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第二十七話 平和な日常を続けましょう

「開いたから期末テストだけど大丈夫?」


 商店街で夕飯の買い物をしていると、京香がそう聞いてきた。


「やれることはやってるよ」


「赤点だけはさけてよね」


「ああ、それで、少しいいか?」


 緊張で、少し声が上擦ってしまう。


「どうしたの改まって?」


「その、テストが終わったら、少し出かけないか?」


「? 別にいいけど?」


 京香は不思議そうな顔だが、そこまで気にした様子わない。


「ありがとう。じゃぁ、出かけるか」


「赤点とったらなくなるけどね」


 クスクスと笑って、言われてしまった。


 そうならないためにも、今日は復習をしてから眠ろう。


「京香を越えてみせるよ」


「それは楽しみね。今日はテストに勝で、豚カツでもいい?」


「ああ、ありがとう」


 ゲン担ぎも大切だもんな。


 俺達は豚カツの材料を買って、帰宅するのだった。


 ・・・・・・・・・・


 京香作ってくれた絶品の豚カツで元気を出して、ラストスパートの夜の復習を開始する。


 俺の問題は英語と数学だ。


 この二つをクリアーすれば後は何とかなるだろう。


 徹底して見直す。


 問題集を買っているので、それを使って模擬テストをしてみることにした。


 制限時間は各一時間。


 スットプウォッチで測る。


 順調に問題を解いていく――


 全ての問題を解いて、首を左右に振る。


 答え合わせの前にトイレに行こうと自室を出ると、リビングのテーブルの上に何かが置いてあることに気が付く。


 近寄ってみると、ラップにくるまれたおにぎりだった。


 手紙が添えられていて、頑張れとだけ書いてある。


 京香だな……


 椅子に腰かけて、そのおにぎりを食べる。


 鮭が入っていて、夜食にちょうどいい。


 数分で食べ終えて、トイレに行く。


 その後、答え合わせをしたのだが九十点を超えていたので、凄く安心できた。


 ・・・・・・・・・・


 テスト期間は順調に終わっていき、約束の日が近くなっていく。


「いよいよ開いたが最後のテストだね?」


 帰り道京香と談笑しながら帰宅する。


「そうだな。京香の自信は?」


「まぁまぁなんじゃないかな?」


「それは羨ましいな」


「そんなに自信ないの?」


「いや、赤点は大丈夫だろうけど」


 それよりも、出かける場所をどうするかをずっと悩んでいた。


 いや、テスト前から何回も考えてるがいい所が思いつかない。


「なにが不安なの?」


 顔をのぞき込んで、不思議そうに聞いてくる。


 仕方がないのでもう一つの悩みを口にした。


「不安とかじゃなくてだな……テスト勝ちたかったなって」


「ふふ、勝ち負けじゃないと思うけどな」


 それはそうかもしれないが、告白前に良い所を見せたいのだ。


 口が裂けても言えないがな。


 どちらも教えられないので、少し黙ることにしよう。


 しばらく歩いていると、買わなくてはいけないものを思い出した。


「京香、少し買いたい本があるから先に帰ってくれ」


「え? 付き合うよ?」


「いや、そのな……」


 モテるためのファッション誌を、京香と買いに行くのは厳しいな。


「あ、あ~。男の子だもんね。うん、いってらっしゃい」


 なんだろう、凄いニマニマしている。


 そして凄い勘違いをされていそうだ。


「何を想像してるか知らんが、そういうんじゃないぞ?」


「いいよ、恥ずかしがらなくて。でも、マニアックなのは良くないよ?」


「なぁ、何か想像の中の俺酷くないか?」


「え? でも、押し入れに生真面目委員長さんの秘密ってタイトルの本隠してるよね?」


 何で知ってるんだよ! 今度隠し場所を変えなくちゃ。


「お、親父のだろ? 俺は知らんぞ」


 すまない親父。犠牲になってくれ。


「はいはい、じゃぁ、ご飯作って待ってるからね」


 京香はそう言って、家の方に歩いて行く。


 これって、かなりマズいんじゃないか?


 そう思いながらも俺は商店街の方に足を向けるのだった。


 ・・・・・・・・・・

 目的本を買い終えて、帰宅する。

 の

 部屋にカレーの匂いが漂っていた。


「ただいま」


 声をかけながらリビングに行く。


「あ、お帰り。もうすぐ御飯だから、手を洗ってきて」


「ああ、分かった」


 俺は言われた通りに洗面所に行き、手を洗ってから部屋着に着替えてリビングに顔を出す。


 準備はすでに終わっていて、カレーとサラダがテーブルに並んでいた。


「丁度良かったね、食べよ」


「ありがとう。いただきます」


 テーブルの前に座って手を合わせる。


 人参、しめじ、豚肉と具材がゴロゴロとはいっているのが目で分かった。


「どう? 何気にカレーを作るのって初めてだよね?」


「確かにそうだな。今までカレーは作ってもらってないな」


 そう返事をして一口食べる。


 味は美味しいのだが、何故か違和感がある。


「どうしたの? まずかった?」


 顔をしかめてしまっていたのか、京香が心配そうに聞いてきた。


「いや、うまいぞ! 驚くぐらいにな」


 俺は皿を持ち上げて、飲むように口に入れていく。


「もう、そんなに慌てなくても」


 京香は驚いたように目を見開き、静止してきた。


「いや、本当にうまいよ」


 自分に言い聞かせるように、そう言葉にする。


 何か大切なことを忘れているような……


 思い出したいけど思い出せないもどかしさをカレーとともに、飲み込むのだった。
























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