70ガラス細工はない
関係あるけど、ない人に謝られてもどう反応すればいいのかと思うだけ。
それならば謝らずに、抑えてくれていればよかった。
彼女はなにか、言葉にならない声を発している。
遠くなるからどんどん声も小さくなっていく。
あれ以上、変な茶番に巻き込まれては敵わない。
エレラはやれやれとなりながら、帰ったらコレスへこのことを教えようと決めて市場を見ていく。
いい感じのものがあったので見ていく。
ガラス細工がないのが残念だ。
コレスに教えて頼んでみようかなぁ。
どうしようかと次の行動を考える。
水筒を売る場所を大体決めた。
妖精達が今周りにどれだけいるのか知らないけど、大切にしてなかったのだと見ているだけでも察してしまえる。
もう少し気にすればよかったのに。
見えないからこそ、なにかやれば。
もう手遅れだけど。
夫が瘴気みたいなものを彼女に被せたので、今後妖精が寄ってくるかは正直難しいとしか思えない。
彼女は明らかに、色々あぐらをかきすぎた。
一度ならまだしも、二度以上も嫌がる人に話しかけて大切な人をバカにする。
(彼女はもう、突っかかってこないかな)
やってはいけないこと上位を、網羅してしまっていた。
それは、人の神経を逆撫でしてしまう行為。
誰がされても怒る。
買い物を終えて帰宅すると、作りかけの水筒があった。
そういえば、作ってる最中だった。
「水筒いつ売ろうかなぁ……引っ越しするし」
売り出すし、余っても構わなかった。
「でも、まだ家できてないからもっと先になっちゃうか」
それに、特許でちゃんと登録できたのでホッとしていた。
水筒や筍も登録したし、他のものも多数登録済み。
こうすれば、似たものに独占されず使い続けられる。
簡単にできるものを、独占されるなどということが起きては困る。
「あ、水?」
コップがちょっと揺れて、中身を見ると空になっていたので水を注ぐ。
最近は、催促すれば入れてくれると妖精達が知ったことにより、意思疎通ができるようになった。
とはいってもコップを揺らすくらいで、それ以外はなにか変化があったわけじゃない。
妖精というより、空気を飼っているような気分になる。
空気だから見えない。
それとも気体かも。
この世界に気体や液体の概念があるのかは疑問だけど、妖精が見える人達がいるのならば妖精は確実にこの世にいるのだろう。
見えない人にとっては、いないのと同じだけど。
「帰った」
「おかえりー」
二時間ほどして帰って来たコレスへことの経緯を伝える。
「そうか、わかった。抗議しておこう。向こうも懲りないやつらだ」
と、眉根を寄せて不快感を見せてくる。
コレスがいないときに話しかけられたので、もしかしたらなにかされるかもとは思った。
植物魔法の拘束はできるが、それだけだ。
火で燃やされると弱いと思うし。
まだ燃やされたことはないから、どうなるかは知らないんだけどね。
「もう来ないでほしい。それに側にいた人がもう愛し子じゃないって言ってたから、彼女はもう愛し子じゃないらしいよ?私が愛し子になれるって言われたけど」
エレラは言い淀む。
「絶対やなんだけど。イメージっていうか、印象が地に落ちてるし」
仮に愛し子の規定に入ってるにしても、あんな愛し子をイメージカラーにしてた協会にも不審が、積もりに集ってる。
コレスも近寄りたくないなと同意してくれる。
彼はエレラの全同意派なので、そんなことはないとは言わないのだろう。
わかっていて言うし、本当に相手に嫌悪を感じているのは外から見ても、感じ取れた。
所謂、イエスマンな彼でも愛し子については、嫌な目にあった出来事なのだ。
「愛し子の件は、一件落着?」
毎回毎回呼んでないのに登場する。
犯罪者でないのは、こちらがまだどこにも訴えてないから。
「なにも伝え聞いてないからどういうことになっているのかは不明だ。明日から、様子を確認してくる。また関連で来られても敵わないからな」
エレラの押しにコレスは顎に手をやり、首を緩く傾ける。
内情を探ってくると言われているのかな、これは。
彼は潜ったり、探ったりするのが好きなんじゃないかと思う。
皿を作るところだって、内情を知ろうとするところから、意味がないのにするのだ。
やりたい人なのだろう。
「皿のところはどうなってるの」
「順調だ」
「お皿に順調ってよくわからないけど、作れるようにはなってるってこと?」
「そうだ。色付けをしてないから別のところも見てるけどな。見ていて勉強になる」
別ところなんだ。
「絵付けとか、やってないところ多そうだね」
「ほとんどなにもしてない」
それは知らないのか、意味がないと思っているのか。




