68武闘大会とミナイサが話しかけて来て暴走
話題は武闘大会に移る。
大会の準備に伴って街の様子が、変化していっているとのこと。
ギルドに出入りする人の数が増えている、と知る。
そうか、参加は大体ギルドに登録している人が殆どになるか。
コレスは参加するのかと聞くと、どちらでもいいとの解答。
「そうなんだ」
「ああ。つまらない。制限もあって面白みがな」
「そういうもん?見ている分には見応えあって、楽しく見てるんだけど」
見るのと参加するのとでは、感覚は百八十度違うか。
「まあ、見に行こうと思ってるよ」
「出場したらおれを見るのか?」
「そりゃ見るけど」
「他のやつは」
「見るけど」
「……わかった。出る」
「今の問答で、出る意欲が湧くってなに?今出たくなる内容じゃなかった気がする」
エレラは首を捻った。
花を出し、妖精達の居そうなところに飾る。
「これは君たちの分」
わかりやすいように言葉にして、妖精達に話しかける。
「あの人達は、また来るのかな」
見えないから口にする。
「来ても追い返す」
誰か、愛し子の彼女に住所を教えないだろうか、と疑わしくなる。
色々考えていると、コレスの両腕が身体に回される。
「お前は守る」
この人、さては少女漫画を目にしたな?
違うのならばとんだ人たらしになるけど。
でも、少し面白くてフッと笑った。
先ほどの不安が少しだけ取れた。
コレスがギルドでの依頼をするというので、エレラは水筒を売るためにどの場所がいいか吟味するために市場へ赴いていた。
ついでになにか妖精達に買って行こうかなと思えば、買い物も楽しく思える。
(前の世界じゃ旅行なんて行かなかったから、新鮮で楽しい)
景色も雰囲気も異国風なので、こうやって歩いているだけでも海外旅行感がする。
「ちょっと!あんた!」
(ん?)
突然、怒りをぶつけられて横を見ると、愛し子制度や愛し子認定を受けているものがつける、マークの入った服が。
あの顔、鬼のようだがミナイサだ。
顔に憤怒が塗りたくられていて、誰かわからなかった。
「ミナイサ!」
後見人の男が再び彼女の護衛についたみたい。
他には一度見た女性もいる。
引き攣った顔でこちらを見ていた。
やはり、妖精の数がわかるのだろうか。
見えないから凄さが一ミリも不明。
「あんた!私からコレス様を奪っただけじゃなくてっ、妖精までなにかしたんじゃないの?」
とんだ言いがかり。
「すみません。どなたですか?」
「はぁ!?」
一度も話したことが実はなかった。
言葉を交わしたことがなく、一方的に話しかけられるだけだったから。
「ミナイサ!やめなさい!問題は起こすなと言われているでしょう!」
いい加減にしてほしい。
ため息を吐いて呆れたように告げる。
「うるっさいわねえ!私はこの女と話してるのよっ!邪魔するなっ」
「私にはないのですが、名無しの女性の方」
名乗らないので呼び方ができない。
しかし、相手はそう取らなかった。
煽られたと思ったみたいで、カッと顔を赤くする。
「こ、コレス様の妻なのにっ、愛し子の私がわかんないなんて職務怠慢なんじゃないの!?」
益々わけがわからない。
妻と夫の関係に、職務怠慢という言葉を使う意図が。
もしかして、この子は意味を適当に使用しているのかも。
頬が引き攣るが、いつものようにすればいいかと相手を見る。
「私に文句を言っても、あなたの今の状態が変化するとは思えませんが」
「返しなさいよ」
「はい?なにを?」
知ってるけど聞く。
ミナイサがエレラについている妖精について、どうやって知れるのか疑問がある。
知る方法はない。
「妖精よ!あと、コレス様もっ」
今いる妖精がエレラについていたものなのか、誰にもついていない妖精だったのかなんて区別がつかない。
ましてや、妖精が見えないミナイサならば余計に無理だ。
「無理に決まってるでしょう」
なので、エレラが奪った奪ってないは、証明できない水掛け論。
「返して、返してよぉ!」
縋り付くようにこちらへ迫る彼女。
こちらへ辿り着く前に闘牛を相手にするように、ヒラっと避けた。
お手本のように滑って転んだ。
後見人が助けるまでグズグズ泣いていて、愛し子の片鱗が皆無。
「返して、返してぇ」
「家に帰って寝てください」
普通に言葉を返すと彼女は奇声を上げて、こちらに来ようとした。
煩い。
まるで、勝手に鳴る目覚まし時計だ。
「ミナイサ!やめなさい!」
女性も抑える行動に加わる。
「あなたに最後までいる妖精が今、離れかけています!」
女性が伝えると彼女はびくりと体を揺らし、落ち着きのない動作で上を見る。
「いや、いやいやいやいや!」
コレス調べによると愛し子の性格が悪かろうと、妖精は離れないらしい。




