109ミステリーがおきないと指紋は意味がない
事件も起こらないだろうしね。
事件の前にコレスがどうにかしてしまうだろうさ。
「だが、力以外で相手を追い詰めるのが楽しそうだ」
「楽しそう。まぁ、言いたいことはわかる」
エレラもゲームやアニメでそういう系統のものは大好き。
裁判ものとか。
「今度追い詰める時に使う」
「使っても意味あるかなぁ?」
指紋を全く知らない人達に説明しても皆納得するかは謎だ。
誰も知らないことを急に説明しても、しらばっくれるし。
意味がわからないことを言うな、と言われるだけでは。
科学のかの字もないからね。
「無駄な気が。そして、結局力でねじ伏せるやつだよきっと」
言い聞かせるが、彼はもう決めてしまっている。
「絶対指紋の事件を引き当てる」
なんの関係もない事件ばかりだよ。
前回の愛し子も、今回の侯爵も温泉をくれと言われただけなのだ。
指紋を取ったり、指摘したりする隙間は全くこれっぽっちもない。
それに、犯人が認めないのでコレスが言わせるという最後になるのはどれも同じなのだ。
テレビみたいに、犯人が自白なんて夢物語。
簡単に言っては犯行など行わない。
残念だけどそれが現実なのだ。
エレラは何度言い聞かせても指紋に拘る男に、説得をやめた。
やりたいだけなら、やらせたら自然と終わるだろうし。
二人で会話を続けているとコレスがチェッカーベリーを欲しがるのであげる。
それをくるくる回して見る男。
「気に入った」
「赤い花の中でも綺麗って評価高いからね」
「綺麗だ。飾ると目立つから、飾る」
「どこに?」
出店をする時に飾るんだそう。
それなら、目立って人が来るだろうね。
エレラはそれはいいねと他の花を作ることにした。
色とりどりの方が人目が増えるし、気になって近寄るだろう。
それならば、やりやすさも話題にもなる。
いいアイデアにコレスを褒めるので、彼はフッと笑う。
「すごい話題になるよ」
「華やかな花は基本的に襲ってくるからな」
異世界の花は襲う。
それは常識。
「見た事のない花とわかると人がごっそり来るぞ」
そうなればいいけどね。
「人目も引くし、ボウリングってだけでもオリジナルだし」
ボウリングも話題になるし。
「これは当日楽しみ」
「店をしたいのか?」
「ずっとは無理かな。たまにでいい」
店は彼と結婚前にやったから十分。
仮にやるとしても、人を雇ってやらせる方がいい。
「コレスは店とかやらない?Sランクの店とか皆来るよ」
「面倒だ」
「面倒なら、私と一緒の理由」
「だが、お前とやるならずっとカウンターに座っておく」
「つまらないと言うんなら、別にやらなくてもいい。わたしも押し付けるつとりもないし……それに、魔導販売機もあるから」
「魔導販売機はいいな」
お金の問題さえどうにかできれば、遠くてもお金が受け取れるのに。
遠出できるようになる。
「銀行があればいいのに」
「銀行」
銀行について説明すると、彼は難しい顔をしてお金をやりとりするのは大変そうだなと告げられる。
この世界は銀行があったとしても、銀行がモンスターにドカンとやられるのだろうし、無理だ。
「どんなに支店を増やしたいと思っても、いつモンスターにやられるかわかったもんじゃねえからな」
「難しいのはわかってるんだけどね。やっぱり商人に商品を卸してもらった方がいいかなぁ」
「ゲラルトナか」
「そうそう。まだ住むけど、いつどこに行くかなんて私にもわからないからさぁ」
もしかしたら、ひょいと違う国に行きたくなるだろうし。
「その時はトカゲドリを持っていくぞ。卵が美味いしな」
「そうだね」
馬車で移動するので、誰かに止められることもない。