71温泉に妖精も入っている
今の所、絵がついているものは見たことがほとんどない。
「王宮にならいくつかでかい皿が飾ってあったぞ」
「えー、それ、侵入済みってことじゃん……そっか、王様来たからか」
「それもあるが、それより前に資料がないか知りたかった」
「資料?もしかして温泉のこととかかだったり?確かに王家が全部所有してるもんね」
「そういうつもりだったし、妖精について書いているものがあるかと期待した」
「結果……?」
顔を見ると首を横に振る男。
「なにも、特に秘密や期待してた内容はなにもない」
「だろうねえ。愛し子から妖精が消えて慌ただしくここに来たし、妖精について具体的に生態を知ってる様子もなかった」
知っていたらまず専門を呼んで調査してとなって、原因究明をし始める。
専門家を呼んではいるらしい。
「だが、本以上のことは豆粒程度の予測しか言ってない」
専門家でも、コレスの瘴気風の魔法やミルクとクッキーについては予測できなかったと思う。
「わからないでしょ?クッキーとか寝床とか、花とか。要素が向こうに前提が無さすぎるよ」
晴れることのない謎をエレラは把握して、解明できないなと把握した。
愛し子から離れたことは唯一、わかるから彼女の方を事細かく調べる筈だ。
「調べても出てくる?」
「出てこない。身体に刻んだわけじゃないからな。身体を調べてもなにも出ないから、本人の気質と最終的に判断するかもしれねぇ」
男は愉快だと笑う。
「お似合いの末路だ」
「離れたからそれでおしまいじゃないの?」
愛し子の規定から外れたのならば、愛し子協会から除籍されると思っていい筈だ。
「初めての事態、だったからああまで慌てふためいたってことだろ」
「あんなに酷いのに妖精って寛大なんだね。不思議を通り越すなにかだ」
人に嫌な事をするのに愛し子というだけで、優遇されるなんて。
世も末が地をいってる。
それならば、なったもん勝ちになるよ。
「でも、愛し子をやめてもらえたのなら、あんなふうに好きにできることはなくなるんだったら安心。また声をかけられるって思ったら、もう外に出るの憂鬱になるから」
コレスは目を細くする。
今の言葉を加味して咀嚼しているのか、それとも全く違う感情をもたげているのか。
多分、惚気かな。
だんだん彼が何を考えているのか、ちょっと理解できてきた。
「妖精達はもう戻りそうになってる?他の愛し子の人に」
筆頭愛し子がいなくなったとしたら、二番目に妖精は寄りつくのではと聞いた。
「お前やおれより、多いやつはいない」
「えっ……ってことは。今国の中で一番多いの?」
「隠れた愛し子でもいない限り、そうだ」
この家にいる妖精の総数が一番多いということが、判明。
「多くても私になにか変化あるの?」
「愛し子協会に入らないというのなら、ないな」
「だよね?ないよね?なら、気にしなくていっか!また妖精用のご飯のお皿買った方がいい?そんなに増えてるのなら」
「どちらでもいいと思う。顔に乗るな、邪魔だ」
急にコレスが顔の周囲を手で払う。
「それって、増やしてくれって抗議じゃないの?」
「気にするな。お前は見えないから、好きに振る舞えばいい」
彼はまだ払い続けている。
大きなお皿を用意した方がいいかな?と思案。
大きい皿を買おうと提案する。
彼は仕方ないと言う顔で、こちらを見た。
「買うのか」
「買うよー。他の子達も飲みたいだろうしさ」
「タダ飯ぐらいだろ、妖精ってやつは」
費用がかさんでいく。
「それはそうだけど……なにかしてもらう?」
蓄えはあるけれど、エレラだけならば無理。
コレスが嫌なのにお金を当てにするのは流石に、悪いかな?
「嫌なら、なんとか妖精達にも働きてもらうけど、なにがいい?」
「温泉に浸けたらなにか変化するかもしれねぇぞ」
「えっ、温泉?うちの?ただでさえ魔力入りなのに」
「魔力に対して集まっているのか検証するために様子を見ていたが、魔力があるからといって無造作に寄ってくるわけじゃなかった。それでも源泉の方に入っていると興味を惹かれて妖精どもも入ってくる。溶け出しているのかは定かじゃない」
何が起こるかは、今の所不明ってことか。
男は自分の考えを披露していく。
検証などをしててくれたのだ。
エレラも魔力温泉については気になる。




