17.冒頭部分
祇園精舎の鐘の声、
諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、
盛者必衰の理をあらわす。
おごれる人も久しからず、
唯春の世の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、
偏に風の前の塵に同じ。
祇園精舎の鐘の音には、
諸行無常すなわちこの世のすべての現象は絶えず変化していくものだという響きがある。
娑羅双樹の花の色は、
どんなに勢いが盛んな者も必ず衰えるものであるという道理をあらわしている。
春の夜の夢のようである。
勢い盛んではげしい者も、結局は滅び去り、
まるで風に吹き飛ばされる塵と同じようである。
『平家物語』冒頭部分より。
九尾の妖狐は、様々な書物を仙界にばら撒いた。
九尾の妖狐は、様々な書物を用いて、気紛れに仙人に呪いをかけて、気紛れに仙人を助けた。
「九尾の妖狐も、いずれは」
でんでん太鼓。
柄のある太鼓の両側に小さな鈴や玉などを糸で結びつけ、その柄を持って振ると、鈴や玉などが鼓の面に当たって鳴るようにした玩具。
灰色のごわごわしている長髪を後ろで一つにまとめて垂らした髪型、顔よりも一回り大きな拳、大人の手と同じくらいの身長の小人であり、仙人でもある燧乎は、でんでん太鼓を振っては、ちりんちりんと鈴の音を鳴らしながら、『平家物語』の冒頭部分を口ずさんでいた。
覚えているのは、気に入っている冒頭部分だけ。
言葉の響きが気に入っていた。
とても、印象に残り、かつ、言い易い。
「ん?」
燧乎の岩にて。
大きな岩、小さな岩、高い岩、低い岩、太い岩、細い岩。
岩だらけの中、燧乎は、岩ではないものを発見した。
小人である己と同じ大きさ人間だった。
「んん?これは大仙人様が釣ったという只の人間ではないか?」
(2024.3.14)