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125.心臓の音




 のう、凍夜いてや


 九尾の妖狐は去り際に言った。


 そちと栞太かんたは似ておる。

 ゆえに、最強最高の相棒になれるぞ。






(………か弱い存在だって言いたいのかな?)


 そうだったら否定はしない。

 自分も、そして、栞太かんたもか弱い存在だ。


 九尾の妖狐と入れ替わりで、ポメラニアン化した凍夜いてやの前に現れた栞太かんたは今、仰向けに寝転がっては、己の心臓の上にポメラニアン化した凍夜いてやを乗せていた。

 栞太かんた曰く。

 他人の心臓の鼓動音には癒しの効果があるらしい。


「………」

「………」


(う~ん。癒されない。し。心臓の音、うるさいし。意識が明確だからかなあ。いつもはおぼろげだし。まだ話せるような気もするし。別に癒さなくてもいいよって言った方がいいかなあ。でも、言ったら癒したいですって元気いっぱいに言いそうだし。うん。話せない振りをしておこう………にしても、心臓の音を聞かせたいからって、全然話さなくても。まあ、話されても困るけど。まだ、子守歌の方が。ううん。もしも、めちゃくちゃ下手だったら、余計に精神的負担が増える、か)


「………」

「………」


(まあ、いいか。このまま、心臓の音さえ我慢していればいいんだし………僕、重たくないのかな。ポメラニアン化してるけど、上半身に乗っかっているわけだし。みんなみたいに、筋力、仙筋力があるわけじゃないしなあ。苦しいんじゃないかな。下りた方がいいかな。うん。圧死はしないだろうけど。いや、どうだろう。人間の、しかも、子どもと接する事なんてほとんどないから、さっぱりわからないや。う~ん。やっぱり下りるか。心臓の音が気に入らなかったって、落ち込む。かな。いやでも今の僕は、気紛れなポメラニアンだしね。うん。ずっと、この子の上半身に乗っかっているわけがないよね。気紛れなポメラニアンなんだから。本当なら逃げ去っててもいいんだからね)


「………」

「………」


(………寝てるし。僕が君を癒してどうするんだよ)


 静かだったのは、口を閉ざしていたわけではなく、眠っていたかららしい。


(まあ、淡雪筍あわゆきのたけのこ掘りを、しかも素手で頑張って掘っていたから、疲れたんだ。ポメラニアン化してないから、そこまで疲れているわけじゃないのかな………でも、本当に静かに眠ってるなあ。寝息も寝言も聞こえない………心臓の音、してるよね。まさか、死んでるなんてないよね………うん。大丈夫。ああ、もう、人間はか弱いから嫌だよ。心身に悪いね。ここから出られたら、)


 そろりそろり。

 凍夜いてやは起こさないように、栞太かんたの上半身からそっと下りてのち、傍らで寝そべって、しっぽだけを栞太かんたの上半身に乗せて、目を瞑った。


(ここから出たら、さよならだね)


 大仙人様も、短い間だけど、さようならだ。











(2024.4.15)




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