130.抵抗
ああ、面倒だなあ、と思う。
君に向けるみんなの感情を、愛情だと言っていいのか、わからないけれど。
愛情だと仮定してみてみると。
とっても、面倒だなあと思う。
君だけの問題なら、面倒だなあとも思わなかった。
僕にとっての問題でもあるから、とっても、とっても面倒だ。
いや、君に向けられるみんなの愛情でとばっちりを受ける事だけが、とっても、とっても面倒なわけじゃない。
君が僕に向ける愛情も、とっても、とっても面倒だ。
君への愛情を、君からの愛情を例えるなら、風の化け物。
規格外で、目視するなんて、把握するなんて到底無理な、風の化け物。
僕は、渦巻きが大きく移動する距離が長い台風と、風力の強い竜巻がかけ合わさった、途轍もない風の化け物に翻弄されっぱなし。
抗えば抗うほど、疲労も傷も増えて行くだけ。
痛い目を見るだけ。
だから、翻弄される。翻弄され続ける。
抵抗はしない。
そう思っていたけど。
一度、抗った。
妖怪界から逃げて、仙界に逃げた。
後継者から逃げた。
もうこれっきりだと思った。
抗うのは、これっきり。
あとは、また、翻弄され続けよう。
ポメガバースとか意味不明な呪いをかけられた時も、解く術を探そうとはせずに、解く術を知らないか仙界のみんなに尋ねる事もせず、解く術を教えてと君に対峙する事もせずに、ただ、受け入れた。翻弄を選んだ。
後継者から逃げる。逃げられる。
抵抗はこれだけ。
そう、思っていたのに。
(2024.4.16)