58それでいいのか妖精達
結局、妖精達の世話をする役目になった。
掘ろうとしても首を横に振られる。
か弱くはないと思うんだけど。
結構力ある方なんだけど、と言ったのだが彼の掘り進める速度を見たらエレラがやったところでアリンコのような進み具合だともわかった。
確かに、この差ではやってないのと同義。
コレスは妖精達を餌付けでもしておけばいいと、謎の扱いをする。
餌付けって、その扱い相手が怒らないだろうかと思っても、彼曰く貰えるだけで大喜びしてるから気にするだけ、時間が勿体無いのだそう。
それでいいのか妖精達。
彼らにミルクや食べ物を提供しながら、温泉を掘り進める音の中過ごす。
ほのぼのしてるなと、今の生活に満足している。
このまま何事もなく過ごせたらいいのに。
カーンカーンと音が響くこと三日。
時間をかけたのは彼がエレラを背負うために遠回りしたのだと、即座に理解。
だが、探してもらい掘ってもらった身としては、三日長引かせる程度感謝代わりだとしても足りないだろう。
エレラなりにコレスへの信用は、ゴマの粒だが貯まっている。
信頼とはまた別であるが。
「あとは、整える」
男の呟きと共にベコンという音がした。
今のは例えであり、具体的にいうとズン!である。
拳で整地したんだが、この男。
異世界だなぁと眺める他ない。
「ま、いっか!温泉なんだから!」
温泉に入れるのなら、どうでもいい過程だ。
どう整地しようと温泉は温泉。
入れるものは入れる。
構わない、一向に。
温水の魔力入りを見つけられたので、今度はそれを家に引く。
そのためにまた不動産屋へ向かう。
土地を決めないことにはね。
まだ水筒用の竹を伐採してないので夫にすっぱり切ってもらうことにした。
根本も、掘り起こさねば。
そうと決まれば温泉のために大きな土地がいい。
「終わったぞ」
声をかけられて見ると、水が湧き出ているが、見えないようになっている。
定期的に不純物などを取れるように、魔法もやってくれている。
回復魔法も使って、大盤振る舞い。
「うーっ、ありがとう!」
抱きしめるというより、抱きつく姿勢になるが感謝の気持ちを伝えたくて飛びつく。
「!……どういたしまして」
驚いて若干、棒読みのコレス。
気にせず、次へと移行する。
家を買うために不動産へ。
前回イマイチなものばかりだったから別の不動産に。
大きくても、立地的にいい場所を確保したい。
「いっそのこと、温泉でもやった方がいいかもね」
「将来的なことか?」
「うん。定期的な収入にもなるし」
コレスの土地にしておけば、Sランクの土地に土足で踏み入る真似はしまい。
この水源の土地も買い上げておかないとね。
ここは私有地ではないから。
不動産屋に行き、水源のあるところと立地の良さげな町の端にある土地を買った。
これで、王族に盗られない。
ホクホクした気持ちで不動産を出る。
家を建ててくれるそうで、将来的には移動するかもしれないのにと一度どころか何度も必要ないと断った。
けれど、コレスは絶対に譲らない。
「やっぱり家をさ、建てるの……」
「ああ。家主はおれでいいからお前が住めばいい。おれはお前が住むからその家に住むんだ」
「順番がおかしいけど。新居にするんだったら私も住むから」
どこか必死な様子に、なんだか少し申し訳なさが浮かぶ。
別々に暮らそうということを匂わせたことはない。
もちろん、かなりおんぶにだっこされている状況なのは大変アレではあるが。
この世界にモンスターがいなかったらまだ、離れやすかったけど。
いるので、安全のためにね。
離れようとは思ったけど出奔した日に魔導列車がモンスターに襲われたことを鑑みると、やはり安全を確保したい。




