73妖精達に文字を書いてもらえた
妖精達に試しに書いてみてほしいと頼んだら、ゆっくりではあるが書いてくれた。
「妖精達にこんなことができたのは大発見だね」
「役に立つなら、家に置いてやってもいいな」
文字を知らなくても、真似をするだけなのでできたらしい。
その手伝うという作業が楽しかったらしく、他にもやりたいと言われた。
と、彼が説明。
なんて言われても、思いつかない。
あとは同じように書いてもらうしか。
「こちら、水筒は水を入れて持ち運べるものです!長く冷たいままに飲めますよー」
単純作業でも嫌がられないのはよかった。
「そりゃすごい!」
いつでも休んでもいいと伝えて、好きにさせている。
「異国の方かしら」
「はい!水筒をどうですか?お美しい方には少々見た目が固いですけど、便利ですよ」
「……えっ、美しい?私が?」
エキゾチックな顔が特徴的な人に本心をいう。
エレラの感覚では美人なのだが、この世界は美形率が高い。
誰も彼もが綺麗だと思う。
やはり、異世界の顔つきは異世界により変化する。
エレラの顔もこの世界基準。
この世界からしたら平均的なのだ。
そんな感じであまり実感がない人が多いのか、褒めた場合驚かれる。
「そ、そうっ。嬉しいわね……三つ買わせていただくわ?」
「ありがとうございます。持てますか?ちょっと重いですよ」
「あら……」
こちらを見て、気遣われることに感心したのか礼を言われる。
隣に美形代表のような夫がいるが、こちらばかり見ているような。
「嬉しいわ。使わせてもらいますね」
「ありがとうございます」
花屋の時もそうだったけど、褒められると素直に受け取ってくれる人が多い。
水筒を渡して見送り、次の人に対応する。
「おれもお前のそういうところが気になって、深く縁付いた」
「ん?なんのこと」
突然、脈絡のない会話だ。
「特になにか理由がないのに、こっちを褒めてくるところ」
「うんうん」
この世界の人達が素敵だし。
エレラの意識が切り替わる時があったのなら、そういう態度をしていたんだろうね。
「そうなんだ」
「惚れた」
「え、あ、はい」
「もっと話したくなってな」
今になって会った時のことを語られる。
「褒めるのはいいが、嫉妬するから程々にしろよ」
そこらへんの記憶は、エレラにもある。
口説かれているのか、な?
相変わらずこちらを見つめ、コレスは水筒を売る。
「どうだ、これは」
「えっ!?」
客の一人に勧める男。
男はコレスの顔を見てその綺麗さにびっくりしながらも購入していく。
売り方、慣れてないな。
仕方ないことだ。
彼は売る方ではなく、その素材を狩る方なのだから。
今まで商いなんて、したことはなかっただろう。
やる理由もない。
お金は狩ることで得られているのだ。
コレスはエレラが売るのを見ていたから、自分もしようと今やっているだけ。
「苦痛じゃない?」
「全く苦じゃない。お前の作ったものを売るのは最初は自分がどう思うか心配なだけだ」
「私元々花屋だったけど?」
「それでも、もし買ったやつがなにか言ってきたら正気でいられないかと思っていたんだが、平気だ」
「えー、それは素直にすみませんって言って、返してもらうくらいだけどね」
「この水筒は画期的だ。文句を言うなら、水袋でも使ってればいい」
ふん!と息荒く購入者に対して意見を述べる。
(私が作ったから、余計に思い入れがあるんだなぁ)
それにふふ、と笑ってありがとうと伝えた。
やはり、彼はエレラのことを愛してくれているらしい。
ほんの少し安堵する。
突然嫌われてもそれはそれで戸惑うから、こうして言葉にしてもらえると大変助かっていた。
「さっきの王宮のことなんだけど、王様どんな人とか見てたの?」
「私室は通ったが、独り言も滅多に言わないからすぐに離れた。誰かと話している時の方がいろんなことを言うからな」
「一人になった時に人柄ってわからない?優しいとか悪いとか」
「そうだな……常識人ではあると思う。多分、だが。なにかあると頭を抱えているから普通の感覚は持ってるようだ」
「常識人か……なら、今後もなにかあったら慌ててうちに来るかもしれないね。謝りに」
愛し子の件で謝りにきた王様。
「愛し子がまた会いにきた件について、また来るかもしれないな。だが、それは建前で本音はうちの妖精どもだ」
「え、そうなの?ふーん」
なんだか、野心家なのではと疑う。
謝りきたのに、誠意がない。
それは謝りにきたと言わないのだ。
「追い返すから気にするな」
それならいいやと頷く。
笑みを浮かべて接客をしながら、会話を続けた。
「妖精、そんなにいるんだね」
「まあな。くく、本当にたくさんいる。愛し子の総戦力でいうと今の所一番だから、来たくもなる」
「そういえばそんなことも言ってたね。数は私にとって重要じゃないし、ねぇ?」
「おれにとってもな」
男は頷く。
彼も接客で水筒を手渡す。
人がどんどん入れ替わる。
この会話は彼によって、防音に近いことをされているので周りに聞こえていない。




