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117.蹴鞠




 これ以上、一緒に居ても精神的な重圧を癒す事はできない。寧ろ、より悪化させるだけか。


(考えれば容易にわかるものを。何故、私の家に連れて来たのか)


 答えが即座に出る自問に、嘲笑を浴びせたい気分になった。


(それは、)


 大仙人の下へと黒龍を送り届けようと思った白龍は、やおら自身の目を覆っていた片手を放し、次に黒龍の目を覆っていた片手を放すと、閉じていた瞼が開いて、漆黒の円らな瞳が自身を真っ直ぐに捉えている事に気付いた。


 非難しているのか。

 真っ先に浮かんだ考えに、否と思い直す。


 いつだって優しかった。

 口数が少なく、表立って言葉をかけられる事はほとんどなかったが、気遣われている事には気付いていた。

 気付いていても、やんわりと、受け流していた。

 受け止めた事は、なかったのだ。

 一度たりとも。


(ああ。心を受け止める事もせずによくもまあ。義兄弟の契りを交わしたものだ。黒龍にとっては、とんだ迷惑だっただろうに)


 白龍と黒龍は、一心同体。

 黒龍は関係が拗れぬようにと、義兄弟の契りを交わしてくれたのだろう。


(私の心を優先してくれたのだろう。私は。あなたの心を蔑ろにしたというのに。ゆえに、これ以上はもう)


 目を細めた白龍は、太股の上でうつ伏せの状態で自身を見上げる黒龍を抱え、傍らの円卓に乗せると、揺り椅子から降りては屈み、黒龍の目線に合わせた。


(すまない。自分勝手で)


「あなたが元に戻ったら、義兄弟の契りを解消しよう」


 瞬間、ぶわりと、ポメラニアン化した黒龍の綿毛のような毛が膨張して、そして。


「黒龍」


 まんまる蹴鞠のような形になってしまった。











(2024.4.14)




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