123.土下座
「迷惑をかけて、大変すまなかった」
三十分が過ぎた。
正気に戻った心槍が土下座しては微塵と動こうとしないまま。
心槍が正気に戻れたのは、來凱が奇跡を起こした。
わけではなく。
数時間はかかるはずの黒龍と白龍の鱗の生え変わりの現象が、果ては三十分というとても短い時間で終わったのだ。
灼蛍は黒龍と白龍の鱗の生え変わりの現象が三十分というとても短い時間で終わったのは來凱が起こした奇跡だと、來凱を褒めはやし、八雲も灼蛍に同調して來凱すごいと褒め称え、今は調子が戻らないので槍に取り込んでいる淡雪筍を出す事はできないと心槍に言われた琅青は、無念だしかし先延ばしにされればされるほど旨味が増すだろうと自らを慰めつつ、草苺を食べるようにみなに勧め、灼蛍と八雲に褒め称えられていた來凱は気を失うように眠っていた。
「心槍よ!もう三十分も土下座をして己を罰したのだ!そろそろ己を赦し、草苺を食べながら己を癒し、ゆっくりと休んでのち、己を鍛え直せばいい!」
「………いや。妖怪として、しかも、捕吏に手を貸している妖怪として、途轍もなく強力な超自然的な現象であれ、無様に影響を受け、あまつさえ暴走するなど。赦される事ではない」
「うむ!では、己を赦さないままでいい!土下座を解いて、草苺を食べながら己に歩ける活力を与え、ゆっくり休んでのち、己を鍛え直せばいい!今度は超自然的な現象を受けて暴走するのではなく、己の真の力として受け取れるようになればいい!敵ではない!味方だと思えるようになればいい!」
「………そなたは本当に常に前を向いているな。前を向き、熱く、周囲の者を奮い立たせる」
「誉め言葉嬉しや!」
「………來凱が目を覚ましたら、共に草苺を頂こう」
「うむ!」
「大丈夫。俺が琅青が全部草苺を食べないように見張っているから」
「安心しろ。吾輩が八雲がすべて草苺を食べぬように見張っておる」
「うむ!安心しろ!俺が琅青と八雲が草苺をすべて食べないように見張っている」
「………ああ」
よろしく頼む。
(2024.4.14)