152.凍夜
凍夜の秘密の場所にて。
まだ大仙人の宝貝、導香の力が途切れていないのか。
ふと、脳裏に過った思考を、凍夜はしかし、どうでもいいかと思った。
『俺を守ってください!俺も凍夜殿を守ります!』
栞太の怯えを如実に感じ取っていた凍夜は、栞太は身を引くと予想していた。
相棒にはなれない。
そう言うと思っていたのだ。
(まあそれでも、ポメガバースの呪いは解きますって宣言はするとは思っていたけど。そっか。僕の相棒になるのは、諦めないんだ。そっか。う~ん。しかも、守って、守られて、ね。ふ~ん。そっか、そっか)
ただの人間が、仙人を、しかも、遺憾ながらも、仙界の五本の指に入る実力者である凍夜を守ろうだなんて、片腹痛い。
赤子が大人を守ろうとするのと同義語である。
赤子が大人を守るだなんてできるわけがない。
そう突き放す事もできたが。
今更である。
凍夜から申し出たのだから。
僕が君を守ってあげる。
君を真の相棒に。
(してあげる。だなんて。僕って、何様?はあ)
凍夜は栞太が己の口を覆っていた両の手を退かしてくれてのち、ほんの少しだけ時間を置き、言った。
僕を守ってください。
(2024.5.3)