153.揺り椅子
仙界の仙桃宮のとある部屋にて。
ゆらりゆらゆら。
大仙人と凍夜は揺り椅子に身体を預けては、各々自らが作り出す心地よい揺らぎに心身を癒していた。
「むふふふふ」
「………」
「流石、わし。大仙人だもの。凍夜の真の相棒を釣り上げて当然だもの」
「………」
「異世界だとか、人間だとか、能力の有無とか。関係ないんだもの。凍夜と栞太が互いに求め合った。この心が大事なんだもの。当人たちが気付かないこの心を察知したわしという大仙人の存在が大事なんだもの」
「………」
「むふふふふ。大仙人ってね。やっぱりすごいんだもの。そりゃあね。偶には、失敗するよ。例えばね。酔っぱらって、ラフレシアの中に入り込んでね、栞太に途轍もなく心配をかけてね、ラフレシアに途轍もなく負担をかけてね途轍もなく申し訳ない事をしてね、仙界のみんなの尊敬とか信頼とかが失墜する事もあるんだけども。それをね、やっぱり、帳消しに、はできないけれど。帳消しにあと一歩届くかもしれないって思わせる能力があるんだもの大仙人だもの」
「………」
「むふふふふ。これから桃色の時間の始まりだね」
「………」
「わしに相談もなく、勝手に栞太を異世界に帰したって。もう仙界に栞太を連れて来ないって、凍夜が宣言したとしても。桃色の時間の始まりだね」
「………」
大仙人は揺り椅子の揺れを止めて、隣に座る凍夜へと顔を向けた。
凍夜は眠っていた。
「むふふふふ」
(2024.5.4)