10.たった一人
『九尾の妖狐に呪いをかけられたのは、致し方ないとして。じゃ。度々ポメラニアンになるのも問題である上に、ポメラニアンから仙人に戻る際に、相棒となる、たった一人の仙人に手を借りるのではなく。数人の仙人や道士、霊獣、宝貝の手を借りなければいけない事じゃ!』
『いいじゃないですか。別に。一人だけに絞ったら、その一人に何かあった時に困るじゃないですか』
『きえええい!!!だまらっしゃい!!!』
『ほらほら。そんなに熱くならないでくださいよ。大仙人様』
『今熱くならずしていつ熱くなると言うのじゃ!!!』
『えー。九尾の妖狐と闘う時とか。ですかね?』
『一生ないから大丈夫!!!』
『えー。闘わないんですか?大仙人様ともあろうお方が、そんな弱腰でいいんですか。まあ、僕はいいんですけどね。闘いなんて、避けられるなら避けるべきですよ。うんうん』
『ええい!!!話を逸らすんじゃありません!!!今は、そなたの相棒の話をしておるのじゃ!!!』
『えー。だから言ってるじゃないですか。一人に絞らなくていいですってば。みんなに癒してもらって、仙人に戻りますから』
『みんなに癒してもらい仙人に戻る事を否定しておるのではないっ。九尾の妖狐がかけた呪いの元となる書物にも、記されておるからの。【ポメ化したポメガは周りがチヤホヤすると人間に戻る(戻らない時もある)。周りの人がいくらチヤホヤしても人間に戻らない時は、相棒がチヤホヤすると即戻る。】と』
『だったら、いいじゃないですか』
『よくないです。いいですか?あんなに度々ポメラニアンになってしまうなんて、癒し方が足りないに違いないのじゃ!!!つまり、相棒が必要なのじゃ!!!たった一人の凍夜の相棒が!!!必要なのじゃ!!!』
「この少年が、大仙人様の釣り上げた、僕のたった一人の、相棒。か」
凍夜は気絶して草の上で伸びている栞太の傍らに腰を下ろし、ふむと言葉を紡いだのであった。
(2024.3.9)