104厳罰にしてね
それは、相手に襲撃と思われるのではなかろうか。
「思わない。事情を詳しく書いておいた。捕らえようとしたら、トカゲドリでもあっちに放り投げて壊滅でもさせるだけだ」
やろうと思えば本当にやれることなので、冗談ではないだろう。
エレラは朝から起き抜けの頭でなんとか、それだけ思った。
朝からなんとも、騒がしい集団だったなぁ。
兵士たちもコレスの攻撃の連続にあっという間にいなくなった。
多分、彼がSランクだとかSランクを攻撃するだとか、それらの情報を貰わないままに連れて来られたと思う。
だって、そうでもないとまともに集まらないし。
絶対に奇襲する相手を隠していたな。
あとで、めちゃくちゃ責められるだろうとわかり切っているオチ。
「すぐにやってくるな。固めておく」
家に入ってすぐに、彼は侯爵と残っていた兵士たちを黒い帯のようなもので、ふんじばる。
「ぎゃあ」や「うがあああ」といった苦痛を思わせる叫び声に人を襲ったくせに被害者ぶるのはやめてほしいと思った。
(フライパンで侯爵殴りたくなる)
我が家を襲ってどうするつもりなのか、ちゃんと解明してほしい。
ただ、襲って終わりなわけがない。
もしかしたら、死んでもいいのだと思われたのだ。
思いっきり亡くなってもいいという、殺意を兵の数で察せられた。
エレラはゾッとする。
貴族の平民への命の扱いの軽さに。
夫がSランク、もしくはどうとでもできる力を持っていなければ自分らは今頃、シカバネになっていたはずだ。
「コレス、コレス」
「どうした」
「王様にはこの人とこの人達を厳しい罰にしてって言って。私達を処そうとしてたんだよ、絶対。脅しなんて生ぬるい目に合わす気なんて初めからなかったよ」
「そうだぞ?」
「え?」
シレッと同意を受けて、こちらこそポカーンだ。
そんなにあっさり認められるなんて。
驚きすぎて唖然としてしまう。
「本気で私達を消そうとしたの?」
「ああ。あいつとあいつらは殺気を向けていた。馬車にはなかったが、兵士たちの中に炎を粘着させるタイプの爆発物があった。この家ごとやる気だった」
「えええ!?」
家ごと燃やすつもりだったと聞き、悲鳴を上げる。
エレラだけだったら、サクリとお亡くなりになっていた。
こわいこわい、怖すぎる!
「嫌!絶対に厳罰にしてもらって!」
「一生日の目が見られないようにさせるから、安心しろ。王がやらなくても、おれがやるしな」
「絶対ね!許さないでねっ」
念押しに念押しを重ねた。
コレスは頷き腕を組む。
「まかせろ」
彼は馬車のある方へ顔を見せて、きたぞと教えてくれる。
誰がきたのかな。
衛兵とか、兵士とか、王城からの使者か。
「王本人が爆走してきてる」
「えーっ。いや、でも、当たり前か……Sランクを襲うなんて大事件だからね」
下手したら亡国だ。
滅ぼすなんてことになりかねない引き金を、侯爵子息はやったのである。
よく考えなくても侯爵ではない子息は、王家の血筋の可能性もあるから、王家も今回のことの連座だろうね。
「くくく。今回こそ、もう王はおれ達よりも下で寝れないな。もちろん、足なんて向けらんねぇぞ」
言葉遣いがいつもより荒く、強い。
「だよね?もうだめだねこの国の貴族。マシな人どこに行けば会えるんだろう」
「いないな」
「いないね。はぁ」
二人で話している間に、馬車の音がここまで聞こえた。
今頃木っ端微塵な馬車が見えている頃だろう。
しかし、それでも王は確認しにいかないといけない。
何が起こっているのか。
頭痛でもしていることだろうなと、責任追及は厳しくさせてもらおう。
ガタガタ、ガヤガヤと家の外がどんどん騒がしくなる。
この家は近郊よりも少し外れたところに建てられているので、近所迷惑にはならないはずだ。
コレス達は扉が叩かれるまでおとなしく待っていることにした。
きっと、王がなんとかしてくれる。
何とかしてくれなかったら、夫が何とかするのであまり気にならない。
「王様に叶えてもらうこと、何にしようかな」
命に危機があったからこそ、今回はゆるい罰やゆるい対応は絶対に断固許さない。
「今回はもっと強い願いでも叶えてきそうだな」
彼も同じ気持ちだった。