108景品やチェッカーベリーと指紋
埋めた桜も順調に大きくなってきているので、そろそろなにかしようかなと思い始める。
うまくいくと、他のことも気になってくるのだ。
次なるものは祭り、武闘大会の準備。
とはいってもボウリングはすでにあるので、もうやることはない。
「なにか景品あった方がいいよね」
「水筒、水鉄砲、ドライフラワー」
「うん。それでプラスやっぱりもうちょっといいものがあればやる気が皆出るかなって」
何にしようかなと嬉しくなる。
こういうふうに作ったものを誰かが喜ぶのは想像してみたら、楽しい。
「ドライフラワー……新しい花を生花がいっかなぁ」
「新しい花、妖精達も期待に集まってるぞ」
「そんなに?なんか気合い入るね」
観客が多いというのならば、こちらもなにかやってあげたくなる。
店で出す景品はなんの花がいいかと考え、欲しいと思わせる花ならばさらに客が集まると思う。
「ううーん」
コレスは何の花がいいかと聞いてみると、夢で見た花がいいと口にした。
どの花だろうと首をかしげると、赤い花と言われてそんな目立つ花なんて、あっただろうかと首をかしげる。
「なにか特徴がないとわからない」
「現実にはなく、テレビの中にあった。チェッ、なんとか」
「チェ、チェッカーベリー?」
「それだ」
コレスの指差しに、顎を手にやる。
「いいね!それで」
花は前の人生で色々検索して見ていたのである程度知っていた。
この世界の図鑑があるのならば、その本よりもたくさんエレラの中にはあると自信はある。
「チェッカーベリー作る」
むむ、と集中し形作る。
そういえば、侯爵子息の息子を捕らえた王はその後どうなっているのだろうか。
「よ〜し!できたっ」
「これがその花」
「うん。テレビで見たのとどう?」
「アニメというものだったから、立体的な意味ではわからない」
「アニメだったの?なら、出てもおかしくないね。アニメ見たんだ。何見たの?」
「……ミステリーものとお前は言ってた」
「私もそこにいたのか」
「いつもいるぞ。こちらは俯瞰的に見てるから、いなかったらそれはお前の夢でじゃない」
アニメを見たという彼の反応が薄いのが気になる。
「なんか、えーっと、面白くなかった?」
「お前は大笑いしてたから、面白かったと思うぞ?ただ専門用語が多くて、意味がわからない部分が……わからなかった」
「あー」
アニメもドラマもなにもかも前提条件があって、楽しく見られるから。
コレスの言に僅かな同情が浮かぶ。
「ただ、内容は覚えてる」
「じゃあ、私が教えるよ。わからなかった部分教えるから」
「!──なら、たくさんある」
彼は嬉々とした顔をして、こちらへ寄る。
さらに近くなる距離だが、もう慣れた。
「事件はわかる。その後指紋というのがわからない」
「指紋。異世界の人には馴染みないよね」
色塗り用のインクを指につけて、使わない紙をテーブルに置く。
「指紋はね、指にある溝」
ぐっと紙に押し付けてそれを彼へ見せる。
「人によって溝は違う」
溝が見えるかと聞き頷かれるので、彼の指にもインクを付ける。
「ここに押し付けて見て」
「ん……確かに違う。考えたこともなかった」
インクであらわになった指の指紋を、マジマジと見る。
「これを犯罪の証拠とするんだよ指紋は唯一無二だから、その人が触ったからどうかって一発でわかる」
「んん。わかる……これは使えるな」
「使えるの?」
「使える。あとから触ってないというやつから指紋を取れば触ったとわかる。いつも最終的に威圧感で終わらせるが、これならもっと終わるのは早い」
「いやいや、威圧感の方が遥かに早いよね?」
指紋なんて鈍いとなる。
彼にかかれば犯人は自白する、強さで。
その前にSランクという肩書きで相手は屈服する。