第4話 スキル
◇ラーラ
◾️7月28日PM13:20
(終わった…のか…)
ラーラは憔悴しきっていた。喉奥からこみあげる臭いが、完全にトイレだった。
「終わったので、綺麗にしてくださいね。」
舌が勝手に舐めて綺麗にし始めた。どうやら、トイレットペーパー代わりとしても使われるらしい。
(俺は…本当にトイレにされてしまったんだな…どうしてなんだ…俺が何かしたっていうのかよ…)
「どうやらちゃんと使えるようだね。吐き出す様子もないし…」
(そうだ…吐き出したくても吐き出せなかった。それに、俺のこの小さな体のどこに「アレ」は入ったんだ…?)
そう思った時だった。頭の中に機械音声のようなものが鳴り響いた。
『条件を達成しました。《汚食》スキルを獲得しました。《悪食》スキルに統合されます。』
(だ、だれだ!?今、スキルって…そういえばノアってやつが《悪食》がなんちゃらって言っていたような…)
ラーラはノアが言っていたことを思い出した。
(俺は《召喚魔法》で呼び出された魔物だって…それに俺は《悪食》スキルを持ってるって言ってたような…俺は死んだはずじゃ…もしかして、生まれ変わったってのか?よりにもよってトイレなんかに?ふざけるな!)
「ねぇ、ラーラがちゃんと使えるってことは分かったし、何か言うことがあるんじゃない?」
「…あぁノアはやっぱり天才だなー」
「そんな投げやりに!」
「私はラーラのこと、すっごく気に入りました!ちっちゃくてかわいいし、ちゃんとトイレとしても働いてくれます!ノアちゃんは天才魔法使いです!」
「ふふふー♪やっぱり?ボクって天才なんだよなー!」
3人は楽しそうに談笑している。俺はまだ舐めさせられているのに。
(そうだ、《悪食》スキルってやつは一体なんなんだ?どうにかして知る方法はないのか?)
そんなことを考えると、急に視界に光る板のようなものが現れた。光る板には文字が書いてあった。
(っ!?なんだこれ!…ラーラ、種族、ビックマウスラビット…?これは…もしかして俺のことか…?)
☆ラーラ 種族:ビックマウスラビット
年齢:0 称号:異世界人 レベル:1
ステータス
力 50
技 120
魔 30
スキル
《悪食》
(称号、異世界人…なんとなく察してはいたけど、やっぱりここは地球とは別の世界なのか…ステータスは、ゲームとかで見慣れてるな。高いのか低いのか分からん…スキルは…《悪食》一つだけか…いや、さっき《汚食》ってのを手に入れたような。スキルの詳細は見れないのか?)
そう考えると板に映されている文字が切り替わる。
《悪食》
なんでも食べられるようになる。いくら食べても限界が来なくなる。飲み込んだ時点でエネルギーに変換される。
統合スキル《汚食》
(俺が全部食べ切れたのはこのスキルのおかげだったのか…《汚食》はどんなスキルだったんだろう。)
また文字が切り替わる。
《汚食》
汚物を食べられるようになる。汚物を食べたことによる体調不良などが起こらなくなる。唾液に除菌作用が発生し、口内が清潔に保たれるようになる。汚物を食べることによって経験値が得られるようになる。排泄物を食べた場合、排泄者が持っているスキルのスキル経験値を得ることができる。
(除菌作用って…俺の唾液はアルコールかよ!経験値か…このままコイツらに「アレ」を食べさせられ続けたら俺のレベルも上がっていくのかな。嫌なレベリングの仕方だな…スキル経験値?スキル経験値は普通の経験値とは違うんだろうか。…切り替わらない。スキル経験値についての説明はないのか。まぁこれだけ分かっただけ十分か。)
「ふー。よいしょっと。スッキリしましたー。」
「よし、そろそろ休憩も終わりにして探索の続きをしようか。」
アリアナはようやく俺の顔から立ち上がった。体は動けるようになっていた。声も出せる。もっとも、喋れないから意味なんてないのだけれど。
「らー?」(探索?なんのことだろう。)
「あー、ラーラに一応説明しとこうか。ボク達は今、ベンデルの街にあるベンデルダンジョンに探索に来ているんだよ!」
「ここはダンジョンにある休憩用の小部屋さ。ここには魔物は湧かないようになってるんだ。」
「私たちはダンジョンを攻略するために集まったパーティーなんです!ですが、探索の途中で消臭袋が切れてしまって…」
「消臭袋ってのは排泄物を入れとく袋のことさ。臭いの強い排泄物をダンジョンにそのまま置いとくと、魔物がうじゃうじゃ寄って来ちまうのさ。」
「そこで天才のボクは閃いたってわけ!そう!《悪食》スキルを指定して魔物を召喚すれば、トイレ代わりにできるんじゃないかってね!」
「らー!らーらー!」(閃くなよそんなこと!呼び出される俺の気持ちにもなれよ!)
「成功してよかったよ。休憩用の小部屋に排泄物を放置するのはマナー違反だからね。」
「そう言うことで、これからよろしくお願いしますね!ラーラ!」
「らー!」(そんなもん願い下げだ!)
かくして、ラーラの携帯トイレとしての生活が始まったのだ。
やっとスキルについて書けました!美少女が《汚食》スキル持ってたら唾液で消毒してもらえますね!憧れますね!