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116/119

116プロムにこっちに関与してこないでほしいので毒を吐く

その後エレラは被害届を出し終わるまでプロムへ「消えて」としか言わないマシーンになった。


口説かれようと気持ち悪いと表明しているのに話しかける男の神経はさすがSランクだなとしか言えない。


コレスが口を出さないのはカラクリがある。


こちらから口出ししないようにと内密に頼んだのだ。


「商売があるから消えて」


漸く始まる大会に人が入ってきた。


やつは残念そうに、二時間居座っていたのを謝ることなく去る。


「うざかったなぁ」


「……本当にいいのか?」


「うん」


「近くにいるぞ?」


「私がおもしれー女になったから、気になったんでしょ」


くだらない。


「で、気付いた?あの人」


「気付いてない」


「よし!」


エレラは人の動きを捕捉する方法を模索していた。


試しにプロムの服に花びらを忍ばせたのだ。


「これでやつが、大体どの方角にいるのかわかるね」


被害届を出したので、次に現れたら起訴だ。


無茶なことをと思われるが、コレスの妻なのでそれだけで終わらない。


「プロムについては知ってる?」


「調べる予定はあったが、調べる前に葬式が開かれることになるかもしれん」


「ふうん」


どうでもいいので、今はボウリングに集中しよう。


Sランクの誰かさんのことなど、今日は特に考える余裕はない。


大会はかき入れどきなのだから。


今時間を取られるのは腹が立つ。


「よし、気合いを改めて。売りまくるぞ〜」


「あいつの動向はおれが把握しておくから気にせずやれ」


「言われずとも、普通になるから。コレスもあんまり入れ込まなくていいよ」


気長にやろうと彼に言い含める。


そこまで気になくても自滅する気がした。


妻に言いよるなんてSだろうとAだろうと、関係ない。


エレラには関係ないので、精神的にも肉体的にもダメージを受けてもらう。


何かやってこればね。


大会を見にきたお客が花を見てふらりと来てくれる。


これはなにかしら、と問いかけられて答えた。


「ドライフラワーというの?」


「いいね。欲しいな?売ってはいないのか?」


「ボウリングの商品です」


夫婦らしき人たちが欲しいと望んできたから、指を差してボウリングコーナーを見せる。


「ボウリング?」


「ゲームです。転がして遊びます」


説明して、やってもらう残念賞も用意している。


妖精と作った普通のクッキーも商品に入っているので、いい具合の商品数になっていた。


「参加賞で一輪だけ花を用意してますよ」


甘い誘惑を振り撒く。


「まあ、楽しそう」


「美しいお二人が参加したら、他にも来てくださる人が来るでしょう」


「う、美しいだなんて」


照れる美人。


「よかったね」


夫らしき人が優しい顔つきで隣に佇む。


「旦那様とお似合いで、絵になりますよ」


「あなた。お似合いですって」


「嬉しいものだね。何回しようか?」


「三回ほどしたいわ」


「ありがとうございます。こちらにどうぞ」


「ええ」


「ここに説明書があります。それでもわからないと思う場合は、お手本を見せますね」


丁寧に対応する。


「こうかしら?」


「はい。そうです」


相変わらず褒めると照れる美人が多数いる。


可愛い。


エレラは癒されながら、夫婦に対応していく。


「エレラ、顔が緩んでるぞ」


コレスに指摘された。


「可愛いから」


「可愛いから?」


「圧が強い。距離も顔も近い」


デレデレしていると、隣に来た夫が嫉妬に身が焦げそうになる。


「近い。離れて」


「口説かないと誓え」


「口説いてないし誓いません」


そもそも、嫉妬する理由がないのに嫉妬する意味がない。


相手の顔をぎゅうっと押しやる。


邪魔じゃい。


既婚者がお客を褒めて口説くなと、逆になんだろうそれは。


となる。


コレスを押しやりつつ、客にお世辞と本音を混ぜてボウリングをレクチャーしていく。


コレスは黙々と、ドライフラワーを箱に押し込んでいた。


商品作りらしい。

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