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おっとりの秘訣は夫を窓から落とすシミュレーションをしているから〜一人旅で出奔、のはずがずっと夫がついてくるので〜  作者: リーシャ


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65愛し子協会が来た

「はい」


ドアへ行こうとして、ふわりと腕が体に回る。


「え、なに?」


コレスの逞しい筋肉質な腕だった。


「招かざる者どもだ。出る必要はどこにもない」


「あ、もしかして愛し子関連?」


聞いてみるとそうだと、答えが返ってくる。


「じゃあ、出なくていいや」


「いいのか」


「なにそれ?コレスが言い始めたのに」


「愛し子になりたい、ということはあるのか?」


「ないない。なんの特典があるのか知らないし。Sランクの特典より上回るとも思えないしね」


コレスの持つ特典は、身内のエレラにも適用される。


一部は適用されないが、それよりも強い権限があるとは思えない。


ということを言うと彼は満足そうに「Sランクだったら大抵のことはできるぞ」とプレゼンしてくる。


とはいっても、使う気はない。


使わなくても生きていける。


使う時なんて思い浮かばない。


権力を跳ね除ける時くらいかな。


今か?


愛し子に認定されるなんてなあ。


ミナイサを思い出して、あんな子がたくさんいる施設なんて真っ平ごめんである。


それに、あの子がいるところにノコノコ行ったら何を言われるかわかったものではない。


それと、コレスにまた言いよるだろうし。


なんでもいいけど、常識的に婚姻して妻を待つ男に言いよる様は、見るのに微妙な気持ちになる。


他人も同じ状態だったら、赤の他人であれ良い気分になれやしない。


「わかった。少し待て、追い払う」


と言って、彼はスタスタと玄関へ行く。


小さな家なのですぐに玄関がある。


「すみません。少々よろしいでしょうか」


「なんだ」


「は、はい、じ、実は」


コレスの威圧感に、タジダジになる相手の声が聞こえる。


「じ、実は」


「なんだ、さっさと言え」


「わ、私は愛し子協会の」


「ああ、あの既婚者に言い寄る非常識な女の使いか。で、文句を言いにでも来たか」


「と、とんでもございません!」


「なんだ、じゃあ」


たんたん、と足を踏む男。


「うちの愛し子がご迷惑をかけたとか」


「そうだが?謝罪は本人からだけはまだ貰ってないけどなぁ……?」


「そ、それは、その申し訳なく」


謝り出すが、本命は違うだろという空気で彼が更に足す。


それに、もどかしさがある。


男は苛つく仕草をわざとしていた。


「だから、なんだ?本人が謝らず関係のない奴が謝りにきて。それで許されると?いい加減、あいつをどうにかしろ。もう三度以上、声をかけられて不快だ」


四度も声をかけられている。


「も、申し訳なく」


「おまけに、おれの妻をこれと呼んだ。怒りで引き裂きたくなったんだが?どう落とし前をつけてくれると言うんだ?」


「ひっ……おい、君!どうだね?」


どうやら一人ではなく、連れが居たらしい。


妖精の有無かな。


「います」


愛し子らしき声。


ミナイサではなさそうだ。


冷静な人が担当しているみたい。


妖精がいなくなったと気付かれているのなら、しらみつぶしに愛し子を連れて行き、妖精を確認するのは当たり前の流れ。


愛し子に確認した相手、男の人はコレスへ気丈に返す。


「この場に妖精が」


「お待ちください!」


愛し子が止める。


少し離れて、二人で内緒話をするように離れていく。


コレスは腕を組む。


「なに!?それは、本当か?」


「はい。ミナイサよりも」


「そんなことが?それならミナイサから奪い取ったというわけでもないのですか?」


声が聞こえる。


コレスを見ると、耳を示していてなるほどとなる。


恐らくここまで声を響かせて、聞こえるようにしてくれたのだろう。


とても助かる。


エレラが待っていると、2人が、またこちらにやってきて、彼に話しかけていく。


妖精への確認はできたが、数が多すぎることに驚きを隠せていない。


それを問いかけようとするが、謝罪に来たのに質問をすると言うのは変なことだ。


と、気づいたのだろう。


言葉に詰まって、どう切り出したものかと相手を見て判断しようとしている。


夫は薄く笑っていた。


「謝りにきたんじゃないのか?もう帰ればいいのに何をしている」


コレスは理解していてわざと相手に投げかけた。


相手は妖精のことを聞こうとして、男の殺気に怯える。


追い返そうと言うわけじゃないが、これ以上質問がないならば、帰れという言葉を言外に言っている。


「しかし、聞きたいことがあるのですが」


「本人に謝らせる前にこちらに質問があると言うのか?何様だ?」


彼はわかりやすく、怒りを示す。


相手は慌てて首を振って手も振る。


その手は小刻みに震えていた。


それを気にせずに、どんどん追い込む。


お湯払ってくると言っていたが、本当に追い払おうとしている。


頼もしさしかない。




話を聞けないと思ったらしき二人は、すごすごと帰っていく。


こちらに来たコレスは、エレラに追い払ったと自慢げに胸を張る。


お疲れ様とのノリで伝えた。


嬉しそうにしている。


褒めて欲しそうにしていたから、褒めた。


帰ったら、妖精の数について伝えられるのだろうか。


また、人が大挙して押し寄せてくるかもしれない。


そんなの嫌だ。


スローライフをしたい。


こうなったら居留守か、遠くに出かけるのが無難かも。


竹で作った水筒をそろそろ販売しようかとしていたが、あの人たちが来ると言うならば、生活がうまくできないかもしれないという不安を感じる。


下手に関わられてしまうのも釈然としない。


こちらの言い分は伝えたので、放っておいてくれればいいのに。

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