


お金出して読んでいるのに。


これじゃあ、同じ本をたくさん買うのと変わらない。


「異世界では違うのか。お前の世界のことだ」


「パターン。じゃないや。方向性は同じものはあるけど、それに至る過程で違いを出してるかな」


同じでは、あの超コンテツン爆速消費時代に一瞬で置いていかれる。


「……書けばいいか」


「えっ?なに?なにか言った?」


「お前の夢の中で見たものを書けばいいということだ。書くことにする」


「なになに、コレス小説家になるの」


「お前だけの限定的な物書きになる」


「書いたことある?経験は……」


「精々が報告書」


「だと思った。書き方とかわかるの?」


「わかる。いくつか本を読めば」


「そうなんだ。別に無理して書かなくていいよ」


この人は他のことも並行してやっている。


所謂、お仕事中毒だと思えばいいのか、この世界に娯楽が無さすぎて娯楽イコール仕事になっているのか。


彼に関しては趣味が討伐なので、単にやることがそれしかないという感じに見える。


「討伐が趣味よりも、書くことが趣味の方が人生まったり過ごせるかもね」


依頼の合間に書くと告げる男は、依頼の隙間すら煩わしいと言っているようなものだ。


すぐに終わるから、移動時間などが暇で仕方ないらしい。


それと、エレラの夢で異世界の本も読みお手本にすると言うのでお好きにと投げる。


許可しても許可しなくても勝手に見るのだから、それならば勝手に見ればいいと放置すればそこに余計な悩みを加えなくて済む。


コレスはこんな人なので、意見を聞いているが返事はさほど意味を持たないと思っている。


一度決めたら一人でやっていく。


「温泉卵できたぞ」


「やっと!」


本を閉じて跳ねるように近くに行く。


コレスはそれをお皿に乗せる。


「自分で割るか?」


「割る」


大きいけど割れないこともない。

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