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31ボウリング開始。ストライクなんてまず無理

もう一度作った彼は、笑みを浮かべた。


「よし、これに穴を開ける」


見ていると指が入るくらいの大きさの穴を三つ開けていく。


「そういえば、そういう顔した絵をしたことあるなぁ」


この、三つ空いた穴を見ていると、人の顔に見えてくる。


「この顔?顔に見てるのか?」


「そういうなんとか効果っていう心理的な専門用語があるから、みんなも結構顔に見えると思う」


天井の木材の模様とか。


コレスは、ボウリングのピンは用意できているのかと、ソワソワしている。


どれほど強くても、ワクワクする理由は皆同じというわけかな。


「並べて転がすから外で」


「並べた」


外を見ると並べられていた。


さっきまでテーブルの下の片隅にあったのに早業だ。


外に出ると綺麗に並べられている。


すごくやりたい意気込みが伝わってくる。


コレスは外に出て定位置に立ってボールを掴む。


まだ投げ方教えてないのに気が早すぎる。


教えるから見ててねと言う。


「そういう風にするのか」


「うん。そして、転がす」


腕を軽く振って、ゴロゴロとピンに向かって転がした。


スカッとピンが置かれているところから外れた。


「これは、まあ、レーンないし、地面だし、何十年ぶりだし」


「わかったから、言わなくていいぞ」


すかさず慰めの支援を受けた。


「倒すのが正解だから。倒さないのがゼロ点だから」


なんとか言い重ねてススス、と彼より後ろに下がる。


もっと近くで投げればよかった。


ちょっとだけ当たるかもと思ってたから、恥ずかしさと悔しさがないまぜになる。


彼は綺麗な姿勢で、音もなくボールを転がして全部倒した。


そりゃそうなるよ。


彼の身体能力は並外れている。


「ストライク。これ、ストライクっていう状態」


「すとらいく。わかった」


こくりと頷く夫に拍手。


全部倒したのだから当然の権利。


ぱちぱちと拍手すると、彼はもう一度ピンを立てる。


立てられた瞬間が見えなかった。


そんなにやりたかったのか。


もう一度やるか、と聞かれて頷く。


「うん。やる」


今度こそ。


投げて、一つ倒せた。


「やった!」


大人だけど本気で喜んでしまう。


初めてみたいなものだし。


にこにこと頬が緩む。


「よかったな。凄かったぞ」


「いやぁ、うん。ありがとう。コレスの全ピン倒した方が一番凄いけど、今私の投げた感動の方が自分的に強いから、気にならないかなぁ」


嘘である。


やっぱり、コレスはストライクできるよねと思った通り。


(かなり悔しい)


こちらの世界の遊びなのに自分よりも上手くできたことに、軽い嫉妬が湧き起こっていた。


「そんなに見られても、この身体能力はやれそうにない」


「いや、変に気を遣わないで」


地味にこちらの思惑がバレている。


バラさなくていい。


余計な気の回し具合だ。


エレラは目を釣り上げそうになるのを抑えつける。


この人、天然なところあるから悪気がない時もあるんだよね。


「やろう。何度もやろう」


「一度言ったんだから、本当に何度もやってくれよ?」


何度も遊べることに喜の表情をする男に、罠にハマったのはわかったけど、こちらも負けたままじゃ嫌だったからこそ、やると決めた。


「飽きるまでやるんだろ?」


「ボウリングを飽きるまではやらない。程々にね。流石に腕が痛くなるし」


彼はどんどん色々積み立てていく。


ドライフラワーも作りたいし、バラも本物に近付けたい。


バラがなかなか難しいのだ。


やはり複雑だからうまくいく感じがしない。


薔薇を作れたら色々なことに使いたいのだが、完成する気がしない。


なんとなくといった薔薇を使ってはいる。

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