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36タケノコと竹

他の国も当然あるけれど、素通りするよ。


素通りは目的地の近道なのである。


一刻も早く行きたいエレラの気持ちに連動して、コレスも張り切っている。


「夢に入って、教えられたら無敵だけど」


「ああ。おれも夢でもお前といられてイッセキニチョーだ」


「だから、どれだけ私の内容見てるの?」


やけに使い方がうまいと思ったらそんな方法を取っていたとは。


そこに怒りはない。


夢は別にプライベートを感じさせる空間という感覚もないから。


来られてしまったという逃避感もないのだ。


嫌悪も否定もなかった。


コレスは怒られるかもしれないと思って、言ってなかったと白状する。


「試せるのなら試していきたいかも」


「なら、よう検討案件ってことでいいか」


「うん。あと、火の国の滞在する家とかどうするのか決めてる?」


「お前のやる店によるな。そこを決めておいて立地を探す」


「プライベート温泉欲しい」


ずるいと思っていても、欲しかった。


頼むようにぐいっと頭を上に上げて相手を見る。


目を見て、目の力を使っても欲しいのだ。


切実に願う。


「まさか、おれにねだってるのか?お前が?温泉の力は凄いな。益々国に行きたくなった」


「それはなにより」


ちょっと恥ずかしさは残るものの、買ってくれそうな気配に拳を固く握る。


プライベート温泉、あるといいな。


温泉に入る概念がどうかありますように。


毎日入ってると聞いたから、入れるよね。


入ってるのシャワーでしたというオチだけはやめてほしい。


それならば、コレスに温泉を掘らせるだけだけどね。


時間が余ればやらせるつもりだ。


エレラも勿論、最大限のサポートを約束する。


それに、もしプライベート温泉を借りるなり買うなりするのならさらなる異世界の話を教える。


彼が好きそうなものがいくつもあるし、ネタは尽きない。


夫婦なのだから甘々要素はつけてあげないか、という言葉が天から降ってこようとそんな要素は、ないのである。


もう一人に任せているし。


それにしても、火の国というから乾燥地域になるのかなと思っていたが、近付くにつれてそんなことはなく、やや緑が少ないという感じ。


砂漠感はどこも同じなので、全ての地域が国でもない場所は大体の地面と同じ。


ふわりと懐かしさと嬉しさが胸の中に広がる。


竹を試しに休憩中生やしてみたら、筍が生えた。


茶色い。


「?──それは、なんだ?それが竹というものなのか?」


「これは竹になる前の状態でタケノコっていうの」


近寄ってきたコレスは興味深そうに聞いてくる。


「たけのこ。引っ張ったりしていいか」


頷くと遠慮なく引く。


「なんだと……抜けない?」


そんなバカなとセリフが今にも出てきそうな驚きを見せている。


「たけのこ、硬いよね。竹になると抜ける気しないよ。天高くながーいし」


空を指すと男はぽかんとしていた。


「天高いならどうやって伐採を?」


「伸びる前に切る。伸び続けるから。水筒にできるし、竹は中に水分が入ってるってミタことある」


テレビで。


教育番組で。


「お前は、前は天才博士かなにか、なのか」


本気の声音で聞いてくる。


「う。相変わらず謎の優越感を私に与えてくるなあ」


嬉しさが胸の中に広がる。

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