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第三十話 平和な日常を壊しましょう

「起きてくれないかな?」


 肩を揺すられて、目を覚ました。


 肩を揺すった人物を見ると、京香だった。


「どうしたんだ?」


「もう放課後だよ?」


「そうか……」


 首を左右に振って、パキパキと鳴らす。


「この後、出かける約束でしょ?」


 そうだったけ? 何か忘れてるような……


「そうだったな、行くか」


 取り敢えず怒らせたくないし、話しをあわせておくか。


「忘れてたでしょ」


 三つ編みの髪を揺らしながら、頬を膨らませて睨んできた。


「悪い悪い、クレープ奢るから許してくれ」


「なら、許してあげる」


 すぐに笑顔になった。現金な奴め。


「ほら、行くぞ……」


「うん」


 二人並んで、学校を後にした。


 ・・・・・・・・・・


 直ぐ近くの商店街に足を運ぶ。


 目的の一つになったクレープの屋台を目指して、進んでいく。


「でもよくクレープの屋台のこと知ってたね?」


「ああ、たまたまな」


 どうしてか分からないが、知っていた。


 たぶんクラスの誰かが話したのが、耳に残っていたんだろう。


「まさか、誰かと来たとか?」


 俺を見上げて、睨んでくる。


「ないない。友達いないし」


「それはそれでどうなのかな?」


「はら、好きなのかって来いよ」


 店の前についたのでそう言って、千円を渡す。


「一緒に並ばないの?」


「めんどくさいから、そこのベンチで休んでる」


「はいはい、そうですか」


 何だか機嫌を損ねてしまったようだ。


 幼なじみとはいえ、分からないこともあるな。


 少しして、京香が帰ってきた。


「買えたよ。はいお釣り」


「どうも、何味にしたんだ?」


「チョコバナナだよ。あ、あげないからね?」


「ケチだな~」


「お詫びなんだから、当然でしょ」


 俺の横に座って、クレープを食べ始める。


「隙あり……うん、うまいな」


 隙を見て一口齧った。


「あ~ひどい。バナナ食べた~」


「良いだろ別に」


 涙目で睨んできたので、頭を撫でて機嫌を取ろうとする。


「もう、子ども扱いして……」


「でも、こうされるの好きなんだろ?」


 そう言うと顔を真っ赤にして、少し距離を取られしまう。


アリスちゃんに会ったの後、もしかして頭を撫でてほしかっただけだったとか? と考えたのだが、違ったようだ。


 クレープを食べ終わる頃には機嫌が戻ったので、その後は楽しく買い物ができた。


 ・・・・・・・・・・


 放課後、京香に空き教室に来るように言われて、何事だと思いながら空き教室に移動する。


 告白をしたくて失敗していたので、京香の用事が終わればできたら今日こそしたいな。


 秘かに作戦を企てて、廊下を進む。


「あれ? 先に来てしまったか……」


 教室の中に姿が見えなかったので窓の側に寄って、グラウンドを眺める。


 野球部が気持ちのいい、バットの音を鳴らしていた。


「あ、来てくれたんだ」


「どうしたんだ? こんなところに呼んで?」


 ドアが開いて、京香の声が聞こえたので振り向きながら聞く。


「うん! どうしても二人っきりになりたくて……」


 これは、期待してもいいのか?


 教卓の前まで来たところで、左手を背中の後ろに回してているのに気が付いた。


 何か持っているのか?


「その背中に何を隠しているんだ?」


 気になってそう声をかけながら、京香の方に歩み寄る。


「ごめんね」


 急に速度を上げて、距離を詰めてきた。


 左手には刃物が握られていて、光を反射させている。


「うわぁ!」


 驚いて尻餅をついてしまった。


「もう、避けないでよ」


 京香が今まで聞いたことない冷たい声を出して、それとは正反対な笑みを浮かべる。


「クソ――」


 俺はふらつきながら、ドアに駆け寄った。


「助けてくれ!」


 先ほどまでの浮ついた気持ちなんて、一瞬で冷めてしまう。


 情けない声を出して、ドアを開ける。


「無駄よ……」


 ドアの向こうは何故は廊下は存在せず、黒い壁ができたいた。


「どうなってんだよ」


「この教室は完全に私が掌握したの。誰も入れないし、出れないわよ」


 おかしいだろこんなの……


 京香がナイフ片手に近づいてくる。


「殺されてたまるか!」


 側にあった椅子や机を、京香に向かって投げていく。


 どういう原理か当たる前に、全て真っ二つになって地面に落ちた。


「酷いじゃない。幼なじみに向かって」


 冷たい笑みを携えて、ゆっくりと目前まで迫ってくる。


 もう殺される! そう思って、目をつぶってしまう。


 だが、いくら待っても痛みが襲ってこない。


 恐る恐る目を開くと、どこか懐かしパーカーを着た女の子が目の前に立っていた。


「間に合いましたね? 河野さん」


「何よ! あんた。結界を貼ったはずなのに……どうやって」


「このくらいなら侵食できますよっと」


 目の前に現れた女の子が、京香を蹴り飛ばす。


 机を薙ぎ払って、吹っ飛んでいく。


「おい、やりすぎじゃないか?」


「大丈夫ですよ。彼女は人じゃありません」


「何を言ってるんだ? それに君は何者なんだ?」


 矢継ぎ早に質問する。


「私は山田です。何者かは、追々……」


 ちらりと俺に視線を向けて、名乗ってくれた。


「死ね!!」


 京香が立ち上がって、ナイフ片手に俺に跳びかかってくる。


 手で顔を覆い目を瞑って、今度こそ死を覚悟した。


「大丈夫ですよ」


 山田と名乗った人物の優しい声に、目を開く。


 山田の手はナイフを握っていて、血が流れていた。


「おい、お前は大丈夫なのか? 血が出てるぞ」


「大丈夫なのです。それより下がってください」


 山田俺の体を引っ張っる。


 間一髪でナイフが俺の顔の横をすぎていく。


「何者か知らないけど、邪魔するなら殺すわよ」


 京香が立ち上がって、山田を睨む。


 左腕が反対方向を向いていて、本当に人間じゃなさそうだ。


「邪魔しますよ? 私は河野さんを守るのが仕事です」


 二人が机を吹き飛ばしながら教室の真ん中で、肉弾戦を繰り広げる。


 目で追えないくらいの速さだ。


 それにしてもこんなのありえない。夢だ、夢に違いない。


 だってそうだろ? 幼なじみが人間じゃなくて、教室に閉じ込められて、変な奴と殺し合ってる?


 こんなの現実なはずがない。


 少しして、山田が俺に飛び蹴りを入れてきた。


「ぐふぅ……」


 情けない声を出して、吹き飛ぶ。


 声に出てたか? うるさかったか?


 その俺を蹴った足が切断された。


「お、おい。山田! 大丈夫か?」


 大丈夫とは思えないが、ついそう声をかける。


「大丈夫ですよ」


 ニコニコとそう言ってくれた。


 でも、大丈夫そうじゃないよな?


「終わりよ」


「それは、私のセリフかな?」


 京香の言葉に、山田はそう言い返した。


「負け惜しみ? 何これ……」


 笑みを浮かべた京香だったが、すぐに狼狽する。


 京香の体が青く光り、見えてる肌にアルファベットが浮かぶ。


「デリート」


 山田そう短く言って、指を鳴らす。


 その音と同時に、京香が姿を消した。


「どうなってるんだ……」


「終わりましたよ。河野さん」


 俺の側に来て笑いかけてくる。


 その笑みが少し怖い。


「もう、わけが分からない。説明してくれ」


 俺はいまだに地面に座り込んでいるのを思い出して、立ち上がろうとする。


「勿論ですよ」


 そう言って、山田は俺に手を伸ばしてくれた。


「ありがと……」


 その手を掴んで、立ち上がる。









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