表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/119

60大工

見ていると、ミナイサがぐっと悔しそうに女性を見る。


彼女が黙っている間に、女性がこちらに寄ってきて頭を下げてきた。


「コレス様とエレラ様ですね」


「えええ、この人私の名前知ってるよ」


前にあった、宝石をくれた老婦人の二の舞になるのかな?


名前をこちらの口から知る前に、知るなんて気分が悪くなる。


「どうしておれ達のことを?」


覇王のような怒りを相手に当てて、夫は問いかける。


「は、はい」


女性は、愛し子協会のトラブルが起きた時の調査員なのだそう。


彼女は愛し子の妖精が居なくなったから、調査しにきたみたい。


そういう雰囲気を醸してないけど、まずは謝ってきた。


夫たるコレスに言い寄ったことについて。


愛し子のイメージが悪くなる行為だから、責任者が来て愛し子のイメージ回復に努めるのは当たり前の流れだった。


エレラはコレスより少し後ろに下がる。


それに対してムッとするミナイサ。


それに、目を細めて睨む男。


男の視線が愛し子にあると知った女性が慌てる。


「ミナイサ!」


なにがあったのかは、あの後見人の男の人と共有してあるのだな。


それならば、ミナイサを連れてくるべきじゃなかったような。


「うるさいわね」


「ミナイサっ、あなたって人は」


まるで小説などのヒロインに抜擢されそうな役柄なのに、なぜ破滅するルートを選ぼうとするのかね。


「もう行く?」


「ああ。付き合うには時間がない」


内輪揉めは家でやってくれ。


コレスとエレラは二人の横を通る。


「ま、お、お待ち下さい!」


女性が少し驚いて止める。


なんで止まらないといけないのかと、歩き続けた。


「な、な、なっ。ま、また!また無視するっ!なんでよっ。待ってよっ!聞きたいことがあるのにっ」


無味乾燥な今の現場に用はない。


「ミナイサ!騒いではいけないわよ!」


後ろで何やら騒ぎがあったみたいだが、関係ないもん。


「謝りきたのか?」


「謝りに来たにしては、遠回しに人を連れてきたりだったり。誠意を感じられないしなぁ」


とことこ進む。


やがて、温泉に入ることができるようになるまでは、温泉に入る必要がある。


二人は結局、謝りに来たように思えず、変な雰囲気だった。


家に帰ると大工が家を作りにくるぞと説明してくれる。


順番の説明はありがたい。


最初は見たい。


「異世界の大工作業ってやっぱり魔法使うのかな」


「あまり使わねえだろうな」


そうなのか。


時間が長いから使うと、すぐに魔力切れになるからなと解説される。


「大工は魔法なしでやってくんだ」


「運動神経がいいやつはいるだろうから、そういうやつを見つけて見て見ると見応えがある、と聞いた」


「誰かから?」


「耳に入ってくるそれを、拾ったものだ」


コレスという男は耳を強化して聞き取ることができるので、奥方達の会話を聞いたようだ。


「それは、かっこいい人を見た時の反応」


「そうなのか?やたら喜んでたから、そうなのか」


彼は彼女達の会話は聞けてもその感情については、ピンと来てなかったらしい。


男性とは違い、異性関連の会話故にわかりにくいのだろう。


エレラも男性が女性について話していても、共感などは難しい。


こういった会話は異性の恋愛観などに紐づくことが多いので、仕方ないのだ。


男性のコレスも女性達がどういう意味で大工の様子を語るのか把握できない原因だろう。


それ以前に、ただ聞いていたから考えることはしなかったということもある。


これはエレラの主観であり、そうだろうなという考えなので当たっているか当たっていないかは、どちらでもいい。


家を作るというので、次の日はその作業を見に行くことになった。


寝る時におやすみを言う夫におやすみを返すようになったなぁ、と感慨深く思いつつ就寝。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ