21自動販売箱と特許
開店日を悩む日々に進展があったのは、花冠を作って一週間のこと。
店の外に飾ることにしたそれを、さらに派手で見栄え良くしようと、せっせと製作しているとき。
コレスが花占いを披露して花冠を売り込むためにギルド前でやったところ、花冠の注文が殺到したと住所や名前が書かれた紙を渡された。
受注販売の形式だ。
「その手があったか!」
花冠はあくまで手遊びにおしえたのであって、商品にしようとは考えなかった。
けれど、予約注文ならば過剰に作らなくても余ることは無い。
ドライフラワーなので枯れないし、在庫的に置いておける。
損はない。
早速予約注文用の、定型の用紙を作る。
それを見たコレスが驚く。
「今まで教えてもらったものよりも、こっちの方が実用性が高いぞ」
「そんなのいいから、こっちにその住所とか書き写して」
嫌ならやらなくていいよ、と付け加える。
手伝うも手伝わないも自由。
手伝うとしっかり言われて書き写し出す。
あと、配達時のトラブル回避のために商品の返品やクレーム、抗議、品質に関してこちらに責任を問わない旨を明記させておく。
説明書を添付させておけば、なんの責任を負うことはなくなる。
「これを読ませておけばいい」
エレラのドライフラワー技術ならば、商品が崩れたとなると他者や他者の原因しかないと、自信をもって言える。
そうなると、負わせられるのは理不尽なのだ。
「これなら店に来られる心配もないな」
店の場所は教えないがなと笑う。
お金は後払いで、お金を払ってくれれば商品が取り出せる仕組みにしておけばいい。
その中に入れて移動させる仕組みを彼に説明する。
所謂自動販売機個別版の魔法バージョンだ。
払われた金銭を、こっちに直接送られるようにすれば持ち逃げもされまい。
「遠いところだったらどうする」
「そんなところの注文は受けないから」
遠いところってどこだろう。
隣町?
「受けなくても殺到してくるぞ、この商品は」
「うーん、跳ね返しておいて」
受けれるだけうけるつもりはない。
一日に作れる量も限られている。
花冠もドライフラワーもと言われているので、ドライフラワーならばすぐに送れる。
そうなると、家から動かなくてもいい。
ギルドに配達を頼むのもいいかな。
届け物を届けることをやる冒険者もいるし。
コレスは自分が行くと言い出すが、別にやらなくていいと告げる。
それに、この店に居続けたり出かけたりできる長所があると紹介。
とはいえ、これはこちらの感覚なので本気で止めはしない。
「お金の心配してるのなら気にしなくて良い。だって、私のサイフからだし。それに、この街の経済回せば悪くは思われないし」
言い終えていなくなる彼を見送る。
今すぐとは言ってないのだが、先に言っておくというので好きにさせておく。
エレラは伸びをして体をほぐす。
「さくらも良いけどバラもいいかなぁ。バラバラ、バラ」
念じつつ、赤い薔薇を生み出そうする。
ふわっと懐かしい香りと共に、真紅のバラが咲き誇る。
それを透明なものに仕舞う。
これは植物の範囲で作ったなんちゃってプラスチックだ。
なんちゃってなのは見た目程硬くない、ふにゃふにゃしたゲルっぽいものだからだ。
くにゃっとしている。
でも、ないよりはいい。
見栄えする。
納得の出来栄えにできたエレラは、バラを見つめる。
「物語に出てきそうな色合い」
黒っぽい赤。
見つめていると微かに風が吹く。
「おかえり」
今回はエレラの都合で行かせていたので、励まし労る。
「ああ。ところでこの店の名前はなににする。聞かれたが答えられなかった」
「名前?あー、無名じゃだめなのかなぁ」
店の名前なんて考えてなかった。
悩むのが面倒。




