114武闘大会始まりと声をかけられる不測の事態
武闘大会当日。
今日から数日にかけて、武闘大会が行われる。
コレスは特別枠なので一番最後に出て欲しいと言われて、二つ返事したらしい。
なぜか、それは妻といたいからだ。むしろ、その方法を男から言うつもりだった。
なので、運営からそっちでと言われ了承するのは当然。
エレラも朝から張り切る。
今日は魔導販売機をいくつもセットしておき、事前に準備しておいた。
街の人たちは、水鉄砲や水筒で慣れていたので威圧感が起こるほどたくさん置いていても、騒動になることなく一夜を過ごす。
「大会って空気、結構好き」
「盛り上がりの熱気や勢いか」
「そうそう。祭りって空気最高」
「なら、水の国の祭りに合わせて向こうに行くのもいいな」
「おっ、コレスも旅の醍醐味わかってしたねぇ」
水鉄砲で子供達に持たせて宣伝してから、他の店も子供を立たせて宣伝するところが増えた。
しかし、ただ立たせているだけなので、逆効果になっているところが殆ど。
「宣伝方法が失敗してる」
「気になるか?」
聞かれてちょっとだけ、と小声になる。
(立たせているってところで特に女性に心象が悪い)
子供を立たせたままにさせておくのは、あまりいい気持ちではない。
なにかさせておかないと。
水鉄砲のときは、子供達がひたすら遊んでいたからわかりやすかった。
「あれじゃあ、人を置くよりも台に乗せておいた方がいい」
自身の声は彼にしか聞こえない。
周りの店の準備の声や無機質な音もかなり響き、静かとは正反対の現場になっている。
「うちは人を置かなくてもアレがある」
客がくるのは武闘大会が始まる二、三時間くらい前になる。
「チェッカーベリーとドライフラワーがこんなに飾られてたら、皆気になって覗きに来てくれる」
大会はお昼前なので、朝から皆大忙しになる。
「ボウリングもばっちり」
こちらは店のあちこちに花を飾り、魔導販売機を置いてある。
その斜め横にはボウリングのできるゲームが見えた。
「販売機もいつでも補充できる」
「コレスはここにいるの?目立たない?」
「顔出しはしてないから知ってるやつなんてギルドにいるやつ程度だ。知ってるやつがいたら、こっちも興味がある」
コレスは力も強いけど、隠密のスキルも高い。
いつも動き回っているから、人の記憶に残るほど近くに留まることもあまりないという。
それならば、彼を知る人は珍しい。
その顔を見てみたいと興味を持つのも、当たり前の感情。
彼は目立つと理解しているからこそ、見えないように動く。
日々、会話から聞き取れている中で己の中でそうなんだろうという、り方なのだろうと推測。
(なにもすることはないけど)
「ボウリングについての冊子も作ったし、妖精達もありがとうね」
お礼を言うと妖精達は祭りを楽しみにしていると言われる。
イベントを楽しむ感覚を持っているのだなと、微笑ましい。
「妖精達ようにボウリング作ってみたけど、やる?」
コレスが手持ち無沙汰になったと、小さいボウリングコーナーを作った。
そう言うと、妖精達は狂喜乱舞でボウリングを怒涛の様子で、やり始めたと彼の言葉で知る。
「並んでいるぞ。大盛況だ」
「それなら、作って良かったね」
彼へ告げると真顔で「本気で暇だったから作ったんだぞ」と謎に念押しされる。
「わかってるって」
妖精がエレラに侍るのを歓迎してないのは初めからわかっている。
自分が来てくれとも、言ってないことを思い出して欲しい。
好きなだけいさせればいいでしょ、と言ってるのだが。
火の国の愛し子について聞いてはいたが、当事者になるなんて夢にも思わなかった。
そのようなものには、物語のヒロインがなるでしょと他人事だったし。
ボウリングの準備は終わっているので二人でぶらぶらと話していると、小さく声がかけられる。
「すみません」
「はい。まだ空いてませんよ」
「いえ、違います。あなたに声をかけたくて」
「……はあ?」
急にエレラは人行きの笑みを嫌悪に変えて、ドスの利いた声音を相手に聞かせる。
こっちは声をかけられて不快だとわかりやすく伝えられるでしょ?




