62新居は一大プロジェクト
煌めいていて、ちょっとうっとりした。
「この金色ってさ、コレスの魔力の色?」
「魔力を具現化させるとこの色になる」
「私って何色なのか知ってる?」
「具現化するまでは色が安定してない。具現化させられるまでは色は確定してないぞ」
「そっか……商品作る時にいいなって思ってたけど」
そもそも、魔力を紐にするなんて高等な技は彼やその他のSランカーや、Sランクに違い人くらいしかできないのだろう。
魔力を出すのは誰でもできるけど、それを応用するのは高度なのだ。
花を具現化できるのは植物魔法のおかげ。
「おれがいくらでも出してやれるが、ずっと残ることはない」
コレスの能力に糸を精製する力はないと本人が言っていたので、自力で会得した末のものなのだという。
ドライフラワーは作り終えている作品なので、魔力関係なくその姿を保てる。
糸は魔力なので消えるのだ。
エレラの花は植物魔法の一種で固定されているから消えないのだろう。
やはり、魔法や魔力はよくわからないところが多い。
植物魔法だとしても、魔力は魔力。
消えるはずなのだ、普通は。
かといって、水を魔法で出した場合、体から消えるわけでもないというし。
謎過ぎる異世界の神秘。
家を建設する予定地に辿り着く。
すでに人が集まっている。
「ん?ああ!コレスさん!エレラさん!」
家を建てるところにいるのは大工だけではなく、家を買った時にいた担当の一人が同席していた。
かなり大きな仕事なので、様子を見にきているのだろう。
豪邸というわけではないが、温泉を引くためにかなり大きく立地を買った。
今まで全く使ってなかった男の財布が、特大に開いた。
値段を聞いても答えないから、多分聞かない方がいいという配慮っぽい。
プロジェクト的に、すごく大掛かりらしい。
「いやあ、こんな大きな仕事、私の代では初めてなので皆興奮してるんですよぉ」
人の良さそうな笑みに、エレラは質問する。
「そんなに新居は立たないんですか?」
「ええ。モンスターがいつ襲ってくるかわからないのに新しく建てて壊れたりでもしたら損害で生活どころではなくなりますから」
それは、お金が払えなくなるということなのか。
普通は長年払っていくのが異世界式だが、この情勢の世界はあまり好まれない。
なので、一括で支払ったコレスはこの界隈じゃとても話題になるのだそう。
しかし、口止めしている。
温泉のことがあるから。
魔法使いに防犯などを頼むと更に費用が嵩むが、Sランクが自前でやるためにお金はかからない。
なので、関わる人は普通より半分以下になる。
防犯面やお風呂面などが必要なくなる上に、庭の方も整地は彼がやるのだと。
温泉も引くので、それも設計図に付け足していると彼から聞いている。
なにか要望はあるかと聞かれたけど、どちらの人生でもマイホームなんて建てたことがない己に、そんなものがあるわけもなく。
「温泉があればいいよ」
というしかない。
改築も視野に入れておく、と言われた。
改築とかも異世界じゃあまりない。
そこもモンスター関連である。
いつ飛来してくるか、わからないから。
エレラも街から出ようとした途端襲われたので、確率から低くはない。
「見ていかれますよね」
「はい」
「温泉についてもう一度、擦り合わせする」
コレスが担当者に告げると、相手は嬉しそうに首を振る。
「わかりました。こんなに大きな温泉を作るのなんて初めてなので、助かります」
確かに頼んだ中での不動産の資料の温泉は小さかった。




