26真空とサクラのブローチ
説明を重ね、重ねに重ねて数日説明を続けて彼の知らない部分を曖昧な状態で進めていく。
「空気はおれたちが吸って吐いていたものということか」
自動販売の箱は遠くに飛ばす、転移させるという既にある概念があったからすぐにできた。
「真空は、中身の空気を抜くと起こる状態」
「しおりを作る時に花の空気を抜けばしおりおして活用できる」
「いいことを聞けた」
彼はなにやら楽しそうに笑っている。
もしかして、モンスター退治の時にモンスターの顔の周りの酸素を抜いて酸欠にさせたりという定番の攻撃を思いついたのだろうか。
「は?なんでわかった」
コレスは本気でお前は天才か?と聞いてきた。
いや、異世界の知識だからと付け加える。
「そんなのどうでもいい。キスしていいか」
どうでもよくないのでお断りした。
でも、無理に頬にされた。
「理解したのなら、しおり作れるの?」
「そのナイロン?というものをどうにかしないと難しいが、スライムが使えるかもしれないな」
「スライムっ。その手があった!」
スライムもこの世界にいて無害のようなもの。
エレラでさえ倒せる。
確かに、とコレスが紹介したスライムならば、ラップのようなネバっている感じでいけるかもしれない。
乾燥したら割れる可能性も、視野にいれておこう。
粘度がありそうなのでうまくいくかも。
エレラの顔を見て、コレスも満足そうに頷く。
スライムを確保するためにどこがいいかと相談しあう。
「湿気のある場所がいいのかな」
「湿気ってなんだ」
「その講義やらなくちゃなの?」
また湿気や雨について、教えることになった。
講義が終わる頃に、サクラのブローチの完成が伝えられる。
コレスの監視対象について、追加で教えられたのだが。
やはり、サクラのブローチを盗み見ようとしたのか、例のこちらを監視する人が宝石店へ侵入したらしい。
コレスが現行犯逮捕にするため、中に入った状態で気絶させたらしい。
他にも細工したらしく、今もその人は牢屋にいるのだとか。
近隣にいないということが、よくわかった。
家を監視する人はいるのかと聞くと、昨日から派遣されたとのこと。
また派遣されてきたのか。
暇なお貴族様もいたものである。
その活力を他に活かせばいいのに、やることは横恋慕。
実にくだらん。
コレスは気にするなと告げて笑う。
私生活はわからないように別の光景を見せたり、黒いカーテンをかけたようなものを魔法で出して不自然なものにならないように、かけているらしい。
暗幕みたいなものかな。
エレラはこのまま監視され続けることになるのかな、と少し嫌気がさす。