53愛し子サイド
他者視点
妖精がごっそり抜け落ちたミナイサが、ゆったりと朝のモーニングティーを嗜んでいると、同じく朝食を食べにきた他の愛し子に話しかけられる。
「ねぇ」
ミナイサは他の愛し子に対して、コンプレックスを抱いている。
「な、なによ」
「あなた、妖精が周りにいないのはなぜ?」
その発言にミナイサは顔を青くし、赤くし、顔色を点滅させて立ち上がる。
「そ、そんな嘘は通用しないんだから!」
ここは愛し子が利用することも多い施設。
他にも愛し子はいる。
「なあに、あの子」
「あら、気付いてなかったのね」
「え?一般人の女の子ではなかったの?」
「一匹、二匹程度しかいないじゃない」
「あ、あの子、妖精がたくさいた子よ」
「顔なんて見たことなかったから、あんな風だったのね。妖精で見えなかったくらいいたのに」
「ということは、妖精がいなくなってるの?原因は?」
「私達にも関係してくるかもしれないわ」
愛し子達に混乱が広がる。
ミナイサはその周りを見て、妖精が本当に消えていることを知った。
「なぜ?なぜいないの?」
「ミナイサ?」
後ろから声をかけられる。
後見人の男だ。
パッとしない容姿で好みではない。
「妖精、いない?」
後見人は愛し子らの呟きを拾う。
みるみる青ざめる顔。
なにか異常が起きていたと知ったのだ。
後見人は愛し子ではないので、妖精を見ることはできなかった。
「ミナイサ、ここをでましょう」
気を遣ってから、義務感か、男が催促。
まだ飲み終わってないけれど、味なんてもうしない。
「ちょっと、まだ聞いてないわ。妖精はどこ?」
「!……あなたに関係ないでしょ」
「関係ないわけないでしょう。一体あなた、なにをしたの?」
まるでなにかしたような言い草に、カチンとくる。
いつものように命令した。
「黙らせて」
しかし、後見人はやれやれと呆れた顔でできるわけないじゃないですかと断る。
愛し子に手を出す真似など、後見人がやるわけがなかった。
唐突に突き放された女は固まる。
予期せぬことに慣れてない証。
それに吹き出す、話しかけてきた愛し子。
「あなた、まだそんな真似していたの?愛し子協会から派遣された後見人が愛し子になにかするわけがないじゃない。ふふ、頭を使いなさいな」
顔に熱が溜まりカッとなる。
「私より妖精が少ないくせに!」
その途端、食堂が笑いに満ちる。
妖精を見ることができる愛し子らによって、声が響く。
「やっぱりあなた、見えてないのね」
目の前にいる愛し子が耐えきれない様子でこちらを笑う。
今まで、ミナイサに妖精が少ないと言われて、悔しい思いをしていたからこそ、かなり攻撃的な態度になっているのだ。
会う愛し子、会う愛し子に同じ言葉を投げかけて優越感を浴びていたから今現在嘲られている。
「あなたに教える必要はないわよ!」
「まあ、お逃げになるの?」
「きっと見えないから説明できないだけよねぇ」
それを肌で感じているミナイサはぶるぶる震え、己の失落を振り払うように食堂を出た。
「な、なによあれ」
しかし、それでことが済むわけもなく。
愛し子協会に呼び出される。
召喚状が届いた。
使者と共に。
「どうして私がそんなこと」
「説明をせよとのことです」
「なっ……不遜よっ」
「それはこちらで判断すること。速やかに説明をしにくるようにと」
有無を言わせず、移動するためのものに乗せられる。
ミナイサは後見人にどうにかしてとわがままを言うが、その後見人は口元に笑みを浮かべて困ったように言い聞かせてきた。
「無茶をおっしゃる。私は愛し子協会から派遣されてきました。雇われているのです」
散々、愛し子ミナイサに煮え湯を飲まされてきた。
誤魔化しや擁護など、するわけもなし。
庇われない。
擁護される善行をしてこなかったのだ。
それでも、ミナイサは大丈夫だろうと今も思っている。
その心のうちを見透かした後見人は、知らないふりをして窓の外を眺めた。
(妖精がいないなんてたまたまよ)
協会に着くまで、三人はそれ以降話すこともなかった。




