131.重宝
「蝶よ花よと背負った方がいいって流柳に言われたから、すごく気を付けて來凱を背負ったんだけど。やっぱり負担がかかったみたい。起きないね」
人間界の竹林にて。
淡雪筍と黒龍と白龍の鱗の生え変わりの現象が要因で暴走していた心槍が、黒龍と白龍の鱗の生え変わりの現象が治まって、正気に戻ったのを見届けてから眠りに就いた來凱は、ずっと眠ったままであった。
來凱を背負って、淡雪筍を取り込んだ心槍の槍である青丹を持って逃げていた八雲は、草苺をあと一粒だけと決めて、味わって食べながら、とても静かに眠る來凱を見つめていた。
「すごく静かに眠るんだね、來凱って」
「うむ!共に眠る時は重宝するな!」
八雲の横に座っていた灼蛍もまた、來凱を見ながら言った。
「起きないかなー」
「八雲は來凱に用事があったのか?」
「うん。ちょっとね。でもまあ、今回はいいや。用事はまた今度で。このまま寝かせると風邪引いちゃうかな?俺、來凱の家に送ろうか?」
「では、余が來凱を送ろう」
土下座を解いた心槍であったが、來凱と共に食べようと考えていたので、勧められる草苺にはまだ手を付けていなかった。
「体調は大丈夫か?」
「ああ。だが、まだ淡雪筍を取り出すのは不安なので、あと、そうだな。三日したら、淡雪筍を取り出す。場所はここでいいだろうか?」
「ああ。吾輩はここで待っておる。微塵も動かずに待っておるので、よろしく頼む」
「ああでは、淡雪筍と一緒に取り込んだ人間の少年と、凍夜様を「暫し、待て」
心槍が栞太と凍夜を、両の手で横向きに持っていた妖具、青丹から取り出そうと言おうとした時だった。
妖具、青丹から、ひょっこり、九尾の妖狐が出てきたのだ。
(2024.4.16)