115新進気鋭の新人Sランクくんだとさ
バカを見ると相手はこちらの顔を見ても引いた顔をせず、嬉しそうに笑う。
「なに笑ってるの?向こう行け」
「ははは。地元じゃこんな反応ないから新鮮だなぁ」
「あのね、私既婚者なのあっちいけ」
シッシッと手を振る。
確かにこの世界は美形は目白押しなくらい、多いがこの美形は一つ群を抜いていた。
コレスに迫るくらい。
「あっちいけよ。商売の邪魔」
水筒を手に持ち、武器として構える。
「えっ、この対応は予想外だ」
本気で驚く仕草にイラ立つ。
「聞こえなかったの?警備さん!警備さーん!」
近くにいた巡回していた警備の兵に声をかける。
目の前の男は「へっ」と間抜けな声を出す。
「どうしました?エレラさん」
準備とコレスの知名度で有名なエレラ。
当然、彼もこちらの素性を知っている。
「この人、急に声をかけてきて営業妨害してきたんです。気持ち悪いので連れて行ってください」
告げると兵士の男が睨みを効かせる。
話を聞こうかと、彼を詰め所へ持って行こうとさらに寄る。
「待っ、待ってくれ!僕は怪しい者じゃない!」
などと言い、ギルドカードを見せてくる。
「え、Sランク!?」
「……だからなに?兵士さん、ギルドランクが高いからって私に声をかけてきた変態に、変わりありませんけど!」
言い切ると兵は困った顔でこちらを見る。
確かに持って行けなさそう。
「誤解だよ。本当にっ。ただ、君が可愛くて声をかけただけで」
「じゃあ、二度と顔を見せないでくれるんなら見逃します」
「な!」
変質者は驚いたあと、うっとりした顔でこちらを見る。
「なんて気丈なんだ。僕がSランクと知って尚、そんなことを言うなんて」
「気持ち悪い」
「う……まぁ、確かにいきなりすぎたかな?」
「存在が不快だから二度とこないで」
あしらうと、兵士の人にこの件は記録に残しておいてくれと言い募る。
「そんな!」
この人を連れていけないにしても、詰所に連れていかない代わりに事件化させる。
「僕は君に惚れたのに」
「Sランクが遂に犯罪に手を染めたか」
新聞社にリークした方がいいかな?
「時間内にどこかへ行かないと新聞社に駆け込みますよ。それか、あなたを訴えます。消えて?」
粘着質なやつは夫だから許しているのであり、赤の他人に執着されるなど絶対にお断り。
「き、キツイな君は。なんで高ランクにそんなに言えるんだい?」
「もう一匹いるからだけど?」
兵の人はちらちらコレスを見てしまう。
一匹イコールコレスだと解読できてしまったらしい。
口元が蠢いている。
笑いそうになっているのか、悲観に暮れているのかは本人のみぞ知るってやつだ。
「既婚者だったよね?君をだれよりも愛せるから夫と別れてみないか?」
「同じムジナに乗り換えたとて、意味はない」
思わず異世界の言葉を組み合わせて遠い目になった。
この男はSランクの己の方が価値があると思い込んでいて、高位互換と思ってるけど。
下位互換なんだよなー。
同等に見えるかもしれないけど、利いたところこの人にも会いに行ったと思うし。
「Sランクっていったよね?名前は?」
「プロム!君は?」
名前を聞いていたくせに白々しいが、教える気はない。
「Sランクプロム?」
「つい、三ヶ月前に認定されたのさ」
プロムは自慢げに言う。
「知らないのも当然か……」
自信満々に言おうと、横にいるコレスの存在に気付けない時点でSランクの面汚しなのではないかな?
「どうだい?」
「早く消えてよ。何度言えばいい?」
「凄いな君は」
「あなたの感心なんてどうでもいいから消えて。今すぐ。近くにいたら訴えるから。今ここで訴えてもいいけどね?」
いつまでここにいるのだ?
「警備さん。被害届を出すから紙を持ってきてくれますか?」
「分かりました」
男はコレスがいるからか、簡単に離れていく。
「いいの?味方がいなくなるよ」
「黙って」
イライラする。