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第二十三話 平和な日常を過ごしましょう

 何事もなく日々は過ぎていく。


 平和で、退屈で、それすら楽しめる日々。


 まさに青春というのは、こういうことだろう。


「今日は晩御飯どうする?」


 横を歩く京香が、そう聞いてきた。


 どうしたものか……昨日は魚だったし、お肉系か? いやそこまで重くなくて、ちょうど中間の物。


 立ち止まり、考える。


 その時、ソースの匂いが漂ってきた。


「なんかいい匂いしないか?」


「え? あ、うん。ソースの匂いがするね」


 やっぱり、ソースの匂いだよな。


「行ってみないか?」


「うん、いいよ」


 二人で匂いの出所たどる。


 ・・・・・・・・・・


 匂いの出所は商店街の奥にある、噴水広場に来ていた移動販売の店だった。


「お好み焼きか……今日の晩御飯これにするか?」


「え? もったいなくない?」


 指さして提案すると、そう言われてしまう。


「いや、たまには良くないか?」


 匂いのせいか食べたくてたまらないので、食い下がる。


「でも、千円もするんだよ? 作ったら半額くらいだよ」


 店先で堂々と言えるな……


「そうかもしれんが、こういう機会はあまりないからお願い」


 もうこうなったら頭を下げるしかない。


 そう思って頭を下げる。


「どうしても食べたいの?」


「ああ、こんなにいい匂いがしていては、我慢ができそうにない」


「しかたないな~。特別だよ」


 どうにかお許しが出た。


 俺達はカウンターの前に行く。


「いらっしゃい」


 少しくたびれた感じの、男の人が出迎えたくれた。


「お好み焼きを二つ」


「まいど、少し待ってくれ――」


 男は鉄板の上に、生地を流しいていく。


 焼きたてを買えるのは嬉しいな。


「いつまでこんなことを続けるんだ?」


 男がそうぼそりと言う。


 最初は独り言かと思ったが、目が俺達の方を見ている。


 どういう意味だ? 


 いや、独り言か……


 男はそれ以上言わないので、そう解釈する。


「あ、京香。青のりどうするんだ?」


「晩御飯だから、かけて大丈夫だよ。お気遣いどうも」


 うむ、確かに晩御飯だし、気にする必要はないな。


「了解だ」


「……おまち」


 少しして、男がお好み焼きを袋に入れて渡してくれた。


「じゃぁ、帰ろっか」


 受け取った俺を見て、京香がそう声をかけてくる。


「ああ、早く帰って熱いうちに食べよう」


 少しいつもより早い速度で歩いて、帰宅した。


 ・・・・・・・・・・


「なかなか、うまいな」


 帰宅して、手を洗い制服のまま食べ始める。


「だね、たまにはこういうのもいいかも」


 今日の夕飯をこれにして正解だった。


 キャベツがたっぷりで、紅しょうがのピリッとしたアクセントがたまらない。


「この後また勉強見てもらってもいいか?」


「もちろん良いよ。私に分かることならね」


「京香に分からないことはないだろう?」


「そんなことないよ、知ってることだけね?」


 京香は毎回テストで、九十点以下をとっているのは見たことないので頭はかなりいいはずだ。


 それでこの謙遜、だが嫌味には聞こえない。


「助かるよ」


「頑張りなよ」


 のんびりと食事を済まして、お茶を飲む。


「なぁ、大人って大変なのかな?」


 俺にお茶を入れてくれて、弁当箱を洗い始めた京香に声をかける。


「急にどうしたの?」


 制服の上からエプロンを着た、京香はなんか良いな。


 洗いながら声だけを返してくれたので、その背中を眺めながら話す。


「いや、今日買ったお好み焼きの店の人が、何時まで続けるんだろうって、独り言もらしてたから、大変なのかなって」


「まあ、バイトだとしんどいと思うよ? やっぱり将来は不安だろうし」


 確かにそうだよな。恋人がいる人は結婚とかも考えるだろうし……


「……」


 じっと、京香の背中を見つめる。


 夜に二人で食事して、勉強して、俺達はタダの幼なじみ……


 もしこの先があるなら俺は嬉しいが、今を壊してまで進みたいとは思はない。


「さっきから、何? じっと見つめて?」


 水を止めて振り返った京香が怪訝けげんそうに聞いてきた。


「いや、すまん。ぼーっとしてた」


 慌てて視線を逸らす。


「何か、やらしー視線を感じたんだけど」


 鋭いな。だが認めるわけにはいかない。


「そんなことない。ただ、制服とエプロンにロマンをだな……あ」


 ついいらないことを言ってしまった。


「はぁ、虎太郎のスケベ……」


 手を拭きながら、冷たい言葉を言われてしまう。


 どう弁解をしようかと考えていると、京香は鞄を手に持って、玄関の方に行ってしまった。


「おい、帰るのか?」


「うん、今日は帰るね」


「勉強は?」


「自分で頑張りなさい」


 京香は出て行ってしまう。


 これは怒らせてしまったな……


 明日には機嫌を直してくれていたらいいけど。


 仕方がないのでシャワーを浴びて、一人で問題を解くことにする。


 ただやはり、あまり進まなかった。


 ・・・・・・・・・・


 次の日の朝、珍しく京香は姿を見せなかったので、一人でパンをかじりながらスマホでニュースを見ていると、気になる記事に指を止める。


 商店街の方のニュースだ。


 何でも噴水広場で爆発事故があり、キッチンカーが延焼したと書いてある。


 この店って、昨日のお好み焼き屋だよな?


 もう一度くらいは、買いたかったので残念だが、人に被害が出ていないみたいなので良かった。


 今日は京香は来ないのか?


 もうすぐしたら出ないと遅刻なので、メールをする。


 返信が来る前に制服に着替えて、荷物を確認を済ます。


 出る準備を終えても、京香から返信は来なかった。


 仕方がないので一人で学校に向かう。


 クラスに姿がなく先生に聞いたら、風で休むと連絡があったそうだ。


 どうして俺に言わなかったんだ? そこまで怒っているのか?


 分からないが放課後に商店街で色々買って、お見舞いに行こう。


 この日の授業は身が入らなかった。















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