うさぎ狩り
ウサギ狩りたのしい!
油断するとすぐに狩られる側に回るのがオレ好みだ!
先程、色々な部位を切り刻まれて死んだ。
今は大聖堂に蘇生されたところだ。
『灰の都 ロンディニア』の大聖堂でのプレイヤーの蘇生は『祭壇』と呼ばれる岩板の上に再生成される形で行われる。
その後、プレイヤーの目覚めを知った司祭様が現れ命の有り難みを説き、寄付金という名の命の代価を取られる。
また、蘇生にはステータスのペナルティこそないもののゲーム内時間が一時間かかる。
まさか、夜間は門が閉まるとは知らなかった。夕方に殺されてから街の外に出れなくなっていて驚いた。
本来ならばその時間には宿をとるそうだけど、寄付金でお金がない。
宿に泊まれないので、門に寄りかかって寝ていたら門番のおじさんに起こしてもらえた。
門番も出来て、目覚ましにもなる門番おじさん有能。
ちなみに、ウサギ素材はまだ売ったりしてない寄付金になるだけだから…
昨日と今日の午前中だけで8回死んでる。その間に10体程ウサギを狩れている。
一進一退のキルレシオが嬉しい難易度。
首ちょんぱは、命を失う喪失感はあっても余り痛くない。しかし、部位を切り飛ばされてなぶり殺しにされる死に方もしてるので痛い時はとても痛い。
称号スキルの【臨死体験ソムリエ】で死に際になぶり殺しにしてきた奴に復讐してやろうとした。
噛みついてでもダメージを与えようとしたけどウサギが速すぎて、両足切り落とされた後には石をぶつけてやるので精一杯だった。
ニコニコとしていると左腕から指摘が飛んできた。
「殺されてるのに機嫌が良すぎてキモい」
「ばかだなぁ、殺してくれるから機嫌がいいんだよ!」
生き返ったオレに司祭様が近付いてきた、昨日今日で顔馴染みになりつつある顔を真っ赤にして説教しにくる。
「『いのちをだいじに』と何度言わせるつもりだ!」
もっともらしいことをおっしゃる。
「使ってなんぼだと思います!死ねない命に価値など無いです!」
ぼくの考えだけど、大事に仕舞っておいても腐っていくだけだと思うのだ。
パァッと使ってる今の方が我ながらイキイキしてる。
「なんだと!」
「あと説教されても金は出しません!持ってないから!」
所持金をマイナスには出来ない親切設計らしい。
命を粗末に扱って、蘇生されても金を払うつもりのないぼくに司祭様は苛立っている。
「罰当たりガチ勢めっ!地獄に堕ちろ!」
それを聖職者に言われるのはキツイ!
「また来ます!」
「二度と来るな!」
そうして、再び聖堂から北の門へと向かうのだった。
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サービス初日のゲーム内で二日目、時間はお昼過ぎ。
プレイヤーと思われる子と門番おじさんが言い合っていた。
「どうして通してくれないんですか!」
「お前はまだ駆け出しだろう!危ないから東の平原に行きなさい!」
なるほど、何時ものか。
「こんにちはー、お疲れ様ですー」
と、声をかけて脇を抜ける。
「ん?あぁ、お前か。気を付けてな…ってお前も初心者だったわ!」
チッばれたか。
初心者で同じ条件であることを聞いてしまったプレイヤーさんが声をかけてくる。
「あなたも、プレイヤーでしょ?この人をなんとかしてくれない?」
「なんとかもするも…」
ぼくがこうして、通り抜けられてるのにまだ
《《気付かないのか》》?
「門番おじさんは危ない場所に行くのを止める為に善意の忠告をしてますが、システム的な拘束力は無いから別に通れますよ?」
おじさんが話を聞かない宣言をしたぼく達を見て悲しそうな顔をする。
そうして、おじさんを背に普通に門を出た。
「あ、行けたわね。《《人》》に言われてると『通っちゃいけない』って思っちゃってた」
女の子も納得したみたいだ。
「それは間違った感性では無いので大事にしてください。それでは、失礼します。」
「ちょっと待って!この先に可愛いウサギがいるって聞いたの!なにか知らない?」
「外見は可愛らしいウサギは知ってます。」
「やった!東の平原の気持ち悪いモンスターに飽き飽きしてたの!どこにいるの?」
そう言って、すごく嫌そうな顔をする女の子。東の平原のモンスターはどんな造形なのか…
「ちょっと進めば出てくるよ、速いし一撃一撃が致命傷になるから気を付けてね。」
じゃっ と手を挙げて先に行こうとした。が、続けてかけられた言葉に動きを止めた。
「よかったらパーティを組まない?サービス初日だし、そんなに力の差は無いはず。足手まといにはならないと思うから…ダメ?」
…女の子とパーティを組む…?
非リア充のぼくにはちょっと興味をそそられるワードに意識が引っ張られる。
戦闘したくてウズウズして女の子としか認識してなかった、その子をちゃんと見る。
日本人とイギリス系?ヨーロッパっぽい人のハーフ風のその子は、自然な茶髪よりの金髪と青い目をしている。
日本人的な丸みと西洋人的な鼻の高さやメリハリが混在した整った顔立ちの女子である。
女の子としか認識していなかった時は気が付かなかったが、ちょっと背が低めではあるが同い年か1学年下くらいだろうか?思ったより同年代だった。
……いや、こんな可愛らしい子を認識出来てなかったのか。我ながらバトルジャンキー過ぎるだろ…
「ちょっと、聞いてるの?」
きちんと認識したその子に言われるまで見とれてしまっていた。
「あ、あぁ?パーティ?いいよ。ぼくも初めての協力プレイだから、ぼくに何が出来るかは分からないけど。」
「そうね…そこはお互いの戦闘スタイルを知ってからね!とりあえず組んで道案内をしてくれるだけでも嬉しいな!」
「それなら、大丈夫そうだ。よろしく頼みます。」
「ありがとう、申請ってどこだろ…あっこれかな?」
『システムメッセージ:『AZ』さんからパーティに誘われています。参加しますか?Yes/No』
いえす。なんて読むんだろう。
「えーぜっと?…」
「『アズ』って呼んでね!Laty…らてぃ、であってる?」
「あってるよ。よろしく、アズさん」
「こちらこそ!ラティ!」
初めてパーティを組んだが、ちょっとむず痒い気もする。
そんな気分だが左腕がピクピクと自己主張をしてることに気づく。
…パーティもう組んじゃってるし、引かれても大丈夫だろう。
「ごめん、ちょっと紹介し忘れてた。ぼくの相棒なんだけど、見た目は怖いけどいいやつだから、落ち着いて会ってやってほしいんだ?」
「大丈夫だよ?…どこにも人影はないけど、どこにいるの?」
「こちらですよ 」
ぼくの方からぼくじゃない声がして驚くアズさん。
邪魔になるからと、袖を捲りあげると
ぼくの真っ黒な左腕に気付く。
その表面が泡立ったかと思うと、急激に体積を増していく。
巨大で異様で不気味な豪腕。
何時ものエルの姿を取り戻す。
「はじめまして、お嬢さん。私は『エル』よろしくね。」
唖然とするアズさんだが、アルマさんよりも復旧が早かった。
「よ、よろしくね。エル…ちゃん?」
ちゃん付け!?
こうして、ぼくはパーティでウサギ狩りに出かけることになった。




