161.ゆったりまったりおっとり
三千歳草の仙界、一心の岩にて。
外見は桃色の宇宙服である宝貝、天上無敵を常に装着している一心は、ぷかりぷかりと空に浮きながら、己の岩に訪ねて来た流柳とゆったりまったりおっとりと話していた。
今、話題に上がっていたのは、異世界へと旅立ってこの三千歳草に居ない九尾の妖狐である。
「流柳は九尾の妖狐について行かないのでござるか?」
「はい、ついて行きません」
「寂しくないでござるか?」
「寂しくないんですよねえ。これが」
ふふ。
流柳は軽やかに、流麗に、うっとりと頬を染めて笑った。
「九尾の妖狐様が過ごした異世界での話を聞くのがとても好きなので、今何をしてらっしゃるのかと色々と想像していて、寂しいと感じる暇がないのですよねえ」
「流柳は本当に九尾の妖狐が大好きでござるな」
「はい。永久に敬愛するお方なのです」
「本当は仙界ではなく妖怪界で待っていたいのではないでござるか?」
「いいえ。拙者は望んで仙界に来ました。凍夜様を見守る為に。凍夜様は、いずれかは九尾の妖狐様の後継者として、妖怪界を導いてくださるのですから。その時がすごく待ち遠しいです」
「凍夜が妖怪界の長になった時、九尾の妖狐は引退すると思うでござるか?」
「そうですねえ。引退はするでしょうけど、長で居らっしゃる時と変わらずに自由に行動すると思いますよ」
「そうでござるなあ」
「はい」
「けれども、もしも凍夜が妖怪界の長にならないとなったら、どうするでござるか?」
「その時は九尾の妖狐様がまた新たな後継者をお決めになると思いますけど。凍夜様は絶対、妖怪界の長になりますよ」
ふふ。
流柳はまた、軽やかに、流麗に、笑った。
頬は紅色に染まったままであった。
「綺麗でござるよ。流柳」
「ふふ。ありがとうございます」
(2024.5.11)