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第一回公式イベント開催!

 ハッと()()()()()

 ぼくは、ゲームに戻ってきた。


 けれど、ここはどこだろう?

 ログアウトした宿屋ではない。

 チュートリアルと同じ白い空間だ。


 困惑するぼくは、視線を感じた。


 左腕がジロリとぼくを見てた。


「おかえり」


 それだけ言ってプイと目をそらした。


「あ、ただいま」



 エルとの会話でSAN値が回復した気がする。

 とりあえず落ち着こう。



「やぁ、おかえりなさい」


 後ろから今日だけで随分と聞き慣れた声がした。


「ただいまです。」


 応えながら振り返ると想像通り、アンドレイがいた。


「疑問もあると思うが、まぁ掛けたまえ」


 パンパンとアンドレイが手を叩くと、床から木の椅子と机が出てきた。机の上にはティーセットが乗っていた。

 気安い動作でアンドレイは白磁器のポットからティーカップへと中身を注ぐ。


 湯気の昇るそれは紅茶の様で、ほのかに格調高い香りを周囲に漂わせている。カップを持ち上げ、香りを楽しみ。口にそっと含むと、満足げに笑みを浮かべた。


「フォートナム&メイスンのクイーンアンがワタシの好みでね。オブジェクト『紅茶』はデフォルトでコレが出てくるのだよ。」


 製作者の権限を変なとこで、振りかざしてるなぁ。


 促されるままに席に着いたら、左腕《エル》が独りでに紅茶を淹れてくれた。


 気が利くなぁ。


「ズズッ…………アチ」


 …………あ、ぼくに淹れてくれたんじゃないのね。ソーサラーに置かれたカップに左腕のてのひらに作られた口がチビチビと口をつけている。


「……まぁ、話をしよう。」


「ですね。」


 宿屋からスタートしない理由を聞こう。


「さて、この空間に呼んだのは訳がある。」


 語りながら、懐から取り出した紙を広げる。


「『第一回!武闘大会』の開催を宣言させて頂こう。」


 紙はどうやら、チラシの様だ。赤と白のハデなラインの入った厚めの紙で、ヴィンテージな雰囲気のあるチラシだ。


「参加は自由だが、順位に応じて各種景品もあるし、キミの個人的な望みも叶う。参加するだろう?」


「もちろん参加で!」


 がたりと立ち上がって宣言するが、アンドレイは手を上下させて席に座るようにジェスチャーした。


「まぁ、まだ開催まで現実世界で1ヶ月待ってくれ。」


「えぇー」


「むくれるな、後続のプレイヤーがある程度育ってからの方が盛り上がるだろう?」


 それもそうか、なら我慢しよう。


「武闘大会の内容は二部構成で行われる。


 初戦は、専用フィールドでの最大1000人参加のバトル・ロワイアル形式戦。

 例えば二万人参加した場合は一組1000人で、20組にランダムで振り分けられると、いった具合だ。


 ソコで生き残ったモノが、次のトーナメント戦で闘える。」


 昨日だけでも、1万人近いプレイヤーがるからなぁ……夜のニュースを観た感じ、まだプレイヤーが増えるのは間違いない。


「バトルロワイヤル戦でも上位何%に生き残れたかで報酬はある、せいぜい楽しんでくれたまえ。」


「出るからにはトーナメント出場を目指すよ。」


「くくっ、舞台に上がってくるのを待ってるよ。」


 愉快そうに嗤ってる。他のプレイヤーは今どれほど強くなっているのだろうか。



「あぁ、注意点だが。先行組が強くなりすぎないように、武闘大会では、プレイヤーはレベル30時点までのステータスが適用される。装備は制限無しだが、まぁなんとかいい勝負になるだろう。」


 まだ上限じゃないけど、割りとすぐに届きそうだ。


「うむ、35レベまでは比較的上げやすい経験値配分で設定したからね。」


「最初から計画通りなのかな?」


「まぁね。キミほどでなくても闘争は、皆昂たかぶるものだ。盛り上がってくれるだろう?」


 そこで区切るとまた、別の紙を取り出した。


「コレが参加票だ。参加の意思があるのならここにサインを入れてくれたまえ。」


「はーい。」


 契約書っぽい作りの参加票。よく読むと『今回の大会の様子は宣伝PVに使われる事があります。サインを頂くと、了承されたと見なします。』 って内容の文が隠れてる。


 ……まぁ、いいか。書き上げた紙をアンドレイに返す。


「ありがとう。キミの健闘を祈るよ。」


「がんばるよ。アンドレイのオリジナルも観戦するかな?」


「もちろんだ。表彰では必ず会えるだろう、エル君もそこで少しくらいは話せるんじゃないか?」


 エルの『アンドレイ本人に会う』という目標と、ぼくの『暴れたい』とい願望どちらも満たせる素晴らしいイベントだね。


「表彰台には上位何位から立てます?」


「ベスト10から表彰されるが、もちろん上位の方に時間をく。ベスト3くらいじゃないと、話すほどの時間は無いと思うぞ。」


 目標は最低三位以内か……二万人、三万人の頂点三人の内の一人にならなきゃいけないと。


 シビれるねぇ。


 自然と口角が上がっていってる。きっと今のぼくは、とても素敵な笑顔になってるだろう。


 カタカタカタカタ


「ん?」


 見るとアンドレイの手にある、カップと受皿ソーサーがぶつかってるようだ。


 ぼくは笑顔を引っ込めて怪訝けげんそうな顔になった。


「どうしました?」


「い、いやなんで、なんでもないぞ。」


 よかった、なんか震えてたみたいだけど収まったみたい。


「(あー恐かった)」


 ボソリと左腕エルからなんか聞こえた。


「ごめんエル、聞き取れなかった。」


「あ、いえ。紅茶 オイシイナーって独り言ダヨ。」


 そっか。というか、ぼくも飲みたかった。


「さてと、あんまり長居しても時間が勿体ないし。そろそろ遊びにいきますか!」


 椅子から立ち上がったぼくは、伸びをする。


「うむ、今回の用はイベントの告知だけだ。行ってくるがいい。」


 パンパンとまたアンドレイが手を叩くと、お茶会セットは椅子や机ごとスッと消えた。


 代わりに『EXIT』と書かれた、あの金属のドアが出てくる。ドアの前に立つアンドレイがぼくに道をゆずる。


「さて、今日も望みを持ってプレイしてくれたまえ」


「はい!いってきます」


 ヒンヤリとした金属のノブが、気を引き締めてくれる。

 開けたさきにぼくは、飛び込んだ。

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