43魔力入りの温泉と公衆
小さい温泉だけど、魔力を含む温泉はどこにも資料がない。
全て綺麗に買い取れているが疑わしい。
原水の水脈を引き当てても、バレないようにしないとね。
王族独占は許さない。
エレラはメラメラと闘志を燃やす。
コレスは今の所普通の反応。
入ったら世界が変わるかもしれないので今は静観しよう。
ニヤッと笑う頬をキュウと引き締める。
彼はまだ温泉の魅惑に引き込まれてないだけだ。
「公衆浴場には行くだろ」
「それは毎日入る」
「昔から入るよな、お前は」
コレスにも毎日入るようにさらりと結婚前に約束させていた。
すっかり忘れていたのは、頻繁に入るのが当たり前の記憶を持っていたせいだろう。
早速、次の日から彼と温泉と水源を探し始めることになる。
片手間で筍を埋めた。
竹にならないと商品にならないので、ちょっと待つ必要がある。
ちゃんと土地契約をして彼が購入しているので土地に穴を開けても問題ない。
簡単なのは異世界ならではだ。
これが前の世界なら、そうは簡単にいかなかったろう。
異世界のやりやすさはありがたい。
ありがたやーとタケノコをせっせと植えたので、数日後には立派に伸びていることだろう。
コレスと共に暇さえあれば山にトントンカンカンしにいく日々。
実は別にツルハシが無くともコレスの魔法でドリル的なものをやればいいのだが、そこは楽しんでいるみたいだからこそ、そのやり方。
トンカンとしながら魔力を探知していく。
世の中には魔力を探せる人は探せばいるものの、温泉のように深い場所にある魔力を見つけ出せる人はなかなかいないのだそう。
実際エレラも植物の蔓や根を這って探るも、深くて土が硬くて届かない。
届かせるとなると、大木でも植えて長年待たなくてはいけないのだ。
無理無理。
そんなに時間をかけてあるかもわからないのに、無理だ。
場所の当てが外れたら目も当てられない。
うろうろとあっちこっちに移動する。
「ここはどう」
「当たらないな」
「そっか」
あまり成果はなさそうだ。
エレラは火の国の商店街に行くことを提案する。
「気持ちも切り替わるし、なにか美味しいものあるといいなぁ」
市場も含めて纏っている場所に行くと、賑わっていた。
異世界のバザールっぽくない。
どちらかというとマルシェだ。
剥き出した場所にあるし、食べ物は積み上がっている。
木箱にたんとあった。
「異世界と同じ感じ、かな。多分ね、多分」
「そうなのか?お前の夢には出てこたことがないけどな」
「私の住んでたところとは別の土地のものを売る場所だから、実際に行ったことはなくて」
「??……ああ、てれびか?」
「いやもう、何度私の夢を見てるの?別にいいんだけど」
通じる心地よさについ許してしまう。
説明してもなんだそれ、と言われるより知られていると寂しさもちょっとはなくなる。
そう思うと夢を見て学習する彼は勤勉な人だ。
知ったからといって、見たものをさらに知りたいと調べる人がどれだけいるのか。
エレラなら、そこで一旦知るのをやめてしまうだろうな。
目的のものだけ、知りたい性格である自分。
多分、コレスもエレラと共にいつか、ドキュメンタリーで見たとか言い出すぞ。
「で、市場は国によってかなり違う。私の国は四角い建物の中にあることが殆ど」
「見たことがあるぞ。全体的に梱包されてて中身が全く見れないやつだ」
「あー、衛生的にそうなってたからね。こことは真逆になるかな」
異世界の市場は大体同じ。
店の中に商品があるのは店持ちの人たちだ。
こういう場所には、出稼ぎという人も結構いる。
エレラも個人店よりもこういう場所でやろうかな、と考え出す。
でも、やっぱり人が出入りして、お金のやり取りはめんどくさい。
「はあ!自動販売機!」
コレスの魔法を付与した箱を繋げてコインロッカー式にすれば人と関わらなくていいのではないかと、嬉しさに震える。
「コレス。聞いてっ」
今の案を彼に教えると彼は大賛成した。