四凶
三千歳草の妖怪界にて。
濃淡はあれど常に暗さが漂うその世界で、四体の妖怪が円座になっていた。
一体目の妖怪の名は、渾沌。
目、鼻、耳、口がなく、四枚の翼を背中から生やす男性の姿をしている。
念話にて意思疎通は可能。
二体目の妖怪の名は、窮奇。
ハリネズミの毛皮を全身に纏い、蟀谷の辺りから下に湾曲した二本の角を生やす男性の姿をしている。
三体目の妖怪の名は、檮杌。
顔の縦の長さよりも長い上向きの湾曲した牙と、とても長い尾を生やした男性の姿をしている。
四体目の妖怪の名は、饕餮。
漆黒の肉体に白色の螺旋の文様を施す男性の姿をしている。
渾沌、窮奇、檮杌、饕餮。
これら四体の妖怪は四凶と呼ばれ、妖怪界の長である九尾の妖狐を補佐し、妖怪界を取り締まる役を担っていた。
「聞いたかい?おまえたち。凍夜様の相棒が人間の少年だとさ」
渾沌は念話で言った。
「ああ。わしはまこと、信じらぬが。九尾の妖狐様もお認めになったらしい」
窮奇は言った。
「吾は九尾の妖狐様がお決めになった事ならば、絶対服従ではあるが、今回の件に関しては、そうできないかもしれない」
檮杌は言った。
「九尾の妖狐様の意に沿うか否かは、その人間の少年を直に見ない事には話は進まねえよ」
饕餮は真顔のまま、言葉を紡いだ。
生かすか殺すかもな。
(2024.10.19)