157.梅の大福
三千歳草の仙界、灼蛍の岩にて。
茜色の草木染めの原料となる蔓性多年生の植物である茜。
薔薇科の落葉低木であり山吹色の美しい五枚の花弁がある花が咲く山吹。
黄色の花が固まって咲くアブラナ科の植物である菜の花。
己の髪の色と同じ三種類の植物が溢れ、一本の梅が聳える岩にて、灼蛍は凍夜と闘う為に弩九の研究室や警備宝貝の破壊、栞太誘拐という罪を犯しては、灼蛍に身柄を預けられている凛矢と向かい合っていた。
地面に胡坐をかいて、梅の大福を食べつつ、菜の花茶を飲みつつ、のんびりゆったりと。
「なあ」
「うん、何だ?」
「凍夜と闘うにはどうしたらいいかわかるか?」
「わからんな!」
「即答かよ」
「ああ。凍夜は強い。俺も闘ってみたいが、凍夜が闘う意思が皆無だからな」
「っけ。諦めろってか?」
「いや。諦める事はない!」
「その心は?」
「凍夜が人間の少年を相棒にしたと聞いただろう!」
「九尾の妖狐が三千歳草中に触れ回っていたからな」
「そうだ!あの凍夜が人間の少年を相棒にしたのだ!まったく俺たちは予想できなかっただろう?」
「ああ。人間の少年が凍夜の相棒になるかもしれない、いやなると宣言していた大仙人も耄碌したなと思っていたな」
「うむ!大仙人様は耄碌しているとは思っていないが、俺も信じられなかった。まだまだ修行が足りないな!」
「つまり、信じられない事が起こったから、俺も凍夜との闘いを諦める必要はないって言いたいのか?」
「そうだ!だがもう罪を犯してはいけない!正々堂々と凍夜に申し込むのだ!ただし、暫くは俺の岩から出られないからその事は胸に刻んでおくのだぞ!」
「わかってるよ。つーか。うぬは本当に暑苦しいな」
「うむ!俺は常に燃え滾っているからな!」
(2024.5.8)