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おっとりの秘訣は夫を窓から落とすシミュレーションをしているから〜一人旅で出奔、のはずがずっと夫がついてくるので〜  作者: リーシャ


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77トカゲドリの卵の美味しさ異次元

黄色部分が濃い卵は、確かに高級っぽさがある。


「何で食べたの。塩?」


「なにもつけずに丸呑みした」


「ま、丸呑みだとぅ!?」


貴族が大枚はたいても、買えない卵を一口で?


末恐ろしいことを。


金銭感覚がズレているとは思ってなかったけど、価値を感じてないのだろう。


いともたやすく取ってこれるということは、トカゲドリは彼にとって珍味でもなければ、高級でもないらしい。


「うう、そんな食べ方もったいない。持ってきてくれたら卵サンドとか色々作ってあげられたのに」


そう告げると、彼は首を傾げていく。


「だから今持ってきてるだろ」


「希少価値低いな」


彼の中では大して高くないのだ、やはり。


「あの、この卵……コレスも食べる?」


「今焼いているもののことを言うのなら別に食べはしない。ここにあるからな」


コレスはごそりと袋を見せてくる。


「全部無傷だから好きに使え。ただし採れたて以外はなにがあっても焼くんだ。お前はぽっくりいくからな」


この袋の中身は全て卵だった。


意識が薄くなりかけ、ふらりとなる。


「おい」


彼がすかさずエレラの腰を引き寄せ転倒を防いだ。


「こ、こここ、これってまさかトカゲドリの」


「群生地だったから取り放題だ」


彼は言い終わると得意そうに目を細めた。


(今にやりと笑ったの、冗談言えたって達成感!?今!?)


それに対して、褒められる心の余裕ないんだけど!


鳥と取りをかけたことを辛うじて拾い上げたものの、それにたいして今なにか言ってやれる余裕があまりになさすぎる。


豪邸なんていくつも建てられるかもしれない、価値を持つ卵がゴロゴロ目の前にあるんだけど。


「無理無理無理。現実についていけなくなってきた」


「元の場所に戻すのはさすがにめんどくさい。売ってもいいが」


「いーや、まてい!それは話が別っ」


「なんだ」


「美味しく食べる。待って。ちょっと考えたいからその卵はうちで消費させて」


安易に売るなどと言われても困る。


この量を放出したら市場が崩壊する、わけではないけど。


自分の食べる気持ちがもうできあがっているからこそ、渡すことはない。


「わかった。冷やしておく」


「うん」


ようやく、処分する方向から離れてくれた。


ホッとすると同時に、積まれていく卵にビビる。


コレスは卵ができあがったぞと、お皿に入れてくれた。


手が震えて、うまく入れられやしないと思っていたところだ。


約束通り妖精達と分けて食べる。


「どうぞ。焦がさずに焼けたのは皆のおかげだから」


彼が味も意味もわかってないぞと言っていたが、構わない。


これは気持ちの問題である。


まずはなにもつけずに食べた。


「……んまあぁ」


衝撃の濃厚さに語彙力が飛んでいく。


「その顔はいいな」


「……顔はいいから。そんなことより、これって毎日食べられるってことなの?」


「そうだ。毎日産むように数羽いただろ」


「あれが逃げ出したら、近隣の街がどうにかなるかもしれないよね」


「その前に捕まえる」


「本当に、大丈夫なの?」


「向こうも慣れたら、過酷な土地より過ごしやすいと反抗しなくなると思うがな」


「寝ている間に家が消し飛んでるとかないかな」


「あってもお前は無事だぞ?」


腕を組む。


「ダメって言われると思うけどな」


「トカゲドリじゃないって言えば済む。法改正でもないと違反にもならねえな」


「ええ」


「それに、戻したきゃ戻せばいい。おれは戻さない」


「な、な、なるほど」


納得しちゃだめなのはわかっている。


しかし、おいしすぎた。


「万が一、うるさすぎたら融通すれば即黙ることになるのはあっちだ。安定してトカゲドリの卵が食えるとなればな」


「うぐぐ、ぬぬぬ」


「それに、土地はこっちのものだ。違法なものを飼育していないから、どうにもできはしない」


「王族とかに盗られるかもよ」


「そうなったら好きにすればいい。例えSランクを揃えたとして、どうやってその後卵を安定してあの凶暴なやつらから毎日取れる?転移も頑丈な檻も作れない」


「あれ、本当だ。盗むことからもう無理だ」


例え、違反という建前を前に持って行こうとしても、誰も同じように卵を取れない。


不可能と言ってもいい。


Sランクを使って取ろうとしても、経費などでずっとは無理だし。


「Sといってもその中で安全に取れるやつはどれほどいるのか。いくら金を積まれても、呑気に毎日卵を取り続けるやつがいるとは思えん」


それほど、超高ランクの人間は癖が強いのだそう。


「おれは頼まれても断るが」


盗んだ相手から依頼されて、やる人なんていない。


取り上げておいて頼むことなど、相手もできないだろうし。


「だったらどうしよう」


最早、このトカゲドリをどうにかうちに置き続けることを考え始めた。


美味しいのである。


今更、じゃあ戻しますねと言われてしまうと、それはそれで。


「音は遮断できるし、バレても問題なしと」


大有りであるのは知っている。


「あと」


「あと?」


「トカゲドリは負けた場合、勝った相手に服従するらしい」


「えっ、そうなの?」


「ああ。定期的にやらないといけないけどな」


「そうなんだ……餌は」


「魔力を糧にしている」


空気中の魔力を食べているらしい。


だから強いのか。


トカゲドリを置けない理由がなくなっていく。


「おまけに、こいつと暴漢や敵が来た場合閉じ込めておけば勝手に追撃するから、いい番鳥になるぞ」


「相手死ぬよね」


「ギリギリ生かしてやる」


心持ちわくわくしてないだろうか、この人。


まあいいかな。


今の所もう、ダメなところがなくなったので置いておこう。


それに、ボソッと「捨てるんなら隣町だな」とポイ捨てしようとしている。

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