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ガイアに愛をもらった男  作者: かんじがしろ
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前線の心得

前線の心得

 床に寝ていた俺は床の毛布をたたみ、子ども達たちを起こさないよう静かにドアを閉めて偵察拠点に向かった。

外に出ると、ビリー’ホワイト一等陸曹、ヤン’リン一等陸曹、ポール’ジャイアント三等陸曹等の話し声に注聴させられる。

大声では無いが、いつもよりも声が高いのでやばいと思った。

俺が敵なら今攻撃する。

興奮しているか、落ち込んでいるか、本人たちは気が付かないが外から見ると気が付く、その状態が彼らから感じられる。

軍人の死亡フラグが立つとよく言われているが、あれは決して迷信事では無い事実だと思っている。

死亡フラグが立つとの話は、自身に嬉しいおめでさが起きる事、身内の事で朗報や悲報が届いた等の時に発動するのは、死にたくないと思うとどうしても守りに入るので、防御だけでは、何時までも敵を倒せない。

諺に攻めるが勝ちと言う、攻撃は最大の防御とも言う。

冷静さに掛けると、敵の実力が解らないまゝ、敵の防御力がある所へ飛び込む事を無謀と言う。

作戦中は常に敵に備えていなければ成らないから、その為か精神に異常をきたす人もいるのは残酷である。

それを防ぐのは、一人での長期のサバイバル訓練で精神を鍛えなければ成らないが、ほかの方法も有る。

それは緩和友情と呼ばれ、隊内でのコミュニケーションを欠かさない事で、一心同体の気

ちを持ち合う事が大事だ。

仲間が倒れると自分も危ない、危険度はいつも仲間次第だが、しかしながら過ぎたるは猶及ばざるが如し、とも言う。

今、三人は陸戦隊の仲間に合流出来ることに、舞い上がっているようである。

通信をオープンにした事のデメリットが表れた。

この状態は俺の落ち度だ。彼らではない。

トーマスもポットから出てきて、軍曹等の異様に気付いたようで、渋い顔を俺に向けた。

俺の隊では、作戦中か防護服アーマーを着ている時は、誰も酒を飲まないのは別に決めごとではない、俺とトーマス’ワシントン上級陸戦曹長が今迄生きてこられたのは、運だけでは無い、何時でも戦闘状態を忘れないからだと皆に理解させていた。


トーマスと俺との出会いは、俺が星座連合軍士官教育実習大学卒業後、陸戦上級準陸尉から上級3等陸尉に昇進した後、トーマスは当時陸戦2等陸曹で、その時から同じ隊に属していた。

五百人の大隊で守備していたコスモス星の鉱山防衛はバリバリの前線で、トーマスと共に赴任して助け合って闘った同じ隊の仲間であった。

そこへ、三隻のトカゲモドキの上陸艦が降下して来た中、一隻を撃墜したが二隻降下着陸させてしたので、まだ二千匹は残っていると思われた。

しかしながら、トカゲモドキの一次突撃と二次突撃をレールガン砲の超熱弾丸とレーザー砲で防衛し、防衛ラインで食い止め前線から退却させた。

暫く戦闘は中断しても皆警戒を解くことはなかったが、十五日後位経ったころ、トカゲモドキの二隻上陸艦は大気園外に去っていった。

その後に隊に妙な不意息が漂った。

 士官達から酒の匂いがするとの噂である。

その内に、歩哨以外の隊員から酒の匂いがしだし、いつの間にか俺とトーマスは夜の歩哨の担当専門になっていた。

トカゲモドキは半年間飲まず食わずとも、土の中で冬眠できるので、俺も同じ能力があれば半年間敵が油断するまで待つ。

そんな話をトーマスと夜の歩哨しながら言ったら、トーマスは、

「突撃だけのトカゲモドキに、そんな待つなんて出来るのかな?」

「トカゲモドキが撤退する方がおかしい。」

「なるほどですね。」」

この鉱山の石はエネルギーに変換できるので、千也二千の無駄死にでもトカゲモドキは欲しいであろうと、俺は推測した。

推測は当たてしまった。

三日後朝日が昇る二時間前に、トカゲモドキが総攻撃してきた。

桜連隊の汚点となる凄惨な戦いが始まったのである。

超熱弾丸は敵陣に間隔なく落下攻撃しているが、防衛ラインは突破されてしまい、俺たちとトカゲモドキは肉弾戦となり対峙した。

トカゲモドキの武器は、手の甲に刃渡り四十センチ位の出刃包丁みたいな爪が生えている厄介な爪先である。。

トカゲモドキ等相手に数は劣るが負けるはずのない肉弾戦になり突進していくが、肉弾戦が始まるとあろう事のない事態を見てしまった。

初年兵ならいざ知らず、俺より戦歴長い上官がトカゲモドキの足で背中を踏まれている。

剣と出刃包丁との戦いで、トカゲモドキの出刃包丁を潜り抜ければ勝てるわけだが、その前に踏まれているのは異常であるが、救護しようにも、俺の周りもトカゲモドキだらけなのは、自軍の兵の動きも悪いようである。

俺もトカゲモドキの足関節と筋の切断を切り続けるだけで、目の前のトカゲモドキは増える一方なので、トカゲモドキの首を落とす余裕もない。

長い戦闘後、俺の周りに立っているトカゲモドキは何とか居なくなり、周りを見るとトーマスが二匹のトカゲモドキと戦っている。

トーマスは背中を取られまいと、左右に動き回るだけで攻撃できないでいる。

一匹相手なら、装備の良い我等の方が勝てるが、二匹だと少し厄介だ。

トカゲモドキはトーマスに夢中らしく、俺には気付いていない様なので後ろから首を落とすと、トーマスも太刀でもう一匹の首を落としていた。

戦場を見渡すと、三~四人のグループが五~六箇所でまだ戦っていたので心身ともに疲れてはいたが、トーマスと共に応援に向かった。

生存者は二十九名と大隊長のみであった。

二十九名と戦死者は二階級特進になり、俺は上級1等陸尉に特進し、ここから小隊の隊長になった。

そのままトーマスも俺の部下となったのである。

大隊長のその後は、一階級降下し退役したとの噂を聞いた。


「隊長、彼等には、ガス抜きが必要でしょうか?」

「輸送艦に残った連中も、同じだろう。」

総司令官と連絡を取り、陸戦隊司令官から輸送艦に残った陸戦隊全員に、二十四時間の作戦解除を通達して欲しいと要請し、その上で提督代理の立場から、輸送品の中にある酒類の保管場所を教えてくださいとも要請した。

その後に知る事になるが、彼等全員酒には手を付けず、一本ずつ私物として保管していたのである。

シーラー’カンス陸士長に至っては、俺とトーマスの分も含めて強行偵察隊全員分の六本をも保管していた。

ビリー’ホワイト一等陸曹、ヤン’リン一等陸曹、ポール’ジャイアント三等陸曹等を、

集合させ、三人には毒には毒で対応策を考えなければ成らないと思い、本日の予定を通達した。

今日のパトロールは中止だと伝えて、川での洗濯許可を出して身体の垢を落とす許可も与えたが、その際には誰か一人は必ず川原で歩哨を立てる事を強調し義務付けた。

三人は、自分達の状態に気付いたのか?頭を下げ川へ向かった。

子ども達も起きて来ており、一緒になって川へ向かった。

俺とトーマスはキャンプ場で歩哨に立って、彼等の気持ちが落ち着くのを待つしかなく、今夜の輸送艦着陸に備えて、着陸灯の代わりに焚火で目印設置する事とした。 

輸送艦の大きさは、全長三百五十メートル、横幅百八十メートル、超大型司令戦艦並みの大きさである。

河原から艦首までの距離百五十メートル、左舷をポットから三十メートル位の置に設定し、艦首に一ヶ所及び左舷二ヶ所に、艦から二十メートル離れた所へ焚火の準備をする。

夕方近くになってからは、皆落ちつ付いたようで厳々と準備している、舞い上がった気持は、毒で制したようである。


 着陸予定三十分前、月が西の暗闇に沈みかけた頃に、輸送艦であろう少し南寄東側の空の星が、ゆっくりとした動きで西側に流れているのが見て取れた。

ビリーとヤンは、赤外線機能付の遠視鏡を覗いて周囲を監視している。

時々ビリーは遠視鏡を覗いたまま、森沿いの方に数体の熱源確認を報告するが、動物らしきものはすぐに森の中へ帰っていたらしい。

トーマスとポールは灯火に薪を加えている。

子供の頃から神に祈った事等々無かったが、輸送艦の無事な着陸をガイア様と呼ばれるものに、心の中で頼んでしまった。

着陸予定十五分前、雲の切れ間の中の星空から、一際大きな星が赤く輝きながら、西の方へゆっくりと移動しながら頭上近く辺りで雲の中に消えていった。

トーマスとポールに残りの全ての薪を、灯火に加えるよう指示をした。

着陸六分前、真っ暗であった頭上の雲が少しずつ白く明るくなりだした。

遂に、明るい雲の中からゆっくりと白い巨体が姿を現し、ゆっくりと着陸した。

しかしながら、巨体は草原の地面では重たすぎて一メートル位沈んでいるようで、

舷側から、無数の足が伸びて地中深く差し込まれていった。

艦首近くの入り口が開き、スローブが伸びて総司令官と後ろから陸戦隊が降りてきた。

「みごとな着陸、ご苦労様でした。」

「閣下、偵察任務と拠点確保、維持、ご苦労様でした。この後程、艦作戦室へお越し願えませんか?」

陸戦隊は俺たちの会話を無視し、トーマス達の所で隊員同士拳を合わせている。

おどけものホルヘ‘ゴンザレス一等陸士が、

「あ、スーパーマンの登場だ!」

と言いやがり、ムキムキ娘は、

「空飛べるか、試しましたか?」

と、言いやがったので、

「川原の石で、遠くの山を平らにした。」

と、いってやった。

「それ、ギャグコミックじゃん。」と、言い返された。

そんな中、キャンプ場が昼間のように明るいので、アーマートと妹のマクリーが起きてきて、俺の後ろに回り、

「お兄ちゃん、あれ何、どこから来たの、誰かのお家ですか?」

「あれはね、お兄さんたちが、遠い国から乗ってきた船だよ。」

と、言うと、心配そうに、

「お兄さん、帰るの?」

「帰れないから、船をここに運んで来たのだよ。」

と、説明した。

そこに総司令官が現れて、たどたどしい子ども達の言葉で話しかけてきた。

「アーマートと妹のマクリーね?私はあの船の一番偉い人なので、船の中案内しましょうか?」

と、言って寄ってきた。

俺は子ども達に、

「この女の人が、船の中を見たいのなら、船に来ないかと言っているので、一緒に行くかい?」

二人は、顔を見合わせて、

「行きたい!」

と、言ったので、総司令官に子ども達を預けた。

新たに偵察隊となった隊員に向かい注意点を伝え、特に超火焔弾の使用は火事を起こさないよう注意した。

トーマスに、二班に分けたグループメンバーの編成と、順次休憩を取るように指示した。



  





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