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とある少年のゲームスタート

目が覚めた。


いつも通りの天井で

17年間連れ添った、知らない仲ではない

天井だ。


だけど、いつもと違うことがある!


今日は、このぼくの待望のゲームが

販売される日なのだ!


その名も

『VR オンライン』!


あの大手 ハードウェア、プレミアムステーション7だからこそ可能になった。


超没入型オンラインRPGゲームの発売日なのだ!


一見、信じられないくらい直球なタイトルだがVirtualの『V』ではないらしい。


Variable 『変異する』

Real 『現実』


退屈なリアルを塗り潰す、圧倒的没入感!

五感をかなりの精度で再現!

人間と変わらないNPC、思考するmob、ここはもう1つの世界!


…いや、2022年の現代。そんなとんでも、未来テクノロジーありましたっけ?



正直 絶対に失敗するのがみえみえな

タイトル かつ 誇大広告が

凄まじく微妙ゲーな匂いしかしないっ!


が、それでもいい!


父親のレトロゲーコレクションで遊んだ

プレミアムステーション2の

『イヌアイトーイ』(内容はミニゲームと

すごろくの『マリコパーティー』の様な

物)ゲームは付属のカメラに自分を映してテレビ画面に出現させて身体でプレイする。


斬新なゲームであるが、ゴミの様な操作性の悪さが珠にキズで、兄弟で遊んでギスったのはいい思いで。


ギスってはいたがゲームの画面の中で

自身が活躍する事へ面白さもあって、

なんだかんだ楽しめてたんだ。

(ちなみに、『イヌアイトーイ』は、弟をボコボコにしすぎて一緒に、

遊んでくれなくなってお蔵入りした。)



ぼくは良し悪しはともかく

なんとなく、この手の自分自身が動ける

ゲームが好きなのだ。


そして、対戦相手を完膚無きまでに打ちのめすのも好きだ。


現実リアルで暴れるなんて、

倫理ある現代日本の若人わこうどとして

言語道断もってのほかである。


教室で走り回る男子が嫌いだ。

甲高い声で喚く女子も邪魔だ。

偉そうな上級生も鬱陶しい後輩どもも煩わしい。

勉強は嫌いって程ではないが宿題の量が多いとうんざりする。


まぁ、全部投げ捨てて生きるのは不可能だから表面上はちゃんと仲良くする。


それでも、ストレスは貯まる。


だから、ゲームでは事あるごとに過激と表されるプレイングをするタイプだ。



閑話休題


とにかく、面倒で窮屈な学校へ行ってから

速攻買いにいかねば。

_______________


というわけで、買ってきて今に至る。

ちなみに経費は自身のお年玉と毎月の

お小遣いとフリマアプリでこっそり稼いだお金を全額ぶちこんだ。バイトが出来ない校則なのがツラい。


ちなみに弟にも資金援助わりかんを求めたが、

弟は「見えてる地雷を踏むのにお金をかけるって、ドM?」とあしらわれた。


そんなこんなで入手したが、セッティングがやたらと手間がかかる。ヘッドセットの詳細設定やスマホへの専用アプリのインストールなどやることが多い。


…二時間経過…


やっとこさ(死語)準備が出来た。

が、晩御飯と風呂と宿題を済ませなくては。

滅茶苦茶に焦らされてるが予定通りなのだ。


このゲームはヘルメットみたいな、ヘッドセットをかぶってベッドに横になって始める。


プレイ時にはゲーム内セッティングにここからさらに時間がかかってくるのだ。


公式説明書に真面目に寝落ちをしてくださいという文言がある。ゲームさせる気があるのかと、疑問に思う一文がある。


こんだけ、期待させて内容がしょっぱければ

果たしてユーザーはクソゲー認定をせずに

いられるだろうか。

いや、いられまい(反語)


ぼくがドMでなければ

投げ出していただろうね!


…悲しい冗談はさておき

寝る前まで、一度VRとお別れだ。


_______________


時は流れ


数学の宿題の式に手間取り。

古典の作業に等しい難易度だが、量はアホほどある課題を担当教員へ殺意を覚えつつ終わらせた。

社会科は…明日 授業直前に写させてもらおう(良い子はまねしないでね)



VRヘッドセットと感動の再会を果たした。


あとはスマホとゲームを連動しつつ

ヘッドセットを被るだけ。


そして、


起動ウェイクアップ


ゲームは立ち上がり。

ぼくは眠りに落ちた。


_______________


「お早うございます、起きやがれください」


「はい?」


微妙に丁寧じゃない声に呼ばれ、ぼくは起き上がった。

目の前に人の足、それの持ち主を見上げた。


「私の脚線美を眺めてから、なめ回すような視線を検知しました、死んでください」


「人聞き悪いよっ!」


目の前の人は確かに整った目鼻立ちで『美人秘書』といった気品を感じさせる、モデルさんのような美女ではあった。

が、断じてエロい目では見ていない。


「くっそ面倒なセッティングを突破できるマゾ野郎には多少の罵倒を浴びせてあげたほうが宜しいかと存じ上げました。」


「要らないよ!」


「かしこまりました、表面上マゾではないと主張されると学習いたしました。」


色々言いたいことのあるAIだが、

次の言葉で全てはチャラになった。



「セッティングお疲れ様でした、ようこそ『VR on-line』へ 」


……そうなのだ、全く現実と遜色(そんしょく)無い感覚で

今自分はゲームキャラと話している。


自分の身体で本当にゲームの中に入れてるのだ、この感動は正直


「最高だ。想定していた残念さがない。ぼくが、心のどこかで本当に期待していたゲームがここにある。」


微妙かも・良し悪し関係ないと

思っていたのは、

本当は期待し過ぎて裏切られたくない心の

予防線に過ぎなかったのを

今、ぼくは自覚した。


本当に本当の夢のようなゲームに

ぼくは興奮を隠せないでいる。


「ここが、お気に召したようでなによりです」


AIは地元を誉められた人間のように

優しく微笑んだ。


_______________


「申し遅れました、わたくし キャラクター 《《リ》》メイクを担当させていただきます。メイカと申します。」


「あ、よろしくお願いします。ぼくは、木更津きさらづ響《ひびき》です。」


キャラクター《《リ》》メイク?

余程ぼくが不思議そうな顔をしていたのか、

クスりとメイカさんが笑う。


「このゲームは現実の響様とリンクしてキャラクターを作成いたします。ベースとなる響様を元にキャラクターを再作成するのでリメイクと称させて頂いております。」


なるほど。


今いるこの空間はメイカさんと

ぼくしかいない白い部屋だ。

真っ白ゆえに感覚がつかめないが、

広さは多分体育館程度はある。


特に顔を確認出来るものはないが

身体に違和感はない。


「今後、貴方はEARTHと呼ばれる星で冒険をされます。その星には『スキル』があります。キャラクターリメイクにてそちらを編集出来ます。『種族』の変更も可能になります」


「あれ?『スキル』と『種族』の編集だけ?」


ちょっとぼくの微妙に低い身長を補正かけようとしてたけど…


「…スキンの変更も出来ますが体格の変更は出来かねます。現実リアルでのトレーニング、及び成長にご期待下さい。」


「操作性の問題なのかな…わかりました。『スキル』と『種族』お願いいたします。」


「かしこまりました、まずは『種族』を選択してください。」


ホログラフィックのウィンドウが

目の前に表示される。


_______________


【種族:ヒューマン】


説明:

EARTH世界に蔓延はびこる優勢種族。一匹見たら70億はいると思え。

能力値は平々凡々なれど油断ならない

変数かのうせいを秘めている。


STR(力):標準

INT(知力):標準

DEX(器用)標準

AGI(敏捷)標準

MIN(精神):標準

VIT(頑強):標準

SP(スキルポイント):高水準

VAR(拡張性):高水準


種族特性:

全スキル獲得可能


_______________


【種族:ハーフリング】

説明:ヒューマンの変異種。

幼稚な思考回路を持ち、成熟しても精神面の成長が無い。

幼い頃の無自覚の残虐性を残して成長する為攻撃スキルが多彩。


STR(力):やや高水準

INT(知力):やや低水準

DEX(器用)標準

AGI(敏捷)高水準

MIN(精神):低水準

VIT(頑強):やや低水準

SP(スキルポイント):標準

VAR(拡張性):標準


種族特性:

『斬』『突』物理攻撃スキル獲得コスト軽減


______________

【種族:オーガ】

説明:ヒューマンの変異種。

暴力欲求の強さ故に鬼に堕ちた人の末裔。

始祖と違い、理性を取り戻した者も存在する。


STR(力):高水準

INT(知力):やや低水準

DEX(器用)やや低水準

AGI(敏捷)標準

MIN(精神):低水準

VIT(頑強):高水準

SP(スキルポイント):標準

VAR(拡張性):標準


種族特性:

『打』『斬』物理攻撃スキル獲得コスト軽減


_______________


【種族:エルフ】

説明:ヒューマンの変異種。

知性が高く、それを自覚するが故に傲慢な傾向がある。

物語で語られる美しさや整った顔立ちは傲慢からくる、ナルシズムによって騙られたものである。


STR(力):やや低水準

INT(知力):高水準

DEX(器用):やや高水準

AGI(敏捷):やや低水準

MIN(精神):高水準

VIT(頑強):低水準

SP(スキルポイント):標準

VAR(拡張性):標準


種族特性:

『光』『火』『風』魔法系スキル獲得コスト軽減


______________

【種族:ワービースト】

説明:ヒューマンの変異種。

野獣。

獣の力を取り込んだ人の末裔。

代価はあるが強力な獣の姿へ変身できる。


STR(力):やや高水準

INT(知力):やや低水準

DEX(器用):低水準

AGI(敏捷):高水準

MIN(精神):やや低水準

VIT(頑強):標準

SP(スキルポイント):やや低水準

VAR(拡張性):標準


種族固有スキル『完全獣化』獲得

30分間獣の姿になる。

5分毎にINT-20%。

30分後に暴走状態《操作不能》になる。


種族特性:

魔法スキル獲得コスト増大

『斬』『突』物理攻撃スキル獲得コスト微軽減

______________


【種族:アンデッド】

説明:ヒューマンの変異種。

死してなお、働き続ける事を望んだもの達。

黒い液体やエナジーを含むドリンクが大好物、

しょく場にこもり、暖かい家庭には、もう帰れない。

※あくまで設定文です。ホームへの帰還などプレイに問題はありません。


人間性を捨て去ることで、さらに労働かつやく出来る。


STR(力):やや低水準

INT(知力):やや高水準

DEX(器用):やや低水準

AGI(敏捷):やや低水準

MIN(精神):高水準

VIT(頑強):やや高水準

SP(スキルポイント):標準

VAR(拡張性):高水準


種族固有スキル『人間性遺棄ブラックワーク

アクティブスキル。

一定時間身体への負担を無視した、行動を行える。

なお、現実では作用しません。

お身体をご自愛下さい。


種族特性:

『闇』『水』『土』魔法スキル獲得コスト軽減

『火』『光』属性に対して脆弱になる。

日光に当たってる間は移動速度が

やや遅くなる。


_____________


…しれっとネタ種族混ぜるなよ!?



_____________


【種族:ドワーフ】

説明:ヒューマンの変異種。

穴蔵にこもり、モノを作るのが好きな種族。

力仕事など肉体労働が得意な説もあるが、運動不足のためそれほど得意ではない。


STR(力):標準

INT(知力):高水準

DEX(器用):やや高水準

AGI(敏捷):やや低水準

MIN(精神):高水準

VIT(頑強):低水準

SP(スキルポイント):やや低水準

VAR(拡張性):標準


種族特性:

生産系スキル獲得コスト軽減

全初級スキル獲得コスト軽減


_____________


うぅむ…


「これらの初期種族からレベルや特殊行動により、進化が可能です。」


「じゃあ、ヒューマンでお願いいたします」


「おや?即決ですか?」


「はい、1番素のままっぽいですし、色んな可能性があるのが面白そうなので。」


「素晴らしい!心踊る幻想種族に揺らがず。人間の素晴らしさを感受出来る貴方にはこれを差し上げます。」


何かのイベントフラグを踏んだのかな。


『システムメッセージ:

おめでとうございます!

貴方は【人間性】を手に入れました!

このアイテムは然るべき時にのみ使用可能です。普段のインベントリには表示されません。』


おぉ、嬉しい!初イベントか。


「ありがとうございます。」


「いえいえ、貰ってください。《《絶対に》》失くさないでくださいね。」


そう言って笑う顔には

何故か憐憫のようなものをぼくは感じた。




_____________


「種族も決まりましたし、『スキル』に行く前に外見のスキンをいじりませんか?」


「そうですね。お願いいたします」


正直あんまりこだわりは無いが

ぼくも現実の顔に100%不満がない訳じゃない。せっかくだからちょっと美化したりしよう。


「では、こちらをご覧下さい」


ポンと目の前に大きな姿見が出てきた。


「現実と本当に同じ顔ですね…完全再現されてます。」


「ヘッドセットに顔の読み取り能力があるのと、セットアップの中にあったDNA登録のデータから補正をかけてますので一致率は99.67%をマークしています。」


「かがくのちからってスゲーってなりますね。」


ここからどうすればいいだろうか…


「オススメは右上二段目のDNAミックスになりますね、今の木更津様のDNAがもし、外国人とのハーフだったらという感じのシミュレーションで顔のプリセットを変更できます。」


「へー」


色んな国の名前があってタップする度に

顔が変わる。


コロコロ変えると気になる顔があった。


「ロシアハーフがイイ感じですね、精悍って感じです。」


現実の顔より鼻が高く雰囲気も違うが面影もあり、カッコいい。


「髪色も黒に戻して…あ、せっかくだし目だけはゲームらしく赤にしよう。」


「タタール人系の美男になりましたね」


「タタール?ロシアの地方の名前ですか?

…まぁそれは置いといて完成です!」


姿見には

精悍な顔立ちで短めのウルフカットの青年が写っている。

黒髪にほの暗い赤の瞳でなんとなく熱血主人公が闇落ちしたみたいなちょっと

ダークヒーローな感じがある。


「まぁ、中身は大人しげで平和そうな少年ですが」

ぼそりとメイカさんが呟いた気がする。


「カッコいいアバターが作れたし、カッコいいスキルを作るぞー!」


ご満悦でぼくは次のステップに進むのだった。

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