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 歩くたびに、道路がぼろくなっている気がする。 

アスファルトはひび割れ、ガードレールは錆び付いている。  

この道路が敷かれた頃、この国はどのような姿だったか。  


 失われた10年が2倍、3倍に伸びて、このまま4倍、5倍になりそうである。 

暗いニュースであるはずなのに、メディアマスコミは面白おかしく 

囃し立てる。一体彼らは何がしたいのか、自分はよくわからない。 

この国は滅びつつある と言ったら、多くの人が賛同するかもしれない。 

が、そんなことをいってもどうしようもない。俺は死ぬ勇気もないので 

この国でダラダラ生きていくしかない。 

 無駄な光沢を持つ、黒い壁沿いに歩く。 

その黒い壁は、嫌でも自分の今の状況を思い出させる。 

この壁は最新の警備システムの一部を成す設備である。その向こうには 

おそらく金があるやつらが住んでいる。治安の良さがこの国の売りであった 

時もあったが、今では、どこの国から来たのかもわからんやつらが 

やりたい放題である。いきなり灯油だかガソリンだかをまき散らす者もいる。 

そんな状況であるから、壁を作りたくなる気持ちもわからなくもない。 

街中には、いわゆる人型ロボットがそこらじゅうに立っている。 

巡回しているものもいる。彼らは、とある警備会社が設置したものだ。 

何もないときは彼らは街の清掃などを行っている。 

頭部に顔を持たない彼らは、感情もなく我々を選別する。 

登録されている人に危険が迫った時、どのような仕組みかは知らんが、 

彼らは直ちに駆けつける。いわば警察と消防と救急の代わりとなる存在だ。 

しかし、仮に自分が誰かからいきなり塩酸をぶっかけられたとしても 

俺のところには誰も何もこない。俺は金がないから当然だ。 

 どこまでが自分自身の力であるか判断することは難しい。心拍数が少しばかり 

上昇するだけでロボットが駆けつける人々は、勿論自分を高める努力をしてきた 

のだろう。一方で、人によって人生のスタートラインが異なることも事実である。 

自分には両親がいたし、ぶん殴られながら育てられたわけでもない。 

その点については僥倖である。が、残念なことかもしれないが 

馬鹿に無駄な教育を受けさせる余裕は両親にはなかった。 

両親はそのことをどう思っていたかは知らないが 

これは俺が無能だったというだけの話である。優秀なら、いくらでもやりようは 

あっただろう。無駄な学歴を持っているやつと関わるとき、自分に学歴がなくて 

良かったと思うことすらある。学歴があっても大した仕事をしていないのだから 

少し笑えてくる。第一、やる気があれば勉強は自分でできる。 

 人間誰しも全てを実現させることはできない。努力だ才能だというよりも 

要は身の程、妥協の問題だ。そして幸福は閾値の問題である。 

 

 だいぶ郊外に出てきた。日が落ちつつあり、辺りが暗くなる。 

俺がなぜあれこれ無駄に考えながら歩いているのかというと、単発のバイトに 

参加するためである。 

 なんかの治験のバイトなのだが、時給1005500円という超破格の報酬だ。 

ネットでの応募の際、なんかのサイトに飛ばされて、長々と質問に回答した。 

変な質問ばかりだったが、その甲斐あって、俺は無事採用に至った。

とはいえ全く不安がないという訳ではない。しかし自分は割と楽観的な性格で 

ある。 


 スマホの地図を見る。指定された場所についたと俺は思った。 

表札の類は見当たらない。厳かなゲートっぽいものの奥にコンクリートで 

できているであろう無機質な建物が見える。  

辺りをウロウロしていると、男とも女ともいえない声が聞こえてきた。 

 

「今回の治験者の方ですか。」 

 

「ッあっぇえ?」 

 

 いきなり話しかけられたので、変な声が出てしまった。 

どっから声がするんだと思い振り返れば、目の前に壁が出現していた。 

地面から生えてきたのだろうか。なかなかハイテクである。 

とりあえず、その壁に話しかけてみる。 


「えーーーーー、そうです。、はい」 

 

「通知された治験者番号を読み上げてください。」 

 

 何やそれと思っていると、携帯にSMSが届いた。 

届いた番号を言ってみる。 

 

「えーーッと ……1205QJHU08……ッIHKJ2XGUL142……FJJ09、です。」 


 舌を噛みそうになる。息も続かない。 

 

「次にQRコードを画面に提示してください。」 

 

 今度はメールが届く。QRコードが添付されていた。 

いや、これQRコードみせるだけでよかっただろ と言ってやりたくなったが 

大人しく壁の画面にコードをかざしておく。 

 

「認証が終わり次第、担当の者が参ります。少々お待ちください。」 


 壁は地面へと消えた。 

 

 割と時間が経過した。 

このまま誰もこないのではなかろうかと俺は思い始めた。 

俺の100万円はどうなってしまうのか。もしかしてさっきの壁との対話が 

治験本番だったのかもしれない。ではもう帰っていいだろうか。  

 またしても油断していると、ゲートが開き始めた。 

宅急便が来た時も、いちいち開けているのか などと考えていると 

背後から声が聞こえる。 


「おい!お前!前に進め馬鹿野郎!!」 


 なんだご挨拶だなと思い振り返る。 

そこには短パンはいた短髪の、幼女よりの少女が立っていた。



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