4.行方不明
現実ではない白昼夢だろう。
不思議とそんな疑問すら抱く事はなかった。
のは、やはり、大仙人のオーラが凄かったからだろうか。
ここは現実だ。
異世界の地に足がついている現実。
「今は地に足がついてないけどなっ!」
栞太は楽しげに叫んだ。
多種多様な色と形の岩と雲が、見渡す限りに多数存在している空の中で。
頭の上にうさぎ耳二つ、頭の横に人間の耳二つと、四つの耳があり、脚がとっても長く、短パン半袖姿の少年の外見であり、案内役の道士でもある、八雲に背負われ。
魂が肉体から半分飛んでは、肉体に戻るという異常な現象を、忙しなく繰り返しながら。
最初の勢いはどこへやら。
この状況が五分続いたのち、酔い始めた栞太は弱弱しく八雲に尋ねた。
ぴょんぴょんぴょんぴょん。
上に下に斜め下に斜め上に横に、距離短く距離長く。
軽々と空に浮く岩から岩へと飛び跳ねる八雲に必死にしがみつきながら。
あとどれくらいで凍夜殿の元に辿り着けるのかと。
「あっ」
「えっ?」
ごめーん足滑らせちゃった近くに岩がないし、ちょっと地上に落ちるね。
危機的状況にもかかわらず、とっても軽い口調で言われたような気がした栞太の魂はするりと肉体から全部抜け出しては行方不明になってしまい、肉体は休眠状態に陥ってしまったのであった。
(2024.3.3)