54妖精にミルクとクッキーをあげる
コップを暖炉のところに置く。
少し待って……告げる。
「そのコップに入ってるミルクは妖精たちが好きに飲んでいいよ。クッキーも用意するからよければ食べてってね」
と、教えてバラを出現させ、コップの横に並べる。
「それもあげる。観賞用でもなんでもすればいいし、欲しいならあげる」
「妖精達は恐る恐る、といった動きをして近寄ってる。コップよりもバラの方が圧倒的に多いな」
「それ、いいんじゃない?妖精を虜にする花って触れ込み」
「ほとんどのやつは見えないから、嘘つき呼ばわりされるぞ」
「それもそっか。見えないなんて逆に不思議だよね」
話をずっと聞いているコレスの服装が気になる。
胸がちょっと、穴の空いているタイプの謎ファッションで薄いズボン。
エレラもそれをおすすめされたけど、難易度が高い。
宝石っぽいものをさらりとつけていて、火の国っぽい服装。
エレラがいないときに、その色男ぶりで服屋に引き留められたらしい。
モデルをやってほしいと言われたのだとか。
広告にしようってことだ。
確かに似合うけど、ゲームのパッケージに絶対採用されてそうで、既視感がありまくる。
よく、顔がいい人に着せられている服。
似たデザインってのは、世界を超えるのだろうか。
「この服、なにかあるのか?目が行きがちだぞ」
「似合う。モデル頼まれるのがわかる。ピッタリすぎて驚いてる」
「似合う?ふふ、着て正解だな」
コレスは衣装を指し示して、上機嫌で歌うように告げた。
「いや、夫として褒めてるんじゃなくて店の人の人選を褒めてる」
絶対に勘違いをしている男に、訂正する。
しかし、相手は顔をこれでもかと弛ませ、わかっているとうなずく。
本当かな、と疑うエレラはそれならいいけど、胡乱な視線を相手に向けた。
本当に勘違いであると、二度目の説明をし直す。
どちらでもいい、と投げ捨てる回答に「そうですか」となる。
もう、先の問答を取りやめて、妖精の様子を聞く。
妖精達はミルクを飲んで、バラを鑑賞していると説明してくれる。
ミルクの入ったカップを見ると、空いなっていた。
本当に空っぽだ。
「おおー、なくなってるよ」
初めて妖精が存在すると、実感した瞬間。
こちらは、コレスを見ると、彼も頭を上下させて共感する。
妖精達は薔薇をどうしているか、と聞くと彼はうっとりしていると言う。
それならば、よかったとなりつつ妖精らに声をかけた。
他のお花もあるけれど、いるかと聞く。
「何度も頷いて喜んでる」
「それならよかった。いまのうちクッキーっぽいもの焼くね」
最近、薔薇の味のクッキーを開発しようとしている。
やはり、味が薄くなるのがなかなかなところで。
普通のものと薔薇味のものを用意。
さて、作ろうとキッチンに行くと音もなく、真隣にコレスが立つ。
こんな狭い家で、どうやってこうして移動しているのか。
天井なのか、壁なのか、はたまた床下なのか。
「薔薇にする」
「そこまで再現しなくても売り物じゃないんだけど、やりたいならなればいいと思うよ」
薔薇のクッキーを、薔薇の模様にするのが大変気に入った男。
クッキーで作っていたら工作し始めて、その出来栄えにプロだと眩い完成品をエレラの口に入れたのだ。
その芸術品を噛んだので、素直に口にいれたけれど、普通の薔薇味のクッキー。
模様だけで、付加価値が跳ね上がる。
売るときは特別価格だなと、内心数字を弾き出した。
「このクッキーは売るのか」
「クッキー自体が初味だから、気をつけないとね。先ずは商品登録」
この世界では甘味を庶民も食すけれど、ちょっと甘いレベルのなにかの皮だ。
モンスターもいる世界に食文化の進化を求めるのも、難しいのだろう。
エレラとてカフェに行ったら甘いものが出てくれれば嬉しい。
ないから作る。
真理真理。




