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【デスゲーム1】

扉が出現し、次の空間へと向かう断刈達。

先程の件から、あまり空気は良くない。いいや、断刈が死にたがりと分かった時点で空気は良くなかった。 だから然程、変わっていない。ただ若干、気まずい程度に悪化しただけで。気にしている暇など無い。道中にだって、デスゲームは仕掛けられているのだから。


「これって…、針だよな? 」


『ええ。落ちてきたら、確実に串刺しにされて死ぬでしょうね』


高低差に違和感を抱き。ふと、快輝は天井を見上げてみると、無数の針が突き出していた。 断刈の言う通り、落ちてきたら串刺しにされて死ぬのは間違いない。しかし、自分達はお化けである。針などの物理攻撃は効かない。だがそれも普通に考えればの話。デスゲームであるのならば、お化けであろうと即死できるように何かしらの魔法が仕掛けてあるはず。針など効かないなどと豪語しては――、


「――問題、マスターの好きな飲食物を当てよ。不正解だった場合、天井は徐々に落ちる」


突如、機械的な放送が流れ。マスターの好きな飲食物を当てなければ、天井は落ち、脱出も出来ないと言い渡される。 しかし、マスターの好きな飲食物などを分かるはずもない。とはいえ、当てずっぽうに答えては――。


「そんなの分かるわけねぇだろう。じゃあ、炊飯器」


「――快輝さんっ!?」


「それ、食べ物じゃないでしょ」


まさかの快輝の回答に一依は大きく驚き、綿枷は食べ物ではないと指摘する。

時間制限はないため、慎重に考えれば答えに導くだろうと思っていた矢先。

快輝は呆れた口調で炊飯器などと食べ物ではない回答をし、勿論、不正解となってしまったわけで。天井は動き出し、徐々に真下に向かって落ちてきていた。 徐々にとはいえ。結局、快輝のせいで長考している時間は無くなってしまい、当てずっぽうに答えて運に賭けるしかない。とりあえず、素早く回答して正解を当てなければ。




その後、夢玖はアイスクリームと無難に回答し。綿枷は血液や骨と物騒な回答をし。彗亜は炭酸水と唯一、飲み物を回答し。色は違うと思いながらも南瓜、ドライフルーツと回答し。一依は不安ながらも海藻やサトウキビと回答するも、どれも不正解であり、天井は既に頭上に当たるか当たらないかの位置まで落ちてきていた。どちらにしろ、最後の回答が正解しなければ助からない。とにかく、最後の回答が正解であることを祈るしかいないと断刈を除いては――。


『――じゃあ、これが最後ですね。ラーメンと水が好物でしょう? 』


何処か弾んだ声で断刈は最後の回答し、暫し沈黙が流れ。



「正解」



『は? 』

「「――やったあああああ! 」」


断刈は不満げな声色に変え、一依達は喜びの声を上げた。

見事、いや、断刈にとっては残念だが。正解を引き当てたのだった。

正解したことによって、天井は元の定位置に戻り、次の空間へと行ける扉が出現し、一依達は扉の方へと向かう。拒む断刈をどうにか引きずりながら。


『離してください。もしくはどうにか、天井まで登って……』


「――しないし、させるかよっ!いい加減、死ぬことは諦めろ! 」



―――



空間に着いた途端、微かに何かが聞こえて耳を澄まそうと――する前に一依が前のめりに倒れてしまった。 一依が倒れたことに驚き、すぐさま大丈夫かと声をかけるが返事はなく、気を失って――いや、正しくは。


「あ、あの…、あれって。一依さんでは? 」


魂があの世へと向かおうとしていた。

そう、困惑した表情で色が指差す方向には、一依の魂があの世へと向かおうとしていたのだ。 突如、起きた事態に困惑と絶句しながらも。どうにかして、一依の魂を取り戻そうと追いかける。しかし、追いかけようとするも思うように身体が動かない。それと同時に微かに聞こえていた音が最初に聞いた時よりも大きくなっており、今度はそれが何の音なのかハッキリと分かる。


何の音が分かった瞬間、また音がより聞こえる方に振り向くと。

何故、動かないのか。何故、一依が倒れてしまったのか。原因がすぐに特定できた。


「お経ですね……、しかもお祓い効果のあるお経」


原因――、それはレコーダーから流れ出てくる、お祓いの効果があるお経であった。

お化けにとって、お経を聞くことは命取りや自殺行為となる。お経を聞けば聞くほど、身体は衰弱し頭が回らなくなり、最悪の場合は死に至ることもある。それがお祓い効果があるお経であれば、更に死の確率は上昇する。 つまり、微かにとはいえ。一依はお祓い効果のあるお経を聞いてしまったせいで倒れ、魂があの世へと向かい。自分達は思うように身体が動けなくなってしまったのだ。それが大きくなっているのであれば尚更、効果覿面だ。 すぐさま、空間を出なければ。色達もあの世へと向かってしまうが、断刈を除いて一依を見捨てる事など彼らには出来ない。


「と、とにかく。耳の器官がある場所を塞いで、レコーダーを壊せば……あっ、」


「騒げば、なんとかなるはず!わー!わー!…、って、逆に音が大きくなっ…て」


「綿枷っ!夢玖っ! 」


「くっ、考えれば考えるほど。お経が耳に……す、まない」


「彗亜さん…! 何をしてもお経には無駄みたいですね……」


どうにかして、それぞれ思いついた作戦を実行するが無意味であった。

一依に続いて、綿枷、夢玖、彗亜の三人もお経に負けて、魂があの世へと向かってしまっている。 こうなってしまえば、全滅するのも時間の問題。もう諦めて死を受け入れるしか――、



「『――まだダメ』」



「え、今の声は……まさか、いや、ありえない…って、あら? 」


「どうした? 」


「先程までお経に負けそうだったのですが…、普段と変わらず動けるようになりまして」


何故だが分からないが、先程までの事が嘘のように身動きが取れるようになっていた。

しかし身動きが取れるようになれば、こっちのもの。


「快輝、レコーダーを破壊してきますから。もう少し、辛抱していてください」


「は、いや、待て…!非力なお前じゃ、破壊するのは無理だ。俺が破壊する」


「しかし…、」


「その代わり、色はアイツらの魂を取り戻してくれ。大丈夫、俺は色がいる限り死なねぇ」


「……はぁ、分かりましたよ。破壊できなかったら、爆散させますからね」


快輝にレコーダーを破壊するではなく、一依達の魂を取り戻してほしいと言われ、渋々受け入れることに。 一依達を助けるべく、色は魂を取り戻しに。快輝はレコーダーを破壊しに足は無いが足を運ぶ。



重く気だるい身体をなんとか動かし、レコーダーの前へと辿り着き、すぐさま腕を縦に振って破壊を試みる。 何度も同じ動作を繰り返しているうちに、鈍い音と破裂音が交わりながらお経が完全に鳴りやむ。また鳴りやんだと同時に魂も取り戻せたようで、一依達はあの世に向かうことはなくなった。


「よしっ!かなり危機的な状況だったが、なんとかなった! 」


「まぁ、そうなんだけど…、煮締那さんのことを忘れてない? 」


一依達の魂が戻り、お経も聞こえなくなって安堵するの束の間。

綿枷に指摘された事により、断刈の存在を完全に忘れていた事に気がつく。

しかし、遅かったのか。色曰く、断刈の魂は無かったらしく。もしかしたら――、


「まぁ、煮締那さんとっては本望だったみたいだし。別に僕達のせいじゃないから…」


『――だったら、よかったんですけどね。綿枷さん』


「う、えぇぶっ!? あっ、煮締那さん…、ご無事だった、あっ、いや。その流血を見るに無事ではないみたいだね……」


突如、背後から現れた血だらけの断刈の姿に驚くも。血だらけではあるものの、魂はあの世に向かっていなかった事に改めて安堵する。だが、断刈は相変わらず淡々とした口調で不満と血だらけである理由を口にしていた。


『過去にお経を何百万回も聞き過ぎたせいで、効かなかったのですよ。しょうがないので、この先に続く空間を何個か入ってみたのですが……、まぁ、ご覧の通り。血が流れ出るだけで、死には至らなかったのですよ。はぁ…、最悪です』


どうやら、断刈は過去に何百万回とお経を聞き過ぎたお陰で耐性がついたらしく、逆に効かなかったようだが。 お経にも手を出すとは、やはり死にたがりの考えは恐ろしいに尽きる。とはいえ、改めて一応は全員無事だったのは何よりだ。 今度は断刈の存在を忘れないように気をつけながら。脱出するべく、更なる空間へと足は無いが歩み進めていくのだった。

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