表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/70

【逃れられぬ縁 前編】

落ち着いた低い声の正体は、蕾努 彗亜という王の元側近の使用人だった。

そして、その蕾努の隣にいるのは元殺人鬼兼宮廷道化師の冠化 一依で間違いないだろう。 どんな目的でここに来たのかは分からないが、少なくとも友好の意味で来たわけでなさそうだ。それに元とはいえ、俺が知らないうちに再び側近や道化師に戻っていることもありえる。油断は禁物だ。俺はともかく、愛しい者に傷一つ付けないように――、


「警戒しすぎだ。俺達はただ単に行き場のない二人を引き取りにきただけ。

一緒に暮らすこと以外は何もしないし。第一に、先程まで大騒動があったのに静観していた時点で害も敵意もない」


「それに、どちらかといえば。貴方達と同じく、滅ぶのを望んでいたというのが正しいですね」


何もしない、敵意は無いと口にして警戒心を薄れさせようとしていた。

口だけで警戒心が薄れることはない。逆に高まるだけだ。本当に何の目的で俺達に近づいたのか不明だが。 これ以上、近寄るというのなら。俺はせっかく手に入れた自由を逃さないためにも、愛しい者を護るためにも――。


「――そうそう、十年前とはいえ。家柄に縛られてきた錠苑さんなら知っているとは思うけど。 あの敵襲事件の真犯人って俺なんだ」


「は? 」


「そして、この宮廷道化師を解雇に導いたのも俺なんだ。

敵対者による襲撃ではなく、俺が復讐の為に全て仕込んだものなんだよ」


唐突に過去の事件の真犯人は自分であると暴露する蕾努。

そしてまたそれが事実であることを裏付けるように、愛しい者が納得した口振りを見せる。


「あぁ…、だから、氷漬けだらけだったのですね」


「ん? もしかして貴方も知っていた感じか? 」


「ええ。創作する際は過去の事件や炎上している事件と被らないように、よく調べていましたから。 それに襲撃した敵対者は、水や氷系統の魔法は使えないはずなのに…と、地味に気になっていましたし」


愛しい者がそういうのだから、真犯人であるのは間違いないのだろう。

それなら尚更、警戒心を高める材料にしかならない。きっと、同じく復讐者だとして警戒を薄れさせようとしたのだろうが。そう事が上手く運ぶはずがない。たったそれだけで、警戒心が薄れるほど俺は弱くも甘くもない――、


「分かりました。じゃあ、一緒に暮らします。これからよろしくお願いします。彗亜さん、一依さん」


「はぁ!? ちょっと、待って! なに、相手の思う壺になってんだ! 」


「え、快輝こそ。何をいつまでも警戒しているのですか? 」


「いつまでも警戒するわ!どう見たって、どう考えたって、裏があるとしか思えないだろ! 」


警戒心もなく、二つ返事で蕾努達と一緒に暮らすことを宣言する愛しい者に驚きながらも、すぐさま制止をかける。 どうもこうも怪しさしかないのに。どうして、宣言できるのか。いいや、とにかく危ないと教えさせて。とりあえず、奴らから離れなければ――。


「快輝。もしかして、私が持つ魔法の一つを忘れたのですか…? 」


「え、魔法? 」


「相手がどう思っているのか見極め、知ることができる…あの魔法を」


珍しく呆れ返った声音と表情で指摘にする様子に危うく心が弾みそうになるが。

指摘されたことにより、ようやく警戒心もなく宣言することができた理由を理解した。 愛しい者が持つ魔法の中で読心術と呼ばれる魔法があり、発動させると相手の心を読み取り、どう思っているのか見極め、知ることができる。それがいい意味や悪い意味での真意や本音だとしても。


愛しい者は読心術を使用して、蕾努達が本当に心の底から善意で言っているのか確かめたのだろう。 結果、本当に心の底から善意で言っていたと。俺達に手を差し伸べてくれたのだと。


「……はぁ、致し方ない。せっかく、自由を手に入れたんだ。俺もアンタらと一緒に暮らすことにするよ。 ただし、完全に信用したわけじゃない。色のお陰で、一緒に暮らすことを選択したと刻んでおけ」


両手を上げて降参するポーズを取りながら、ここで無駄死にしないためにも一緒に暮らすことを選択した。 色が確かめたのなら、答えに間違いはない。しかし、信用するにはまだ早く。いつ裏切られるかは分からない。 警戒心は忘れずに、常に疑いの眼差しを向けておかなければ。愛しい者の為にも。


―――



「はぁ…? アンタらも復讐者なのかよ」


奴らが拠点としている自宅に入れば。なんと俺達の他に二人も復讐していた者がおり、思わず、口を開けたまま立ち尽くしてしまう。しかも復讐の念は王系絡みらしく、家柄から解放されたと思ったら、逃れられぬ縁で結ばれているという結果だ。


「くっ…、どうしてこうも逃れられないんだ! 俺が何をしたって言うんだよ! 」


「とんでもない大罪を犯したよねー。暴露と情報操作に。界隈破滅崩壊に。家柄破壊崩壊に。間接的に死者を出す。 何をしすぎじゃなぁい?だから、逃れられないんでしょ」


「ま、まぁ…、その通りだけどよォ。可愛げのある声の割には随分と辛辣な事を言うじゃねぇか…、」


他の二人のうち一人――、斬堵睹 夢玖に辛辣に指摘されて心が少し痛む。

確かに先程まで復讐をしていた。だが、そうさせた元々の元凶は――、いや、元凶の前に。


「今更、悔やんで考え込んでも意味ないと思うよ。

縁はなかなか切れないものであり、類は友を呼ぶと言うし。復讐者が王系絡みなのも致し方のないことだよ」


「致し方ないで済んだら、こんなに苦しまねぇんだよ。

ほんと、色がいなきゃ。アンタら全員、炎の渦に巻き込んでいたんだけどなァ…! 」


「それはどうかな? 君じゃ、僕達に傷一つ付けられないし。想い人を護ることもできないよ。 いくら、特別な家柄に生まれたからって。能力の差が桁違いなんだ。勝てっこない」


「はぁ…?図に乗るのもいい加減に」


「一人じゃ、復讐を果たせなかった君に。一人じゃ、抗う事すらできなかった君に。 想い人がいなければ、頑なに動かない君に。どうして、僕達に勝てると? 」


思考と言葉を遮って、ゆるやかに指摘する――もう一人の復讐者、月聡 綿枷。

確かに振り返ってみれば、俺は一人じゃ、あの家柄から逃れることはできなかっただろう。 愛しい者が手を差し伸べてくれなきゃ、何もせずに命令に踊らされていたのかもしれない。しれないが――、


「俺の方が若いんだ。体力の持ち方も回復力も違う。まだまだ成長できる」


「でもねぇ…、」


「それに、独り身だった年寄りのアンタらとは違って。愛しい者である色がいる。

一人ではできないことを二人なら、余裕でこなすことができる」


「むぅ…、僕が年寄り」


「何より、あの家柄に生まれた事とあの両親に育てられたことによって、世間からの信頼もあることによって。過去から現在の使用人達の弱点をさりげなく聞いただけで、簡単に引き出すことができる。勿論、アンタら二人の事も調べ尽くせば、弱点など暴き出せる。いいか、よく聞け。刻め。覚えろ。

一度、目を付けられたら逃れられないし。世に出したら、何処かには残っているから永遠には消えないのよ」



――俺のような、情報操作等の技術に優れたスペックの高い者じゃない限りにはなァ?



事実、そうでなければ。俺は復讐を無事に果たすことはできない。愛しい者の人生を取り戻すことはできない。本当にこの世は目を付けられたら逃れられないことが多い。それは普通なら、どうでもいい些細な事でも。


復讐方法の一つ、情報操作をするにあたって、念には念をと隅から隅まで調べ尽くしたことにより、知ってしまった現実がある。一度、誰かに。いや、その誰かが拡散力を持つ者だとした場合。一度、目を付けられてしまったら。どんなにどうでもいい些細な事でも悪と見なされ、あちこちに ない事ある事を書かれてしまうことに。そして、いくら消しても。結局、誰かの手元には残っているため。永遠に使い勝手のいい玩具として、弄ばれてしまうのだ。普通の者であるならば。


普通ではないスペックを持ち合わせた者。言わば、消したい過去も都合の悪い事も完全消滅させることができる者。 その者であれば、立場を逆に利用して追い詰め、全てを無かった事にできる。 だから俺にもし、そのスペックが無ければ、復讐は失敗に終わる。たとえ、愛しい者と協力して実行したとしても。 皮肉なことだが、俺は家柄と両親の元に生まれ育てられたお陰で。失敗ではなく成功に収めることができたのだ。 そして何より――、


「本当に皮肉な話だぜ。でも、そのお陰で色と出会えた。これは他の何よりも幸福な事だ」


「へぇー。結局は、想い人に至るのかい? 」


「ああ、俺一人じゃ。どちらにしろ、どっかで挫折していたからな。

復讐といっても、俺のはついでだ。俺は色の為に、全てを尽くしたといっても過言ではない」


愛しい者と出会えたことに、何よりの幸福を感じており、そこだけは家柄と両親に感謝してもいいくらいだ。


「じゃあ、結局。君は想い人がいなきゃ、何も出来ないじゃないか。

そのスペックとやらを生かすことが出来ず、小さく狭い籠の中で踊るだけ」


「おっと、最後まで話は聞いた方がいいぜ。それに、見聞きしただけで判断するのはよくない。 まぁ、成長過程が止まったアンタらには理解にすら及ばないかもしれないが…。 いや、そんなアンタらの為に。結論を口に出してやる。俺はアンタらに目を付けたんだ。逃げようと足掻いても、その足を踏み出すことさえできないぜ? 」


片手は腰辺りに、もう片方の手は胸に手を当てて、不敵な笑みを浮かべながら宣言する。 見聞きしただけで勝てないと決めつけるのはよくない。俺はこの二人をたった些細な事で容易く勝てると。 図に乗り、慢心でいられるのも今のうちだと。蓄積されたスペックを生かせば生かすほど、足元を取ることができるこの世界に。色という愛しい者がいる俺に――、


「なるほどねぇ…、血は争えないといったところだろうか。

表面上では気さくで律儀な真面目君。裏では陰湿な粋がり野郎。君はちゃんと親御さんの血を受け継いでいるようだし。そこまで言うのなら、実際に見せてごらん。君のスペックを」


再び、思考を遮り。あくどい顔をして、ノートパソコンを押し付けるように受け渡す。そして――、


「明日の朝までに僕達の弱点を見つけて、倒すことができたら、君のスペックを認めて、諦めてあげるよ。 ただし、見つけられなかった場合は……。君の想い人を貰うよ」


「…おいおい、アンタ」


「結局のところ、全てどうでもよくなってしまうほど魅力的。

それを奪いたいと思うのは自然な事だろう? スペックを認めてほしくば。想い人を奪われたくなければ。 見せてごらんよ。そのスペックを」



愛しい者を人質にとって、猶予が後、二時間しかない勝負を仕掛けてきたのだった。


―――


あれから、一時間後。

想像以上に時間はかかったものの、なんとか、奴らの弱点を見つけ出すことができ、その弱点であるものも用意が出来たが。抵抗してくる事を考えると時間が足りない。スペックを認めてもらうことはともかく、愛しい者をあんなあくどい奴に奪われるわけにはいかない。どうにか、抵抗されないように上手く相手を誘導し倒さなければ。


「とりあえず、厄介そうな斬堵睹は後回しだ。まずは…、月聡から」


「――いやあああああああ!? 」


「な、なんだ!? まさか、色に何かあったんじゃ…! 」


突如、奥の部屋の方から甲高い悲鳴が聞こえ。愛しい者に何かあったのかと思い、慌てて奥の部屋へと向かう。 着くとすぐさま、奥の部屋の扉を勢いよく開け、愛しい者の安否を確認するため。攻撃態勢に入りながら、声をかける。


「無事か、色!? いるなら、返事をしてくれ…あ、え?これ…、どういう状況? 」


最初は部屋の中が辺り一面、無数の黒い手で埋め尽くされているかと思ったのだが。 よく目を凝らしてみると、その無数の黒い手に月聡が殴られているという、理解し難い状況であった。 暫くの間、この光景に口を開けて立ち尽くしていると、俺の存在に気づいたのか。月聡から助けと許しを求める悲鳴が上がる。


「お願い!もう、こんなことしないから、僕を助けて!彼女を止めて! 痛い痛い痛い痛いッ!痛い、嫌だぁああ! 」


悲鳴に意識を戻され、更によく目を凝らしてみると。

愛しい者が珍しく嫌悪に満ちた表情を浮かべ、無数の黒い手を操っていたのだ。

また珍しい表情が見られて心が弾みそうになるが。何故、このような状況になっているのか。 確かめる必要があったため、弾む心を抑え。愛しい者に説明を求める。すると、愛しい者は――、


「自分勝手に快輝に勝負を挑んできた事と。創作関係について、しつこく尋ねられたので。 ついに堪忍袋の緒が切れたのですよ」


怒りが混じった声音で話す。

それを聞き、勝負の事はともかく。創作関係について、しつこく尋ねられたことに関しては納得がいった。


愛しい者は創作関係に人生を潰されてしまったため、創作関係を酷く忌み嫌っている。そのため、少しでも触れられると嫌悪感を示す傾向があるのだが。 月聡の場合、しつこく尋ねた故に嫌悪から怒りを買ってしまい、持っている魔法の中の一つである黒い手で殴られているのだろう。これには、――いや、どちらかといえば。なんだか、一時間前の言動を思い出すと心がスッキリする。 そもそも、同情できない自業自得な時点で助けようがないというか。


「よし、色。俺も手伝うぜ」


「はぁぁああああ!?

ちょっと、ふざけないでよ!しかも、よりにもよって…あ、あぁ…彗亜ぁあああ!助けてェエエ! 」


勝負の事も含めて、俺は愛しい者に助太刀し加勢することを選択し。

月聡の弱点であるゲテモノ料理を口元へ、少しずつ運ぶ。いや――、運ぼうとしたのだが。 悲鳴が届いたのか、背後からやってきた雷努によって止められてしまう。


「話は夢玖から聞いた。綿枷が全くもって悪いが…、その辺にしておいてくれないか? これ以上の負のループを巻き起こさないためにも」


「ですが…! 」

「だけど…、」


「綿枷は俗に言う、ツンデレって奴で。だから、接し方が意地悪になってしまうんだ。 過ちに関しては許さなくてもいいから、そこを理解してもらえると有難い」


「いい年齢で、ツンデレ? 」

「いい年齢なのに? いや、その前に。あれがツンデレ? 」


「まぁ、痛い奴けど。根はそこまで悪に染まってない。それは、読心術を使える貴方が一番、分かるんじゃないか? 」


あれをツンデレと称するのは疑問に思うことがあるが、愛しい者が致し方ないと許しを示したため。 俺も月聡の事は大目に見ることにし、勝負については無効とされ、愛しい者が奪われることはなくなった。


―――


翌朝――、

あの後、用意された部屋で夜食と睡眠を済まし。翌朝、大広間へ足を運ぶと。


「うぅ…、ごめんなさい。もう勝負しないし、しつこく聞かないからぁ……」


月聡が泣きながら、愛しい者に昨日の事について謝罪をしていた。

それに対し、愛しい者は許しを口にすると共に殴ったことに謝罪をする。


「もういいですよ。私も取り乱し結果、殴るという最低な行為に走ったわけですし…こちらこそ、ゴメンなさい」


「う、ん。ありがとう…、君、怒ると、かなり乱暴になるんだね。…意外性があって、面白いね! これは確かに魅力的。ねぇ、君さ。僕の……」


「――おいおい!ちょっと、待て!その先は言わせねぇぞ! 」


その先に続くであろう言葉に嫌な予感がして、慌てて制止をかける。

月聡は制止させられて一瞬、不満そうな表情を浮かべるが。すぐさま、不敵な笑みを浮かべておちょくるように話す。


「知ってる? 束縛と独占欲が強く、愛の重いお化けは嫌われるらしいよ。少しは選ばせてあげたら? 」


「テメェ…、根は反省すらしてないだろ」


「もう、酷いなぁ。僕、ちゃんと心から反省しているっていうのに。ねぇ、色ちゃん? 」


「色、ちゃん…?いや、それよりも。テメェ、色に抱きついてんじゃねぇよ! 」


身を隠すように、身代わりにするように、更におちょくるように愛しい者へと抱きつく。 この様子だと、泣き真似をしてその場を逃れようとしていたに違いなく、本当に反省すらしてないのだろう。それに加え、愛しい者に抱きつくことで。俺が無用に手出しできないようにするとは、なかなかに嫌な奴だ。 このままだと、愛しい者がまた不幸な目に遭ってしまう。どうにかして、抱きついている腕を振り下ろし、突き放さなければ。――しかし、そう俺が考え込んでいるうちに。完全に手出しできないと判断したのか、猫撫で声で愛しい者を遊び半分のままに口説こうとする。


「ねぇねぇ、色。僕と一緒にいた方がきっと、楽しいよ。だから、僕と一緒に手を組まない? 」


「え、」


「君にとって、とてもメリットがあるし…。今以上に、自由な暮らしができるよ」


「今以上に自由ですか…、確かにそれは魅力的ですね」


「し、色…!? 」


口説きに対し、肯定し受け入れるような口振りに冷や汗が流れる。

不味い、このままでは本当にこの嫌な奴と結ばれて、不幸のどん底に落ちてしまう。それはなんとしてでも避けたい。 ここは強引にでも、力づくで月聡を突き放すしかない――、そう、腕を振って、月聡に体当たりしようとした瞬間。 何処か声音は冷たく、軽蔑するような視線で断りの言葉が差し掛かる。


「まぁ、でも。愛が重いお化けよりも、人が嫌な事をしつこく聞いてくるお化けとは…… 冗談でも一緒にいたくないですね。第一に、私はそういった事には興味ありませんし。 もし、それで面倒事が絡むのであるのなら、尚更嫌です」


「え゛」


「だから、貴方とは仲間としては構いませんが。それ以上の関係にはなりたくないです。 たとえ、冗談だとしても」


「ぐぇ!? 」


流石のこれには、想定外で心にまで突き刺さったのか。濁った驚きの声が上がっている。 ある程度は断られると想定していたのだろうが、それも緩くと。 しかし、現実は冷たく帯びており、酷く断られてしまった。この結果には思わず、こちらも驚きを隠せない――いや、徐々に笑いが込み上げ、腹を抱え、奴の傷口に止めを刺すように弄り倒す。


「あはは!色に拒絶されるなんて、そうそうない事だぜ!やっぱり、第一印象って大事だよなァ! 」


「ちょっ、え。いや、笑わないでよ!笑えるほど、受け流せることじゃないんだから! 」


顔を真っ赤にして怒りを露わにする月聡に更に笑いが込み上げ、呼吸が苦しくなって噎せ返る。 しかし、こんなにも愛しい者が冷たく。月聡が――いや、綿枷が面白い奴だとは思いもしなかった。 第一印象は最悪だったが、振り返ってみると。雷努の言う通り、痛い奴だけど。綿枷は綿枷なりに仲良くなろうと思っていたのかもしれない。もし、そうでなければ。異端児な部外者として、俺達は消されていた。もしくは、使い捨ての駒として利用されていただろうから。


暫くして呼吸も落ち着き、今度は面と向かってにこやかに宣言する。

これから、仲間として宜しく頼むと――、


「俺、アンタの事。すっげー、気に入ったよ。だから、もっと面白い姿を見せてくれよ」


「恥ずかしい思いをしたお化けを見て、気に入るとか性格悪いね……

まぁ、でも。面白いと高評価を得るのはなかなかないことだし。僕も君達とは仲良くするよ」


「君達…?それは色も入っているのか? 」


「え、そうだけど…、ダメ? 」


「んー、俺的にはダ…」

「――いいですよ。改めて、宜しくお願い致しますね。綿枷さん」


「あー、今日の色。俺にもなんか冷たいな……」




こうして、後にとある言葉を自己紹介する際に使用するほど、俺と愛しい者は綿枷と親交を深め、仲間になったわけだが。この時はまだ綿枷しか、信用しておらず。今となっては仲間である他のお化け達と打ち解け、仲良くなるのには。 少し時間がかかっていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ